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【CRM再構築!】なぜ多くの企業が「CRM」の導入に失敗するのか? CRMの専門家 齋藤氏が語る「10年顧客」の育て方とは?

今回は、『同じお客様に通い続けてもらう!「10年顧客」の育て方』『なぜ、CRMは現場の心に根付かないのか?』の著者でもある株式会社SISの齋藤代表に、CRMを現場に根付かせ、「10年顧客」を育てる方法を伺いました!

株式会社 SIS
代表取締役 齋藤 孝太

2004年の独立後、これまで100社以上の企業の現場において、「10年顧客戦略」をお店の現場に根付かせるコンサルティングを行っている。

化粧品店、アパレルショップ、ビューティーサロン、美容外科クリニック、バイクショップ、写真店、新聞販売店、携帯ショップ、インテリア販売、ガソリンスタンド、スポーツクラブ、ショッピングセンター等の仕事に携わる。

クライアントの経営者から
「私達の想いがよりお客様に届くようになって固定客が増えた」
「リーマンショック後の売上減を乗り切れた」
「お店の未来がはっきりと見えたことで、スタッフの意識が高まって業績が上がった」
と大きな支持を得ている。

株式会社SIS Webサイト http://sisys.jp

株式会社 SISはどんな会社か

———株式会社 SISとはどんな会社なのでしょうか?

弊社は、店舗ビジネス向けのCRMを中心として
CRMのソフト面のコンサルティング
セミナーや講演会
社内教育
などの事業を展開しています。

アパレルショップやバイクショップ、化粧品会社、スポーツジム、居酒屋チェーン、釣具屋チェーン、不動産仲介業など、様々な業種の店舗にCRMを根付かせるためのお手伝いをさせていただいております。

弊社の特徴は現場にCRMを根付かせる仕組みづくりと教育に力を入れている点です。

CRMの専門家の中でも、通販の専門家であれば、あまり教育は重要ではないかもしれません。
なぜなら、システムや、メルマガ、SNS、DM等のツールを通じた販促の方が大切ですからね。
しかし、店舗型ビジネスでは、お客様が固定客になるかどうかは、接したスタッフの対応が大きく影響します。
現場のスタッフの方々が、CRMについて理解し、実際に活動しなければ、お客様に通い続けてもらうことはできません。

そこで、弊社は、コンサルティングと教育で、会社にCRMが根付く仕組みをつくっています。
会社ごとに目指している未来が違うため、オーダーメイドで進めています。

———CRMを導入する上で大切なことはなんですか?

「お客様が自分の会社に何を望んでいるのか」をお客様の視点で丁寧に考えることです。

同じ店舗型のビジネスでも、
お客様が、コンビニエンスストアに求めている関係性と
行きつけの居酒屋さんに求めている関係性は異なります。
そのお店によって、お客様と築くべき関係性が異なってきます。

例えば、何年も通っている居酒屋さんで、
「なんだか最近疲れていそうですね。体に力がでてくる、こちらのお肉料理なんてどうですか?」と言われると嬉しいですよね?

でも、コンビニで、
「お客さん、顔色が悪いからこっちのお弁当の方がいいんじゃないですか?」と言われてもあまり嬉しくないですよね?

やってることは変わらないのですが、お客様の反応は異なります。
同じ食に関わるお店でも、お客様がお店に求める関係性は変わるのです。

CRMのポイントは、「お客様が自分の会社にどんなことを望んでいるのか」を突き詰めていくことです。
それを理解しないままでは、いくら仕組み化をしても、いくら研修をしても教育をしても、効果は出ません。

例えば、キャビンアテンダントの人を呼んで研修をするというのは、悪いことではないですが、
キャビンアテンダントのような振る舞いやお礼の仕方などをお客様が望んでいないところもありますよね

例えば、地元のレストランはどうでしょう?
地元のレストランでキャビンアテンダントのような丁寧すぎるとも言える対応をされたらどうでしょうか?それをお客様は望んでいるでしょうか?

一方で、高級な和食屋さんはどうでしょう?
お客さんはキャビンアテンダントのような丁寧な振る舞いを望んでいるのではないでしょうか?

「お客様が自分の会社にどんなことを望んでいるのか」
どうすればお客様との関係が今よりも深くなるのか考えることが大事です。

なぜCRMは現場の心に根付かないのか?

———日本のCRMの課題は何でしょうか?

本来の目的は何なのかを明確にせずに、システムの導入が先走っていることです。

「CRMを導入する」と言っても、
多くは、顧客データを「どう管理して」、「どう分析するか」というところにばかり注力してしまっているのです。
本来は、お客様との関係を深くすることが一番にあるはずなのに、一番大切なことが忘れ去られているように感じます。

これからお客様とどんな関係を築いていくのかの未来像を決めない。
日々の活動を示したテキストを作らない。
教育も、ただシステムの使い方になってしまっている。

今の現場はどこを目指しているか」未来像が明確でないまま、システムを導入してしまうケースが多く見られます。
これでは、何のためにシステムを導入しているのか分かりません。

未来像が明確でないと、どんなに素晴らしいCRMのシステムがあったとしても、浸透しません
現場の人は、何のために行動をしているのかが分からなくなってしまうからです。
CRMのデータを入力する作業一つをとっても、意味を理解していないと、現場の人にとっては、ただ手間のかかる面倒なことになってしまいます。

これでは、CRMが現場に根付くことはありません。

まずは、本部・運営の人と現場の人がコミュニケーションをとって、未来像を明確にする必要があります。
現状についての報告ばかり話すのではなく、どういう未来へ行きたいのかを話す時間を持つことです。
未来像を明確にしていくコミュニケーションが大切ではないでしょうか。

———CRMという言葉は普及し始めているように感じますが、現場に根付いていないのはなぜでしょうか?

大きな原因の一つは、CRMという英語3文字を使うと現場の人の拒否反応が起こることです。

PDCAも同じですが、
運営側の人間にいきなり「PDCAを回せ」と言われても、
現場の人は「現場も知らないのに分かりづらい横文字だけ言って帰っていった」となる可能性が高いです。PDCAを知らないわけではないのですが、実際ネガティブに捉えられてしまうことが多いです。

聞いている側が内容を聞いて「明日から改善しよう」と思えなければ、
明日からの活動は変わりません。
明日からの活動が変わらないとしたら、それは、お客様との関係も深まらないということです。
前と同じ活動していても、固定客が増えることはありません。

「PDCAを回してください」を言うよりも、
「計画をして、実践をして、振り返る流れを大事にしようよ」と言ったほうが伝わります。
言っていることは同じでも、使う言葉によって伝わり方に差が生まれます。
ここは日本ですから、日本語の方が伝わりますよね(笑)。

人というのは、知らない言葉を使われると、相手が優位に立とうとしているのではないかと感じてしまうからです。
知らない言葉を中心に話をされると受け入れにくいのです。

つまり、共通の言語でコミュニケーションをとることが大切です。

CRMの「見える化」「仕組み化」で現場の文化に根付かせる!

———どうしたらCRMを現場に根付かせることができるのでしょうか?

CRMを浸透させるポイントは、「見える化」と「仕組み化」です。

「見える化」をする上でキーになるのは、「未来像を具体的な物語にすること」です。
あるお客様が初めて来店をしてから、固定客になるまでのひとつの物語を作るのです。

未来像を物語にすると、いいことが2つあります。
1つ目は、
本部の人と現場の人が一緒に作ることで、物語を作る過程で
「私たちはどういう未来を望んでいるのか」が共有できるようになることです。

例えば、
「店舗のスタッフがお客様のプライベートな相談にも乗っています」
という物語を作ったとします。
すると、その物語に対して、
「そこまでの関係にはならなくていいのではないか」という意見が出て来るかもしれません。

この議論が大切なのです。議論をすることで、未来像がより具体的で納得感の高いものになっていきます。

2つ目は、
物語にすると、論理的に説明したテキストよりも伝わりやすくなることです。
パートやアルバイトの人にも、会社が現場に何を望んでいるのかがわかりやすくなります。

これは、クレドを社内に浸透させる時にも活用できます。
クレドは存在していても、社員がなぜそのクレドが必要なのかを理解していないと、ただやらされているだけになってしまいます。

そこで、物語の中にクレドの内容を入れ込むのです。
お客様とこういう関係を気づきたいから、このクレドなんですよと。
すると、箇条書きで書かれているクレドが、具体的に頭でイメージできるようになります。

———どのように仕組み化していけば良いのでしょうか?

仕組み化する上で大切なことは、その仕組みが実行する過程でより良いものへと進化していくサイクルになっていることです。
例えば、弊社では、CRMを浸透させるための仕組みとして、以下の図のサイクルを提示して活用しています。

◇STEP1
CRMの現場未来像の明確化

◇STEP2
CRMの現場教育内容の見える化・テキスト化

◇STEP3
CRMの教育・研修・E-ラーニングの実施

◇STEP4-1
CRMの現場計画の作成

◇STEP4-2
CRMの活動実践

◇STEP4-3
CRMが進む現場の振り返り・改善

◇STEP5
CRMの現場事例収集による教育進化

◇STEP6
CRMを進める現場スタッフの評価

◇STEP7
CRMの現場文化の醸成

このサイクルが回り始めると、
現場のスタッフ個人が成長していきます。
そして、現場の売上がアップしていきます。
毎年更新し、進化させていくことで、現場のテキストも徐々に良くなっていき、CRMが根付く仕組みが強固なものとなっていきます。
現場の文化として根付いていきます。

———CRMの仕組みを「文化として根付かせる」とはどういうことでしょうか?

文化というのは、あるお店で当たり前になっている動作であったり、しきたりであったりします。

私のクライアント企業さんなのですが、
お客様との関係を深めるために、
「商品(5000円以上)を買った人にお礼状を書こう」という取り組みを続けています。
この取り組みが導入されるまでは、
「お礼状を書かないのが当たり前」でした。
それが現場の文化だったのです。

しかし、お礼状を書いて続けて行くと、
それが文化として根付いてきました。
「お礼状を書くことが当たり前」になったのです。

文化とは面白いもので、新入社員に対する影響も大きいです。
入ってきて、みんながお礼状を書いていたら、「お礼状を書くのが当たり前」だと思って、書くようになるのです。

今よりもお客様との関係を深めようという意識が文化となって、現場にテキストがなくても自然とやってしまうようになったら素晴らしいですよね!

「リピーター」や「ファン」ではなく、「10年顧客」を育てる!!

———同じお客様に通い続けてもらうためにはどうすればよいでしょうか?

「10年顧客」を目標とすることです。
「生涯顧客」や「リピーター」や「ファン」ではなく「10年顧客」を目指すのです。
なぜなら、「10年顧客」を育てるという目標はより具体的で、明確だからです。

「リピーター」や「ファン」を作ろうとするのは当たり前のこととして意識されています。
しかし、お客様がどのような状態になったら「生涯顧客」や「リピーター」「ファン」と呼べる存在になるのでしょうか?その定義も曖昧なことが多いです。

定義が曖昧な状態では「生涯顧客」「リピーター」「ファン」が何人いるか数えられません
数えられないとしたら、どの程度目標か達成されているか確認できません。
達成度が分からないとしたら、それは目標として相応しいものと言えるでしょうか?

また、「生涯顧客の獲得を目指そう」と言われて、実現できる気がするでしょうか?
生涯顧客価値を考えることは悪いことではありませんが、
生涯顧客価値の増減を現場の人が実感できるかと、それは難しい。

一方で、「10年顧客」という目標は、定義が明確で理解しやすいです。
定義が明確なので、何人いるのか数値で把握することができます
数値が把握できるので、自分たちが目標に対してどの段階にいるのか、
どのような成果が出たのかはっきりとわかります
また、実現不可能な年数でもありません。

———「10年顧客」はどの会社でも達成できるのでしょうか?

もちろん、10年では短すぎるというところもあれば、
10年は長すぎるという会社もあります。

例えば、マタニティの会社は、妊娠中に着る服を作っている会社なので、当たり前ですけど、10年は難しいですよね。
また、小学生を対象とした会社であれば、6年間が基本ですよね。
このように、会社によって目標年数は異なります
3年でも、6年でもいいんです。明確な目標を立てることが大切です。

目標は、振り返った時に、現場の人が成果を実感できるのが大切です。
「10年顧客」を目指すのであれば、
3年顧客は去年30人だったのが今年40人になりました。
5年顧客は10人だったのが20人になりました。
と現場の人も成果を実感できます。

成果を実感することで、現場のスタッフのモチベーションアップにもつながります。

手が届かなそうで、頑張れば届きそうな位置に目標を設定すること。
明るい未来やワクワク感のある目標を設定することが大切です。

———齋藤代表、貴重なお話ありがとうございました!

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