生産性向上のヒント, 経営者インタビュー

採用せずに人員を確保!? 生産性を2倍にする「リソースマネジメント」を活用した攻めの人事とは?

今回は、『稼ぐ人財のつくり方 生産性を2倍にする「攻めの人事」』の著者でもある株式会社 経営人事パートナーズの山極社長に、攻めの人事によって社員の生産性を2倍に高める方法についてお聞きしてきました。

株式会社 経営人事パートナーズ

代表取締役社長 山極毅

1989年日産自動車株式会社に入社。在籍中の27年間で、開発、企画、人事の3部門を経験。開発部門では、エンジニアとして、フェアレディZやGTRのエンジン技術を担当。企画部門では、商品企画、収益企画、プログラムコントロール、開発プロセスの合理化などを担当。

2010年からは、人事部において戦略的人員計画SWP(Strategic Workforce Planning)の導入責任者となる。その後も、評価報酬制度の見直しや、新卒採用・経験者採用業務の責任者を歴任。ルノーとの資本提携後の企業再生プロセス、意思決定プロセス改善の一部始終を、実務を通して体験した。

2015年度に担当した若手育成と採用プロセスの革新は社外多方面から評価され、第4回日本HRチャレンジ大賞人材育成部門優秀賞を受賞。

2016年4月株式会社経営人事パートナーズを設立し、最高経営責任者に就任。人事戦略デザイナーとして、幅広い人事戦略立案のサポートを行なっている。

株式会社経営人事パートナーズWebサイト http://keieijinji.co.jp

株式会社 経営人事パートナーズはどんな会社か

———株式会社 経営人事パートナーズとはどんな会社なのでしょうか?

弊社は、人事コンサルタントの会社です。
人事制度・評価制度の作成
従業員の教育・研修
コーチング
など、人事に関わる事業全般を展開しています。

評価制度や研修は会社に応じてオーダーメイドで作成しています。
会社の方針に応じて、人事方針も変化させる必要があるからです。
「若手が活躍できて、どんどん新しいことにチャレンジできる環境を作りたい」と思っていても、人事制度が昔のままだと実現できません。
その会社にあった評価制度や採用制度、研修を提案しています。

———日本の生産性が低いのはなぜでしょうか?

日本の生産性が低い理由は2つあります。

1つは、「値段を上げることが苦手」な点です。
生産性を上げるのに1番簡単な方法は、サービスや製品の値段を上げることです。
しかし、日本人は値段を上げるのが苦手です。一方、改善は得意なので、コストを下げて、値段を下げてマーケットを拡大しようという考え方になっています。

生産性を高めるためには、どうにかして値段を上げたい。
値段を上げるためには、付加価値を上げなければいけない。
付加価値を上げるためには、それぞれの人間が個性を生かして動ける組織を作らなければならない。
だからこそ、人事に力を注ぎ、付加価値を上げる組織を作るべきなのです。

もう1つは、「見切ることが苦手」な点です。
日本人は最後の最後まで完成度を求めすぎます。
100%を目指しすぎているのです。

日本人は100の時間で100%のクオリティを追い求めている人が多い。
一方、欧米人は20の時間で80%のクオリティまで持っていきます。

例えば、どちらも100の時間を与えられたとすると、
日本人は1回しか実行できませんが、欧米人は同じ100の時間で5回できます。
経験値も約5倍の差と言えるでしょう。
日本人は、時間をかけすぎなんです。

生産性を上げるのは簡単です。
付加価値を上げるか、時間を短くするか。ただそれだけです。

時間の詰め方と、付加価値の上げ方(値段の上げ方)を突き詰めていく。
すると、自然と生産性が上がっていきます。

「攻めの人事」で生産性を2倍に高める

———人事制度の役割とはなんでしょうか?

例えば、先ほどお話しした「クオリティを求めて時間をかけすぎる」というのは、日本人の気質であり、会社の文化です。会社の文化は個人の研修では変わりません。

会社の文化を変えるためには、経営者が旗を振って、昨日までのやり方を変えなければならない。また、それを言葉だけではなく、実行して見せなければいけません。
人事制度はそのための手段です。

「誰が昇格したか」ひとつをとっても、それはノンバーバルメッセージっとなって社員に伝わります。社員は、敏感にそのメッセージを受け取り、「会社はあのような人を昇格させるのだ」と認識します。
人事制度は社員に向けたメッセージなのです。

———「攻めの人事」とはどういったものでしょうか?

「守りの人事」とは、日本の高度経済成長を支えてきた、年功式の人事です。当時は普通でしたが、今でもそれを変えずにいこうというのが「守りの人事」です。
一方で、今までの人事制度を大きく変えていこうというのが「攻めの人事」です。

高度成長期は、守りの人事でもよかった。人口が増加していたため、今年よりも来年の方が新卒が多い。来年よりも再来年の方がもっと多い。だから年功式でやっていても失敗が少なかった。

しかし、現在は状況が違います。日本の人口は減る。市場はシュリンクする。海外で人が増える。ということは、昔と同じように守りの人事をしていては生き残れないのです。人事も攻めなければならない。

何を攻めなければならないか。それは、簡単に言うと、管理する場面をどんどん狭めていくことです。そして、個人のパフォーマンスが出るように変えていくのです。
攻めの人事を実現させるためには、「リソースマネジメント」と「タレントマネジメント」の2つのマネジメント方法で社員をマネジメントしていくべきだと考えています。

———「リソースマネジメント」と「タレントマネジメント」とはどのようなマネジメントでしょうか?

「リソースマネジメント」とは、会社の大切な資源である人材を、可能な限り定量的に数値で把握することです。
例えば、
「従業員が何人いて、どこで、どのように働いているのか」
「どこの部署が何人増えたのか」
「増えた人数に対して、作っている製品数はどうか」など、
本当に人の配置が問題ないか、人が適材適所されているかを見るためには、定量的に人のポジションをはかる作業が必要になってきます。
このように定量的に管理をするのがリソースマネジメントです。

リソースマネジメントによって、見えにくい「人事の仕事を見える化する」ことができ、根拠をもって語ることができるようになります。
定量的に根拠が示すことができるので、人事戦略が有効であるかどうか確認することや、周りを説得することにもつながります

「タレントマネジメント」とは、人事が個人のタレントを把握し、タレントを活かした人材マネジメントを行うことです。
個人のスキルや能力、個性など、質的なマネジメントがタレントマネジメントです。

人に付加価値をつけて、利益の源泉を生み出す「タレントマネジメント」
すべての人事指標を数値で見える化する「リソースマネジメント」
この二つが一体となることで、「攻めの人事」が可能になります。

———生産性を上げるための人事評価制度はありますか?

部下が上司を評価する評価制度をすすめています。
「360度評価」をしようということです。

例えば、上司が1人、部下が6人いるとすると、
上司1人が部下6人の仕事を勤務時間中の行動を全て見続けるのは不可能です。
すると、上司は部下の何を見て評価しているのでしょうか。
部下は一面しか見られずに評価されてしまうのです。評価される側からしたら、納得のいく評価がされるか不安ですよね。
ところが、逆に、6人の部下は1人の課長のことを長い時間見ています。どう考えても部下の方が上司のことをきちんと評価できるはずです。

そこで、ある会社では、課長に向けた研修を行いました。部下に課長の点数を出してもらい、コメントも書いてもらいました。
すると、そこに書いてあったことが、普段部長が課長に対して言っていることとほとんど変わらなかったのです。
課長は部長に言われていたことに対しては、「そんなことはないだろう」と思っていたそうです。
ところが、部下に言われると「本当だったのか」と、納得せざるをえなかった。

これは、自分が普段付き合っている人から評価をもらうので、逃げ場がない評価制度です。
普段の仕事仲間からコメントや評点をもらうということは、いかに仲間を大切にして実践しているかが重要になってくる。すると、サボれなくなってきます
すごく民主的で合理的で、シビアな評価制度です。非常に理想的な形だと思います。今後この評価制度を広めていきたいです。

採用をせずに人員を確保する方法とは?

———生産性の高い組織を作るには、どうしたらよいでしょうか?

社員が納得して仕事ができる環境を整えることです。
「同じ仕事なのに、誰に頼まれるかによって、やる気が変わってしまう」
これは、誰もが経験したことがあると思います。どんなに正論を言われても、嫌いな人から言われても仕事をやりたくならないですよね。

つまり、マネジメントしなければならないのは、人間関係・信頼関係なんです。

理屈が通っていても、人に嫌われていては、人を動かすことはできません。
逆に、人間関係がよければ信頼関係ができていれば、理屈が通ってなくても、「あの人が言うならやるか」と行動に移してもらえることがあります。

社員が疑問を持ちながら仕事をしてもいい仕事はできません。生産性も高まりません。納得して仕事ができる環境を整えることが、社員の生産性を高めるのです。
そして、納得して仕事をしてもらうためには、信頼関係が大切です。社員と信頼を築くためには、包み隠さず伝えることが大切です。

人事を見える化するのです。
人事制度を開示しなければ、社員は「私はどうやって評価されているのだろうか」「ちゃんと評価されているのだろうか」と思うでしょう。社員は納得して働いていない可能性が高い。
人事制度を隠すことは、不信感を生みます。

———「人事の仕事を見える化する」とは?

私が日産自動車に入った時には年功賃金でした。
課長になるまでは、評価される側だったため、どのように評価されているのかの詳細を知ることはありませんでした。課長になって初めて評価制度を知り、このような観点で評価されていたのかと驚くことが多々ありました。

日産自動車にゴーンさんが来て3,4年目には人事制度を一新し、年功賃金をやめて、実力主義にしました。
そこで、人事制度の中身を全部本にして、全員に配ったのです。
「こうやって評価します。」
「評価項目はこれと、これと、これです。」
「評価ランクはこれだけあります。」
「給料はこうやって決めます」と、
評価制度の詳細をオープンにしたのです。

すると、評価に対する不透明感は一切なくなりました。
社員は、自分が何をすれば給与が上がるかが分かり、納得して頑張ることができるようになりました。
これが一つの見える化です。

———人事が大切にするべきことは何でしょうか?

お金と同じように、「人」も数値で客観的に判断できるようにすることです。
多くの企業は、人材採用が厳しい時だからといって、採用に大きな力を注いでいます。しかし、採用に力を注ぐことが最も大切かというと、必ずしもそうではありません。

例えば、
採用をした人がその会社に定着しているかを見てみると、意外と定着していない会社が多いことが分かります。採用してもやめてしまう。そしてまた採用してなければならない。
これでは、根元の問題が解決できていません。
本当の根元の問題は何か。そもそも、「何のために採用をしているのか」を考えなければなりません。

———人事は採用をどのように捉えるべきでしょうか?

採用が目的となってしまっているのです。
しかし、本来、採用は目的ではなく、手段であるはずです。
採用が目的化すると失敗する可能性が高いです。

採用は人を確保するための手段の一つにすぎないのです。
人員を確保するなら、
離職率を下げてもいいし、
中途や新卒の比率を変えてもいいし、
外注に頼むという手もあるし、
色々な手段がある中の一つが採用なんです。

「なんのために採用しているのですか?」
と聞いた時に、人事部は即答できるでしょうか?
「他の手段と比較検討したのですか?」
「どういう経済的な指標を考慮して決めたのですか?」
「5年後の採用は何人取ればいいんですか?10年後は?」
という質問にすらすらと答えられるようにした上で、採用という手段を選ぶべきです。

———採用に力を入れずに人員を確保することは可能でしょうか?

そもそも、なぜ採用に力を入れなければならないのでしょうか。
それは、募集をしなくても自然と人が入ってくる仕組みづくりができていないからです。
その仕組みを作るためには、外部から見ても魅力的な会社に映るように社内の環境を整える必要があります。

つまり、社内の改革をやっていないから、採用に頼らなければならないのです。
社内の環境が整っていない会社は、採用だけにお金をつぎ込むのでなく、社内の改革に力を入れるべきです。
社内の改革にもリソースマネジメントが効いてきます
「離職率はここ数年でどれだけ悪化したのか」
「どういうタイプの人間は定着して、どういうタイプの人間は離職したのか」
「離職した原因はなんなのか」
理由が分かれば、対策ができます。根拠をもって社内の改革ができます。数値がなければ判断できません。

「お金」はもともと数字だから捉えやすいですが、
「人」は数字で捉えるということに慣れていないため、分かりにくいかもしれません。
しかし、「人」も数値で客観的に判断できる指標を持っていないと、根拠のない判断となり、危険な人事経営になりかねませんだからこそ「リソースマネジメント」が大切なのです

全てを数値で管理することはとても時間がかかることですが、そこが競争優位性になります。
みんながやっていないし、時間がかかることというのは、裏返したら、やったら勝ちということ。5年先行していたら、相手はいくら頑張ってもその5年を埋めるのは難しい。

簡単なことです。
他の人がやっていることはやってはいけない
みんなと逆のことをやれば勝ちなんですよ。

———山極社長、貴重なお話ありがとうございました。

「ALL-IN」概要資料

生産性をあげる極意 無料小冊子プレゼント!

目次

  1. ALL-IN開発コンセプト
  2. ALL-INの機能紹介
  3. 料金比較
  4. 導入ポイント

Facebookページにぜひ「いいね」をお願いします!

「いいね!」を押すと「経営をアップグレードしよう!」の最新コンテンツが受け取れます

すべての業務がひとつにつながる、クラウド経営システム「ALL-IN」について詳しく知りたい方はこちら!

クラウド経営システム「ALL-IN」の
資料をダウンロードする(無料)