今回は、『なぜあの会社の社員は「生産性」が高いのか』の著者でもある有限会社 人事政策研究所の望月代表に、コンピテンシーを活用して社員の生産性を高める方法についてお聞きしてきました!
有限会社 人事政策研究所
代表 望月 禎彦
立教大学卒業後、ユニ・チャーム株式会社人事部を経て、1992年人事政策研究所を設立。2011年よりノウハウを体系的に提供する塾形式の「望月人事クラブ」を主宰。支援先は20年間で300社以上。2000年には、そのノウハウを結実させたソフトウエア『コンピテンンシーマスター』を、2010年には、人事評価ASPシステム『コンピリーダー』を開発し、ユーザー数は累計1000社にのぼる。その導入先は上海、台湾にも及んでいる。
また、大手メガバンクの講演では、コンスタントに年間1,000名超の経営者/マネージャーに実践ノウハウを提供。
2011年には、20年間のノウハウを体系的に提供する塾形式の『望月人事クラブ』を主宰し、全国各地に『出来る人を増やす』活動を推進している。
有限会社人事政策研究所Webサイト http://www.jinji-k.co.jp/
有限会社 人事政策研究所はどんな会社か
———有限会社 人事政策研究所とはどんな会社なのでしょうか?
弊社は、大きく4つの事業を展開しています。
1つ目は「人事コンサルタント事業」です。中堅・中小企業の経営者の顧問をやっています。人事コンサルタントとして、経営者の人にアドバイスをして、会社によって異なる人事の課題解決の支援をしています。
2つ目は、「講演・セミナー事業」です。銀行を中心に年間で約50本の講演を開催しています。
3つ目は「人事コンサルタント育成事業」です。30年も人事コンサルタントをやっている人はなかなかいないということで、そのノウハウを教えてほしいと頼まれるようになり、2011年から「望月人事クラブ」というコンサルタントを育てる学校を始めました。現在は東京校、大阪校、博多校があり、今年で9期生になります。
4つ目は、「ソフトウエア開発事業」です。評価制度のソフトウエアや「マイコンピテンシー」という人の能力を測るテストの開発をしています。株式会社あしたのチームは、弊社のコンピテンシーディクショナリーを活用した評価制度のソフトウエアを販売しており、8年間で1000社程が導入しています。
———人事について考える上で大切なことはなんですか?
人事は、3つの要素からなると理解することです。
1つ目は『採用』
2つ目は『教育』
3つ目は『評価』
これが、人事の全てです。この3つを回せるようになってくると、会社が成長していきます。
採用であれば、いい人材をどうやって採ろうかと考える。これはPDCAでいうとPです。採用した人をどうやって教育するかというと、仕事をさせながら教育するはずです。これはDoです。
また、評価はCheck そしてActionに繋がります。
つまり、PDCAサイクルを回すというのは、人事でいうと『採用』と『教育』と『評価』のサイクルを回すということなのです。
———日本の企業の人事の課題は何でしょうか?
現在、自分たちのほしい優秀な人材が取れない時代になってきています。そのため、『採用』『教育』『評価』の三本柱の中で、『採用』にばかりお金をかけるのは無駄です。
中堅・中小企業は特に、今いる人をどう『教育』して、どう『評価』していくのかにスポットをあてて考えるべきです。「どうやって人材を早く育てるか」そして「どうやって生産性を上げるか」が課題となっているでしょう。
———どうしたら優秀な人材を育てることができるのでしょう?
それは、目標となる人(優秀な人)を決めて、目標となる人と自分を比較し、違いを認識して埋めていくことで達成できると考えています。目標となる人のよい所を徹底的に真似るのです。私はこの方法を「目標人物設定法」と名付け、様々な会社に導入し、成果をあげてきました。
しかし、一部の中堅・中小企業では、「目標となる人がいない」と言われ、この方法がすべての企業で使えないことに気付きました。実際、ベンチャー企業ですと年配の社員よりも新卒の社員の方が優秀である会社も少なくありません。
そこで、目標となるような「高い業績を上げている社員」がいないのであれば、社員みんなで集まって、話し合い、架空のモデルを作ればいいと思いました。架空の目標人物設定に役立つのがコンピテンシーだったのです。
コンピテンシーディクショナリーで社員の生産性を高める
———コンピテンシーとは何でしょうか?
コンピテンシーとは、「高い業績を上げている社員の行動特性」のことです。もっと平たく言えば、「仕事が出来る人の行動」と言ってもいいでしょう。
もともとは、アメリカで外交官の評価基準として使われていました。しかし、これは、100を超える項目がずらりと並んでいただけのものでした。体系的にもなっていない、群にも分かれていない、中小・中堅企業にはフィットしないものでした。
そこで、コンピテンシーを中小・中堅企業に使えるものにするため、群にまとめるなどして整理しました。また、ユニ・チャームに在籍していた際に創業社長の高原さんと作成した「行動をベースにした評価制度」の考えも取り入れ、修正を重ねました。
そうして誕生したのがコンピテンシーディクショナリーという8群75項目のモデルです。
これを活用すれば、社内に目標となる人がいなくても、目標を設定できます。
———コンピテンシーディクショナリーはどのように活用するのですか?
コンピテンシーディクショナリーの活用は3つのステップからなります。
<①コンピテンシーを選ぶ>
今後の自社の方向性や戦略を加味して、コンピテンシーディクショナリーの75項目のコンピテンシーの中から自社(または当該職種)に適したものを選びます。目標となる人物像をはっきりさせます。まず個人で、できる人の行動特性を選び、次に、グループになって話し合って良いものを厳選し、最後は、みんなで話し合って最も良いものを選びます。
<②具体的な行動として書き出す>
選択したコンピテンシーについて該当スタッフみんなで話し合い、その内容を具体的な行動として書き出します。自社の場合はどういう行動となるのか出来るだけ具体的に書き出します。
<③書き出した行動の中から良いものを選び、まとめる>
みんなの書いた具体的な行動の中から良いものを厳選して選び、小冊子などにしてまとめます。
この小冊子には「自分たちの行動基準」が自分たちの言葉で記載されています。具体的な行動として書かれているため、この行動基準と評価を結びつけることで、社員は、どのように行動すれば自分が評価されるのかを理解でき、仕事に対して高いモチベーションで取り組むようになります。
つまり、コンピテンシーを取り入れることで社員のモチベーションも上がり、生産性も上がる。すると、自然と業績も上がってきます。
———実際に業績は上がるのでしょうか?
ある自動車販売会社ではコンピテンシーを導入した翌月の売り上げが2倍になりました。その会社では、「仕事のできるショールームレディの人数が足りない」さらには、「数年がかりでショールームレディを育ててもすぐに退社してしまう」という問題がありました。
そこで、仕事のできるショールームレディを計画的に育成するために、コンピテンシーディクショナリーを活用した研修を行うことにしました。コンピテンシーについて学びながら、必要な行動基準を全員参加で作成しました。
「私たちは何を大事にするべきなのか」という最も本質的なテーマについて、コンピテンシーディクショナリーを活用して全員で議論し、価値観をすり合わせ、「具体的な行動」を書き出し
「自分たちの行動基準」をまとめました。そして、実際にまとめた行動基準にそって動き始めたところ、なんと、翌月の売り上げが2倍となったのです。
さらには、売り上げが上がるだけでなく、介護施設の従業員の満足度を上げたり、定着率を上げたりすることにもつながりました。この他にも、コンピテンシーについて直接指導した会社だけでも、300社程あります。会社の大きさも業種も関係なく活用できます。
また、コンピテンシーディクショナリーは中国でも活用されています。世界共通で活躍できるツールとなっています。
———一度コンピテンシーを導入すれば、業績は上がり続けるのでしょうか?
いいえ。もちろん導入した直後は効果が出ますが、時間がたつと伸びは停滞することがあります。時間がたつと、コンピテンシーに対する意識が薄れてきたり、忘れたりするからです。
そこで導入するのが360度アンケートです。360度アンケートとは、自己評価と、上司・同僚・部下・後輩・顧客等からのアンケートをとり、改めて行動基準定着の不十分な点に気づかせ、改善を促すことを目的に実施するものです。
周囲に自分を評価してもらうことで、第三者的視点で自身を振り返ることができます。この視点での気づきが、社員の行動を変え、業績のアップに繋がります。
社内大学が生産性を高める!
———評価をする上で大切なことは何でしょうか?
人を育成できる評価制度をつくることです。今の時代は優秀な人材が採用できないので、自社で教育して育成しなければなりません。そのためには、評価と教育を連動させる必要があります。
しかし、実際は評価と教育が結びついていないことが多い。なぜかというと、評価で使っている言葉と、教育で使っている言葉が違うからです。
大切なのは、コンピテンシーという「同じツールを使うことで、同じ言葉で語れるようになる」ということです。もしAさんは「プレゼンテーション能力」が低いと評価したら、教育で改善できるプログラムが結びついていなければなりません。
つまり、評価の項目と、もしそれが低評価だった時に改善できる教育プログラムの結びつきです。
例えば弊社の場合、75項目の各コンピテンシーを向上させる教育のメニューがあります。これが評価と教育の連動です。
———どうしたら教育と評価を連動させることができるのでしょうか?
どうせ教育体系をつくるなら、『社内大学』を作りましょうと呼びかけています。各部署の部長が学部長になって、単位制で様々な講座を開設し、必修科目や選択科目がある。まさに、社内にある大学です。
例えば、ブライダルジュエリーを販売するプリモジャパン株式会社では、社内大学「プリモカレッジ」をつくりました。当時の社員の平均在社年数は約1年半。
1年半というと、ちょうど仕事を覚えた頃。そんな時に辞めてしまわれては、生産性が高まりません。そこで、入社をして3年で卒業する社内大学を作りました。すると、平均在社年数が3年を超えるようになったのです。社員の定着率が高まり、業績も上がりました。この取り組みは「ワールドビジネスサテライト」というテレビ番組でも取り上げられました。
会社の方針と結びつけて独自のカリキュラムをつくるので、卒業するころには活躍できる人材が育っています。学生証を作ったり、卒業証書も渡したりと、本格的な学校を様々な会社の中に作り上げています。
役職者が自分たちでカリキュラムを作り、自分たちが店長に教えるという仕組みにより、教育制度が内制化し、よい教育のサイクルが生まれます。
コンピテンシーを採用に生かす
———優秀な人材を採用するのが難しい現状ですが、どうしたら、自社に必要な人材を見極めて採用することができるのでしょうか?
採用活動にもコンピテンシーを活用できます。例えば、社内でコンピテンシーを調べるテストを行い、部署ごと業績の高い人のコンピテンシーの特徴を調べます。75項目の中でどの項目が高いかを調べ、同じテストをしてその項目が高い人物を採用すればよいということです。
———生産性を高めるために意識すべきことは何でしょう?
『行動を変える』ことです。確かに、意識を変えることは大切です。しかし、意識はなかなか変わらないものです。大事なのは、「形から入る」こと。その後に心を入れること。
これは、日本人が昔からやってきている事で、例えば、武道や茶道、生け花などでやっていることです。とにかく、心とか意識じゃなくまずは型どおりさせるでしょう?やっているうちに茶道や生け花の精神が分かってくる。
現在、中堅・中小企業が優秀な人材を採用するのが厳しい時代となっています。だから、意識を高めろと言っても難しいです。
だからこそ、まずは形から入りなさいと。やっているうちに自然と心が入っていき、意識まで変わっていきます。
ここでも、コンピテンシーディクショナリーが活躍します。コンピテンシーディクショナリーを活用することで、やるべきことを行動まで落とし込むことができます。どんな行動をすればよいかが明確なので、社員も行動に移しやすくなる。そうして、行動を変えることで、心や意識も変わっていきます。行動と意識が変われば、自然と生産性も上がっていきます。
コンピテンシーは、人の持ち味を生かして生産性を上げるのに役立つのです。
———望月代表、貴重なお話ありがとうございました!
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