時代の流れが速くなり、ヒット商品の寿命もだんだん短くなりつつある今、既存の製品、サービスにとらわれることなく、新しい製品、サービスに「SHIFT」させることが企業には求められています。しかし、Appleのように全く新しいものを生み出すことは難しく、競争の激しい市場、いわゆる「レッドオーシャン」での新製品、サービスを展開し、成功することも考えねばなりません。そこでキーとなるのがエクスターナル・マーケティングです。
そこで、今回は、「レッドオーシャン」に進出し、成功を収める上で大切なことを、エクスターナル・マーケティングにおけるセオリーと成功事例を交えながら紹介したいと思います。
エクスターナル・マーケティングに必要な3つの要素とプラスα
まず、エクスターナル・マーケティングについて、簡単に説明をします。エクスターナル・マーケティングとは、企業と顧客の間でのマーケティングで、一般的なマーケティングの4Pに対応し、従業員との間におけるインターナル・マーケティングの対として用いられます。
そして、エクスターナル・マーケティングにおいて重要になるのが、ユーザーの心を捉えることです。そのために顧客が購入するプロセスを構造化し、顧客の購買意欲を促さなければなりません。
そのために「デザイン」「ファンクション」「ストーリー」の3つの要素を兼ね備える商品、サービスを提供することがまず、大前提です。さらに購入プロセスを構築する上で大事なのが、プラスαの工夫で差別化を図るということです。この3つの要素を前提とし、プラスαを行うことがエクスターナル・マーケティングを成功させるための肝になります。
このプラスαが商品、サービスをヒットさせるかの明暗を分けます。つまり、商品、サービスがヒットするのは偶然ではないのです。次章では、この3つの要素にしっかりフォーカスし、あるプラスαを行って「SHIFT」を成功させた企業のエクスターナル・マーケティングをご紹介していきます。
「SHIFT」を支えた2つのプラスα
アウトドア製品から煙感知器への「SHIFT」
米国の伝統あるアウトドアメーカーのコールマンの成功事例を取り上げます。コールマンの主力事業は登山やキャンプなどで活用するアウトドアグッズでしたが、収益拡大のため、煙感知器市場への進出を決断します。しかし、煙感知器市場は競争の激しい「レッドオーシャン」であり、進出当初から成功に対する懸念の声は少なくありませんでした。
しかし、結果はわずか一年で市場シェアの39%を獲得。大成功に終わりました。では、このコールマンの「SHIFT」における成功は何が要因だったのか。それは「デザイン」「ファンクション」「ストーリー」を売り場にて明確にし、売り場でのユーザーと商品との「タッチポイント」で商品の差別化を図ったことでした。
コールマンは、商品を「デザイン」するときに、多くの家でキッチンの煙感知器の電池が抜かれているという事実に着目しました。料理で発生する火による誤作動が相次いだためでした。コールマンは誤作動が起こってもすぐリセットできるように、リセットボタンを中央に大きく設置し、脚立なしでもすぐにリセットできる商品をデザインしたのです。
さらに、煙感知器へのニーズは場所により異なること、買い替えるタイミングが場所により異なることに着目。つまり、キッチンは誤作動が起きてもすぐ対応できるもの。子供部屋は感度が高く、安全性が高いもの。そして、廊下はライトが搭載され、機能性があるものといった具合に場所により選べる商品を開発しました。これは、「場所によって機能を選択できる」という「ファンクション」を生み出しました。
これにより、「場所ごとに最適なものを選べ、利便性がある」というストーリーが出来上がりました。このユーザーのニーズに対する明確なストーリーが売り場においてユーザーの心をつかんだのです。
コールマンは「デザイン」「ファンクション」「ストーリー」を明確にした商品を売り場で並べることで、瞬時に売り場において“特別”と感じさせ、成功したのです。この「タッチポイント」という視点がプラスαとして働いたと言えます。
ビンワインから缶ワインへの「SHIFT」
オレゴンにあるワイナリー「ユニオンワイン」もビンで提供するワインを噛んで提供するワインに「SHIFT」させることに成功しています。
ユニオンワインは上記の3つの要素を一貫させた商品で成功しました。では、コールマンが売り場での「タッチポイント」に着目したように、ユニオンワインは何に着目し、エクスターナル・マーケティングを行ったのか。
それは、マーケットにおけるライバルの関係において、選択を迫るA or Bではなく、選択肢を増やすA and Bという関係で捉えたことです。
小規模であったユニオンワインには、大衆向けに商品をPRする資金がありませんでした。そこで、ユニオンワインは消費者にアプローチするのではなく、ワイナリーが集うイベントにて、気取らないでカジュアルに飲める缶ビールをPRしました。つまり、ライバルにPRしたのです。これにより、高級ワインもいいが、たまにはリーズナブルで手軽に飲める缶ワインも良いとワイナリーに刷り込んだのです。ライバルと戦うのではなく、共存するというユニークな視点を持っていたのです。
これがウケ、消費者にも話題が広がり、ユニオンワインの缶ワインは成功しました。
おわりに
エクスターナル・マーケティングは「誰に」「なにを」「どのように」働きかけるか、費用対効果に見合う形で行うことが重要です。コールマンは「誰に」を明確に、そしてユニオンワインは「どうやって」においてプラスαを行いました。製品開発の段階から売り場での優位性を高め、購買意欲を促したコールマンはPRにかける費用はほとんどかからず、ユニオンワインもライバルが拡散母体となり、ほとんどPRに費用をかけていません。
中小企業はCMに多くの資金を投資できない分、ユーザーの心をつかむための「What to say」を明確にした上で、プラスαの工夫をすることが大切であるということを二社の成功事例は示していると言えるでしょう。
<参考文献>濱口秀司「誰に何をどのように働きかけるか:エクスターナルマーケティングのアプローチ」ハーバード・ビジネス・レビュー
「ALL-IN」概要資料
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