『サイバーエージェントのグループ会社社長インタビュー連載企画』
【最終弾:前編】今回は、株式会社サイバーエージェント常務取締役 兼 株式会社CyberZ代表取締役 山内社長に、「成功する新規事業のシカケ」についてお聞きしてきました!
株式会社サイバーエージェント常務取締役
株式会社CyberZ代表取締役社長
山内 隆裕<経歴>
1983年 東京都三鷹市生まれ
2006年 立教大学卒業
2006年株式会社サイバーエージェント入社
2007年株式会社マイクロアドの設立に参画
2009年株式会社CyberZ設立とともに代表取締役社長就任
2012年株式会社CyberZ USAを設立
株式会社サイバーエージェント スマートフォン広告事業管轄取締役
株式会社CAリワード(現 CA wise)取締役
2013年株式会社AMoAd取締役就任
2015年株式会社CyberZ 台湾、韓国を設立
2017年株式会社DDTプロレスリング取締役就任
2018年株式会社サイバーエージェント常務取締役に就任<企業情報>
株式会社サイバーエージェント
https://www.cyberagent.co.jp株式会社 CyberZ
https://cyber-z.co.jp/<関連記事>
『サイバーエージェント子会社社長の告白』【最終弾】〜山内 常務取締役が語る『新卒から突き抜けて成功する方法』とは?〜
市場でNo,1をとる”新規事業のシカケ”とは?
———山内さんといえば、”新規事業を仕掛けるタイミングが絶妙”で、CyberZ社においては「モバイルからスマホへの業態変更、eスポーツ事業の拡大」など、市場を席巻している印象をうけますが、ご自身で新規事業を考える時に大切にしていることは何ですか?
「市場の流れ」と「自社の流れ」のタイミングを合わせることです。
「市場の流れ」は、もちろん大きく回っている。
これは多くの人が意識していることだと思いますが、
一方で「自社の流れ」もある。
例えば、「自社にどういう能力持った人がいるか?」などです。
市場への参入のタイミングが良くても、社内のリソース整っていなければ勝負できませんから。
アプリをつくりたいのに社内にエンジニアいなかったら、いくら市場の流れを読めていたとしても、実現できないわけです。
「市場の流れ」と「自社の流れ」が合うタイミングを探しています。
仕掛けるタイミングは、早くてもよくないし、遅すぎもいけない。
「ちょっと先に出る」という感覚でやっているイメージです。
新規事業に「GO!」をだす条件
———山内さんは複数の事業案を提案される立場にもあると思いますが、新規事業案に「GO!」を出す時の条件はありますか?
案を実行に移す事業と、実行に移さない事業の差は何ですか?
まず、「うさんくささ」は見ていますね。
実現可能性が低い事業を実行に移しても、無駄打ちに終わる可能性が高いですから。
「メリットとデメリットが整理できてない」「儲かる仕組みの根拠が薄い」など、実現可能性が低い“うさんくさい事業案”って結構あります。
実行に移したら失敗すると感じたものは、感覚的にGOは出しませんね。
「会社内のリソースを把握して、収益化までイメージできているか」もポイントです。
社内のヒト・モノ・カネ等のリソースを活かせていて、自社のポリシーに大きく反することでなければ、内容はどのようなものでも基本的にはやらせたいとは思っています。
それがイメージできない事業の場合、組織的にマイナスにつながるため駄目だという話ですが、何かワクワクするような面白そうな事業だったら挑戦させたいですね。
例えば、CyberZという会社においては、今ビットコイン事業に挑戦しようと思ってもできないと思います。
金融をやっている人もいないし、そういう知識を持っている人も少ないので、それはできない。逆に広告のテクノロジーだったら強いので、そういった事業で芯を食っている提案であれば、積極的にやらせたいなと思います。
また、何か「変化を捉えている提案」がいいと思っています。
「今はこういう流れになっている市場が、今後こうなっていく流れがあるから、今これを仕掛けたい」という提案はいいですね。
あとは、「やる人(誰がやるか)」も重要です。
「その事業をやり抜ける人か」「その市場で戦う上で、長所となる部分を持っているか」そういった点もポイントだと思います。
成功する事業と失敗する事業の差とは?
———実行に移した事業の中で、成功した事業と失敗した事業の差は何ですか?
当たり前ですが、「やる人の能力」と「市場で求められている能力」が違うと、失敗します。
また、やる人が正しくマインドセットされているかがとても大事です。
実行に移す本人が当事者意識や覚悟を持てていない状態だと、やらされている感がでてしまい、失敗します。
———山内さんの中で、「これは成功した」と言える事業はありますか?
一例をあげるとすると、「F.O.X」というスマホ計測ツールですね。
CyberZでは、モバイルからスマホに業態をシフトしたので、F.O.Xが先行者メリットになって、参入障壁を大きくつくることができました。
売上が急拡大しすぎて、これはサイバーエージェントや電通など、今までやっていなかった企業も参入してくるという感覚があったので、テクノロジーで差別化しようと考えました。
その当時、営業をやっていた市川という、今では役員になっている人間がいるのですが、彼は物事にたいしてすごく細かいんですよ。
一緒に社外の勉強会や研修などに参加した際も、すぐに理解し、一人でどんどん実行にも落とせるタイプで、几帳面。最初に会った時から他とは印象が違いました。
技術面のキャッチアップなども早いだろうと感じ、そういった彼の姿を見て、「 “F.O.X”をやってみよう」と提案し、責任者として担当してもらい、それが成功しました。
———山内さんの中で、「失敗した」事業はありますか?ぜひ具体例を教えて下さい!
7~8年ほど前、まだYoutuberという概念があまり出てきていなかった時に、市川に「配信者をたくさん育て、広告ができたら、相性が良いのでは?」と伝え、その領域を任せていました。
しかし、市川は、この領域はあまり得意ではなかったようで、「あれ、どうなった?」って聞いた時には、もう「UUUM(ウーム)」が既にできていました。
やはり、各自の強みと、その市場で戦う上で必要な力を理解した上で仕掛けることが、成功に必要な条件だと実感しました。
仕掛けるタイミングとしては、バッチリだったんですけどね(笑)。
新規事業のアイデアを生むために
———どうしたら山内さんのように新規事業案のアイディアを生めるようになるのでしょうか?
“クモの巣”のように自分の興味範囲のテリトリーを張り巡らせることです。
Twitter等で二次情報を得て、気になったものは一次情報をとりに役員が実際に調べにいく。
「可視化推進」というプロジェクトを実施しています。
二次情報で見えていない部分を見えるようにする。
二次情報は、あやふやじゃないですか、みんなが好きなことを言えるから。
ですので、一次情報を自ら取りにいくことを大切にしています。
例えば中国の動画市場がどうなっているのかって、中国にいる当該者に直接聞いた方がいいと思っています。
よって、直接現地に行って「どんな経営をしているか」とか、「どういうトレンドになっているのか」を直接聞いて戻ってくる。それは、私たちの特色かもしれません。
二次情報を信じないで、一次情報を取りに行く。
実際に自分たちで調査し、現状分析をしていく。
自分たちが事業としてやる時に気になるポイントを、自分たちで調べられるようにしています。
参入障壁になるポイントがいくつかあると思うので、それを自分たちのリソースだったら、こうやって越えるという明確にイメージをつくるためにも重要です。
あとは、社長は、「社長にしかできない仕事をすること」も大切だと思います。
例えば、「売上計画を100億円から200億円にする」といったら、200億円に伸ばすために既存事業をみんな頑張っていく。
そんな状況で新しくてまだ規模の小さい事業をやることは、多くの社員が納得しないと思うんですよ。
そこから人を捻出することも難しいでしょうし。
もしそうなった時に、それを納得させられるのって、社長しかないと思います。
ですから、時には社長自らが新規事業を仕込むということも、とても大事な要素かなと思います。
———山内さんも最初「スマホに転換する」と言った時の、率直な社員さんの反応はいかがでしたでしょうか。エピソードなどありましたら教えてください。
そうですね。
ちょっと嫌な雰囲気になったのを覚えています。
社内のリソースの問題もありましたし。そうなるのは仕方ないと思っていました。
でも、それでも「僕(社長)にしかできない仕事なんだろうな」と思って、覚悟を決めてやっていました。
「たとえ失敗したとしても、その結果はすべて自分の責任として引き受ける」という覚悟を持てるか。
そうやって、自責の念を持って決断と実行を繰り返す事が、自らを成長させる唯一の方法ではないでしょうか。
———山内社長、貴重なお話ありがとうございました!
本記事の作成者:黒田訓英
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