経営者インタビュー

日本のホワイトカラーの生産性を改善するには?―須田仁之(スダックス)から10の提言

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須田 仁之氏(スダックス)を皆さんはご存知だろうか。ITスタートアップ界隈では知らない者はいないだろう。彼は社会人になってから、イマジニア、ソフトバンクグループ(スカパー、ブロードメディア)、アエリア、ゲームポット、そして弁護士ドットコム、クラウドワークスと7社のIPOに関わってきた。その後、数多くの中小・ベンチャー企業に社外役員や株主として関与している。多くのベンチャー企業のバックオフィスに関わっている男と言っても言い過ぎではない。

そんな須田氏が「ホワイトカラーの生産性が低い」と言っているのは、前回のツールまとめ記事で少し触れた通りだ。今回はお時間を取って頂き須田氏の「生産性向上のための提言」をじっくり伺った。

 参考 >>【2016年版】ベンチャー役員10名がガチで選ぶ!経営者仲間にぜひ薦めたい「導入して良かったツール」

- 前回の記事でホワイトカラーの生産性について物申したいとお話されていました。

須田- そんな物申したいという大層なものではないんですけどね。自分も今はアラフォーになっちゃって、アドバイザーや社外役員という形で「会議に出て何となく偉そうに喋ってるだけ」と思われてるかもなんですけど、20代の頃とかってちゃんと手を動かして仕事してたんですよ(笑)当時の上司からは「頭は使わないけど、手を動かすのは早いな」と言われてました(苦笑)

- 作業を効率化していこうという原体験はあるのですか?

須田- 20代の頃、上司に激詰めされていたからですね。経営企画・事業企画系の部署で下っ端の下積みだったんですけど、仕事量が多いのと、急に差し込んでくる無茶ぶりが多かったですね。毎日毎日、締切に追われるみたいな。大量のエクセル、大量のパワーポイント。マシーンみたいに動いてましたね。

効率的にやらないと終わらないし帰れないので、まずは「マウスを使わない」ところからはじめました。手をキーボードからマウスに移すだけで時間取られますからね。エクセルは完全に使わないんですけど、パワポも極力使わないぐらいマニアックでしたね。実は昔(2004年頃)その内容でメルマガとか書いてたら出版社の人から声がかかって、「ビジネスを効率化するPCショートカット辞典」みたいな本も出したことあるんですよ。

- そんなマニアだったのですね。それがその後の仕事の生産性向上に繋がっているのですね。

須田- 作業プロセスを高速化することのメリットは、「覚えてしまえば一生使える」のと「アホでも出来る」ってことですね。若いうちに覚えればその後の一つ一つの仕事が早くなるので、その分時間が有効に使えるし、「複利」で効いてくると思うので、自分がマネージャーだった頃は新人に教えてこんでましたね。

新人たちのデスクの後ろを定規持ちながら歩いて、マウス使ったら定規で「ビシ」っと叩くみたいな体育教師のように。今ならパワハラですかね・・・(苦笑)

あとはよく上司から「頭を使え!」って言われてたんですけど、新人の頃ってそもそもバカなので頭使っても無駄なんですよね。なので、とにかく作業だけ高速化して「とっととやる」ようにしましたね。考えて時間ばっかたってて、出来るアウトプットが「すっとこどっこい」なのってよくありますよね。何で上司は俺に考えさせるのかなーって不思議でした。僕がマネージャーになったときは部下に考えさせても時間ばかりかかるので、ググって分かりそうなものだけやらせましたね。ググるのは作業ですからね。

- 現在、須田さんが推奨するホワイトカラーの生産性向上策を是非教えてください

須田- PC作業効率化以外にもいろいろありますよね。日々、イラッとすることをまとめてみますか?(笑)ホワイトカラーの最近の仕事は、極論を言えば「人とコミュニケーションをとる」と「PCを使う」かの二つしかないですよね。コミュニケーションツールも増えたりしてますが効率化してそうでしてないシーンも見受けられますよね。ちょっと極論かもですが、いくつか上げてみたいと思います。

須田仁之からの「10の提言」

それでは、早速、須田氏の「10の提言」を見ていきましょう。ベンチャー・中小企業の社長は自分の会社と比較しながら読み進めてみて下さい。

1.「コミュニケーションツール」多すぎ問題

須田- 何かコミュニケーションツール多すぎですよね。コミュニケーショントラフィックが多いのはいいんですけど問題は「処理能力によって個人差が大きく出る」ことですね。処理の早い人は複数のコミュニケーションチャンネルをマルチタスクで処理できるんですけど、出来ない人はどんどん置いていかれるんですよ。

ツールを多用することで「出来る人と出来ない人」の格差が激しくなりすぎで、出来る人が「メッセ送ったじゃん、読んでないのかよ」みたいなマウントポジションをとりますよね。それが良くない。

僕は職業上、300近くのスレッドやチャネルに組み込まれていますが、コミュニケーションの無駄はどの会社でも起こっていると感じています。「Slack、僕は君と別れようと思う」というアメリカ人が書いた記事が秀逸でしたが、コミュニケーションが膨大になった代わりに、作業に集中しなければならないのに、気が散って集中できない、なんて事態になっている会社もある気がしますね。

もちろん、全員がマルチタスクでさくさく処理できるようになることは望ましいのですが、組織が大きくなればなるほどコミュニケーションの設計を最適化すべきですね。

2.「電話」は最低限に

須田- 最近、The Startupの梅木さんが「電話する人は仕事ができない」という記事を書いているので彼と意見が被っちゃいますが、その内容はまったく同意します。特に会社に掛かってくる電話って本当に最悪ですよね。会社員時代、僕あてに代表電話がかかってきて、総務の女の子が出て、その子が内線で「●●さんから電話です」って連絡が来て、僕が「あ、外出中って答えといて」とかいうやりとり。なにこれって感じですよね。超絶無駄ですよね。

僕は外部からの電話については今後かけてこないように「須田にはメールで送ってください」と伝えてもらうようにしました。あとは会社の電話ではなく携帯電話にかけてもらうようにしました。電話を取り次ぐ人の人件費とか超絶無駄ですからね。

ただ一方でメールだけだと冷たい印象を感じるコミュニケーションも多いので「声を聞いて安心する」感じで電話でフォロー&説明するってのは場面に応じて必要だとは思います。

3.「日報」って意味ある?

須田- 特に「誰も見てない日報」とかってありそうですよね。何か誰も見てない日報を書くのに1時間とかかけたりとか。フィードバックのない日報はあんまり意味がない気がしますね。上司がその日報見て「ここをこうやって改善したほうがいいかもね」ってソリューション出してあげないと意味ない気がしますね。日報は上司と部下のコミュニケーションにフォーカスするべきな気がします。

まあ、あとは新人が自分自身が何にどれ位時間を使ったかというのを把握分析するためっていう練習にはなるかもですが、週報ベースでいい気がしますね。

「意味のないメールを受信して削除する」って作業自体も無駄ですよね。日報と同じように嫌いだったのが、「電車遅延により遅刻します」とかいう遅刻メールですね。管理部門とかやってると全社員の遅刻メールとか受信するの最悪ですよ。「知らんがな」って話ですよね(笑)

「日報」と「電車遅延」のワードはフィルタリングで自動削除設定してましたね。メールはどんどんフィルタリング設定するのがオススメですね。今でも毎日やってるかもです。

あとメールでイラッとするのは「添付ファイル」ですかね。開くの面倒くさいですよね、大した資料じゃないくせに(笑)イケてるパワポ以外はテキストの箇条書きで十分ですね。

4.「Facebook」「Twitter」はシンプルに

須田- 情報収集ツールとしての「Facebook」や「Twitter」はかなり有効だとは思いますが、時間取られすぎるのは問題ですよね。特に友達数やフォロー数が多くなるとその情報処理が大変です。

特に平日の仕事中は仕事と関係のない「気が散る投稿」に時間を奪われないようにすべきですね。男性陣は自撮り写真をアップする可愛い女子とかはなるべくフォローはずしておいた方がいい気がしますね(笑)そういうフィードは週末に観ましょう。

5.「報告のための会議」は減らすべき

須田- 「報告のための会議」は本当に多くて辛いですね。そういう会議はぶっちゃけ15%ぐらいしか聞いてないですね。事前に資料もらってれば数字とか「分かってるちゅーの」って感じですね。

数字の報告→上司からのツッコミ→部下の言い訳、みたいな「言い訳モード」になるともう最悪ですよ。必死な言い訳に時間が費やされるという。

会議は基本「TODOチェック」がいいと思ってます。人はみなすぐ忘れるので(笑)あとは「すげーTODO」を新たに出すブレストとか好きですね。会議中に「おー、それいいね!ウルトラCじゃん!やるな!」みたいな。

あと、そもそも会議ってわざわざ人と人が対面してやってるので、楽しくやりたいですよね。笑いながらやりたい。ピリピリした雰囲気で会議なんかやりたくないですよね。僕はなるべく会議中は笑いを取るように心がけてますね。雑談とお笑い担当です(笑)そういう雑談からウルトラCが出るんですよ。

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6.「ペーパーレス」になるべくしよう

須田- 会議資料のプリントアウトも、紙の無駄&プリントアウト時間の無駄ですよね。僕が経営企画の現場時代に一番イヤだったのが「契約書」関連ですね。プリントアウトして、ホチキスして、製本テープ貼って、捺印稟議回して、代表印押してもらって、それを郵送して、返信の催促して、戻ってきたらファイリングして、とか。何なんすかこれ。

しかも重要な契約とかだったらまだいいんですけど、何か仕事を始める前の秘密保持契約(NDA)の締結とかこのプロセスで1週間ぐらいかかりますからね。そしてその後、その会社と特に仕事はしないことになった、みたいな。何なんだよ!そもそもお互いそんな機密情報もってねーだろ!(苦笑)

まあ、こういう現場時代の「怒り」からクラウドサインというペーパーレス契約のプロダクトを弁護士ドットコム社に作ってもらいました。

ただ完全ペーパーレスってのは難しいですね、プリントアウトするシーンもあります。それは企画書や原稿などの「赤入れ」ですね。これはPCベースでやるよりアナログの方がいいんですよね。

7.「悪い報告」にはインセンティブを与えよ

須田- 上司が気をつけた方が良いのは放っておくと部下から「いい報告」ばかり上がってくるようになることです。みんな「いい子」ぶりますからね。でも本当に欲しい報告って「バッドニュース」の方なんですよね。でも、上司に怒られたり、評価が下がったりするので悪い報告はしたがりません。

私は悪い報告をした人を評価制度に結びつけるべく、ポイント付与してましたね。会議中に悪い報告を上げてきた人に「おー、それはなかなかの悪い報告だなー。いいねー!3ポイント!さて、これどうやって解決するよ?俺が謝りに行くしかないかこれ」みたいな会話ですね。

8.「エクセル」は一画面で

須田- エクセルとかGoogleスプレッドシートとか見る機会が多いんですけど、パッと見の一画面で重要な情報を見れないとイライラしますね。「えーと、その情報は右の方の列の備考欄に書いてありまして」とか言われて画面スクロールさせるのとか最悪ですね。しかも行列が固定されてなかったり、空欄のセルや変な余白が多かったり…

- お恥ずかしながら、弊社でも以前同じフィードバックを頂きましたね。

須田- あとはKPI、KPIとか言って、数字や達成度しか書いてないエクセルでの報告も意味ない感じありますよね。今月は達成した達成しなかったとか。しかもサービス初期で大したユーザー数いないのに。

結果の分析数値よりも「顧客生データ」の一覧をリストで見ろって言いますね、それこそスプレッドシートは一画面で50件ぐらいは見れるので4スクロールぐらいでざっくり200クライアントのデータ見れますからね。200社ぐらいはクライアント名と利用状況を把握しろと。初期のヘビーユーザーを把握するのは重要なんですけど、KPI数値とか見てても全然わからないわけですよ、生データを見ないと分かんないんですよね。

9.「ノートPC」を営業に持たせよ

須田- 営業先で手書きでメモして、それを会社帰ってからPCで報告書に書くとかナンセンス過ぎですよね。出先でその場でノートPCで作業してしまったほうが早いですよね。電車で移動中とかに聞いてたことも忘れてしまいますし。それで残業が増えるとか、そんなことしてたら当たり前ですよね。

営業先でもらった宿題とかTODOとかも「帰社してから処理しよう」ではなく、Wi-Fi繋いでその場で処理するのがベターですね。これは営業先だけでなく、会議中とかにも言えるかもしれません。ノートPCを持っているなら、出来る限りその場で即処理する。

10.「議事録」は自分で書けば?

須田- 会議と関連しますが「議事録」を新入社員とかに取らせてますけど、あれって意味あるんですかね?何か文書をまとめる練習にはなるかもですが、若手って何もかも網羅しようとするので、単なる長いドキュメントができるだけですよね。あと前回の議事録を確認とかで見返す際にも、散漫な議事録を見るところからスタートすること自体終わってる感じしますね。

議事録って見返さないと意味のないもので、結局「備忘録」みたいなもんですよね。備忘録は仕事を管理する人が自分のやりやすいフォーマットでやるべきで、決して若手に「メモとっとけ」って降る仕事じゃないですよね。それで「お前、メモとれてないだろ」とか怒ったりしますよね。

私は自分がプロジェクト管理者の場合は自分でメモを取るようにしますし、あんまり人の議事録はあてにしてないですね。他人のフォーマットの議事録を読んでも頭に入ってこないし無駄ですね。

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まとめ

- 生産性を上げるための須田さんのマネジメント観とは?

須田- 今回は生産性という観点だったので、どちらかというと「作業はとことん効率化しよう」「ムダを省こう」みたいなものが多かったのですが、本当は僕は「ムダが好き」ですね。

- え?どういうことですか?矛盾しているような

須田- 効率化追求の先はマシーンとかロボットですよね。我々は人間ですからね、マシーンじゃないですよ。効率化ばかり求めるとさもしい人間になってしまいそうですよね。人間の仕事は効率化よりも創造性だったり、楽しさや心地よさをクリエイトする方が楽しいはずですよね。日々のルーチン業務を極力効率化することは、すなわち「ムダな時間を確保する」ためなのかもしれません。

- なるほど。ありがとうございました!

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