今、日経新聞において毎日のように登場するトレンドワードがあるのをご存知でしょうか。それはROEというアルファベット3文字です。この3文字のトレンドワードが意味するのは何であるのか、なぜ注目を集めているのかを中心に、ご紹介していきます。
1. ROEとは何?
ROEとはReturn on Equityの略語であり、日本語にすると自己資本利益率と訳される経営指標の1つです。算出方法としては、純利益÷自己資本が一般的です。
自己資本利益率と聞いてもピンとこない方のためにもう少し噛み砕いて説明すると、ROEとは、株主から調達した資金を使い、どれだけ効率よく利益を上げているかを確認するためのものになります。
2. なぜ今ROEが注目されているのか?
では、なぜ今この経営指標が注目され、取り上げられているのか。それは日本経済の成熟、そして衰退という外的要因の変化により、主な株主が取引のある会社や銀行から外国人投資家へと変わったことが一番の要因になるでしょう。
もう少し詳しく説明すると、バブル期の日本経済が上向いていた時期は、取引のある会社や銀行が株を保有するいわゆる仲間内経営をしていたので、さほどお互いの経営に干渉することはありませんでした。
しかし、バブル期が終わり、グローバル化が進行、IFRSという国際会計基準採用の決定などにより外国人投資家が株を保有する割合が増え、少しでも得をしたい外国人投資家たちは効率の良い経営を実施し、利益を上げるよう企業に要求するようになりました。
つまり、今のROEブームは日本企業が不況の中で資金を調達するため、必死に海外投資家を魅了する目的で巻き起こったということができます。
これに加え、ここでは詳しくは述べませんが、日本経済回復のため、日本企業の稼ぐ力向上の目的で経済産業省から2014年8月にリリースされた「伊藤レポート」の存在もROE重視経営に拍車をかけました。
3. 高ROE企業紹介〜スタートトゥデイ〜
多くの企業がROE経営に舵を切る中、ROEにおいて高パフォーマンスを出している企業を紹介したいと思います。以下のランキングは5月24日に日経新聞で掲載されたもので、ROEの改善幅が大きい順にランキングされているものです。
<出典>日本経済新聞「決算番付2017(2)株主のお金、上手に使う ネット・ゼネコン改善」2017年5月24日
このランキングで特に注目して頂きたいのが2位のゾゾタウンを運営するスタートトゥデイのROEです。スタートトゥデイのROE値は72.7%と他と比べダントツで高いのがお分かり頂けると思います。
なぜ、これほどまでにROEが高いのか。気になりませんか?実は、ROEを高めるためのカラクリがここには存在しています。次章で、そのカラクリの正体とROEを高める方法について触れたいと思います。
4. ROEを高める5つの方法とROE経営のメリット
ROEを算出する式は、純利益÷自己資本であると前に述べました。つまり、ROEを高めるには、大きく分けて分子である純利益を上げるか分母である自己資本を下げるかの二通りになるのです。では、純利益を上げる方法、自己資本を下げる方法をそれぞれ見ていきましょう。
・コスト削減
・儲かっている企業の買収
・積極投資で収益を伸ばす
この3つが純利益を上げる方法になります。
では、次に自己資本を下げる方法は以下の2つになります。
・配当を増やす
・自社株買いをする。
この5つの要素をうまく組み合わせることにより、ROEを高めることが可能です。
では、スタートトゥデイはどれを行ったと思いますか?下記のグラフはスタートトゥデイの直近5年の当期純利益と自己資本の推移を示しています。
注目して頂きたいのが2015-16間の自己資本の下落です。大幅に自己資本が減っているのがお分かりになると思います。これは、スタートトゥデイが自社株買いを行い、さらに株式を一部消却したことが原因です。
これにより、一株あたりの利益が増え、PER(株価収益率)が下がり、割安の銘柄と投資家は判断します。これがスタートトゥデイのROEが高い理由です。
では、ROE経営のメリットはなにか。以下は、スタートトゥデイの株価の推移です。
<出所>Yahoo!ファイナンス
5年間、順調に株価をあげているのがわかります。ROE経営において、一番のメリットはこの、株価の増加にあるのです。
5. ROE経営において知っておかなければならないこと
ROEは確かに、良い経営をしていく上で非常に大切な指標になります。しかし、ROEを高めるための利益追求、効率化が経営においての目的にすり替わってはいけません。
経営において、真の目的は「人や社会を幸せにする」であるべきです。その目的を達成するための手段がROE経営であるということを常に意識した経営が必要になるでしょう。
おわりに
ROEは、確かに経営において重要な指標となりますが、それでも多くある経営指標のたった1つにすぎません。なので、会社の財務情報をしっかりと俯瞰し、どの指標が一番重要になるのかの判断がまず必要になると思います。
より広範的な財務の知識を知りたい方はこちらの記事も合わせてご参考ください。
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