社員数別組織課題とは
組織には人員の増加も伴う成長段階に合わせて、乗り越えなくてはならない壁があると言われています。社員数の壁とは、企業が成長し社員数が増えることで、必ず直面する課題のひとつです。
数名ほどの少人数でスタートした企業の場合、事業経営が順調に進んでいくにつれ、従業員数も徐々に増加し、社内は多様化し始めます。このとき、それまで通りの組織のままでは簡単な意思疎通にも支障が出てきます。少しでも社員とのコミュニケーションをおろそかにすれば、問題の早期発見にも影響が表れることになります。それが企業としての成長を阻む悪循環が生まれてしまうリスクになるのです。
そうなる前に、細やかな社内ルールの策定や社員にとって働きやすい環境づくりに取り組み、組織を支える人材の育成が不可欠です。
30人の壁
30人前後になってくると、主な課題として経営陣の業務の偏りを改善させる、工数の分散から早急に解決する必要があります。
今まで創立メンバーのみで担当してきた業務は、経験やスキルのある増員メンバーに分散させていくことで、メンバーの成長を促し、経営陣の管理能力も向上させることにつながります。
業務をこれまで以上にスムーズに進捗させるための採用の確保には、業務を十分に理解している人材の登用が適切です。ですから縁故での採用も有効であると言えます。
業務の偏りをなくし工数の分散がうまくいくと、新たな事業への展開の足掛かりとなります。新たなフェーズに入っていくことは組織を強くしていことにもなるでしょう。
50人の壁
次に50人の壁では、採用者数の急増のため、一段と組織運営にも手腕が必要になります。
経営陣と社員の距離感によっては著しいコミュニケーション不足に陥り、致命的な場合は組織の崩壊にもつながる可能性があります。まだ全員の顔が見える組織、という感覚だけでは運営するのは不可能です。経営陣の意識改革や社員への啓蒙活動も行う必要があるでしょう。
採用活動もこれまでのようにスキルや経験を重視し即戦力を求めるだけの採用や、業務を滞りなく推進できる能力だけをはかっての縁故採用では乗り切れないため、人材は一層多様になります。会社組織としての組織力が問われる段階に入ります。
組織として会社が目指す方向性と社員の意識に隔たりが生まれてしまわないよう、細心の注意を払って管理していくことで企業としてさらなる成長への可能性をつくります。この時期を円滑に乗り越えるためにも中間管理職としての人材を早い時期から育成していくことも大切です。
組織が大きくなるにつれ中間管理職の存在が社員の士気にも左右してきます。創業当時の理想を社内で共有できる活動や、メッセージの発信を一方的ではない形で実践していくことで、社員の意識やモチベーションを高める意味もあります。
100人の壁
100人ほどになってくると、部署や人による業務のバラツキが生じてきます。
マネジメント能力のいかんにかかわらず、これは必ず起こる避けられない問題です。生産性の下降によって組織のミッションを達成できない危険性も生まれてきます。
この壁を乗り越えられずに経営難に陥る組織は後を絶ちません。非常に厳しく乗り越えがたい壁が100人の壁です。
すでにスキル重視、経験重視、縁故採用のみではなくなり、コミュニケーションもかなり複雑になっているため、この組織をひとつにまとめる、というのはハードルも高いのは当然のことです。
創立時の苦労を分かち合ったり、経験やスキルに評価を得て採用されたりした人材にとっては大きな組織ならではのやりづらさ、逆に物足りなさを感じる段階にもなってくる時期でもあります。
会議のたびに意見が食い違う、小規模の打ち合わせでも不穏な空気が流れ、大きな不満をかかえている声がいたるところで聞こえてくることもあるでしょう。こんなはずじゃなかった。そう思い始めるメンバーやもうこれ以上ここにいても同じ目標を追いかけられない。そんな思いを抱えるメンバーも少なからず存在しているかもしれません。
しかしそれも100人という大きさならではの問題です。組織がそこまで成長しているのに常に全員が同調できるほうがおかしいのです。
離脱する幹部や管理職が出てくることにもなるでしょう。経営方針や事業内容のずれを感じるなど理由もさまざまです。そもそも会社を創立する、という高い意識を持っている人材であれば、自立心も強いものです。組織がまた新たなフェーズに入ったという証でもあります。
この時期に起こる問題の解決にはやはり人材の育成によって備えておくことが重要です。しかしこれは代わりがいくらでもいる、という意味ではいけないのです。できればこれからも一緒に組織を成長させたい、まだまだ未来に向かって力を合わせて進んでいきたい、そう思えるのが理想です。
たしかに理想だけでは組織の運営はできません。しかし組織を支えているのはほかでもない人材なのです。どの人材も貴重な存在であり、決して代わりなどいない、と言えるほど大切に育成されるべきであり、もしこの組織を離れてもいつでも応援したい、そう思える関係づくりこそが強い組織が持っている特徴でもあります。
人材の育成と組織の強さは比例していることを肝に銘じておきましょう。誰も代りができないほど優れた人材を育成することを常に念頭においた運営をすることで誰がいなくなってもほころびない組織になるのです。
システムの導入、「仕組みづくり」でカバーできること
人材の育成を重要であるとお伝えしてきましたが、人材育成やその適材適所への配置をより活かせるのがSFAやERPなどシステムの導入です。
営業部門であれば、SFAやCRMを導入することで顧客管理や満足度までの対応を可能にします。担当者の負担を軽減し、効率よくより細やかな営業支援で顧客が求めるサービスの提供まで迅速に対応させます。営業にありがちな担当者のみが抱えてしまう情報管理も、組織全体での情報共有にも役立ちます。その結果クレームの原因にも多い、担当者不在によって進捗が滞ることを回避できます。
システムを活用することで社員の教育計画も実行しやすくなります。まずシステムによる管理をおぼえることで業務の流れを理解し、顧客の求めるサービス提供に注力できる精神的な余裕も生まれてきます。総務や経理部門であれば基幹システムでの管理によって膨大な事務処理時間から社員を解放します。
BIツールであれば蓄積した顧客データから分析ができるため意思決定までの時間を短縮しスピーディに問題解決、実践まで導きます。
管理や分析のための単純作業から社員を開放することで、社員のスキルをより高度な業務にあてる時間を確保します。政府が主導する働き方改革の理念にも沿って残業を減らし人件費のコスト削減にも有効です。
注意すべきはシステムの導入によって「仕事が楽になる」ことは「仕事が簡単になるから手抜きできる」といった良くない発想につながることがないよう、仕事の達成感をもてるような人材の評価を取り入れるなどしてあくまでも人材ありきである、という意識を経営陣以下トップダウンで維持していくべきでしょう。
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