赤字38億円からのV字回復を実現した「仕組み」とは?
国民的ブランドであり、海外でも「MUJI」と呼ばれ愛されている無印良品。しかし、かつては業績が悪化し、「無印良品はもう終わり」と業界内で囁かれていた時期があった。
そんな時期に社長に就任したのが松井忠三氏。まず取り組んだのが、社内の「仕組み」作りだった。では、無印の経営を立て直した仕組みとは、どのようなものだったか?今回は、現在良品計画の会長を務める松井忠三氏が、無印良品のマニュアルを一部公開しながら仕組み作りの大切さを説いた「無印良品は仕組みが9割」を紹介する。
本書の目次
序章 なぜ無印良品には2000ページのマニュアルがあるか –「標準」なければ「改善」なし
1章 売り上げとモチベーションが「V字回復する」仕組み –「人を変える」ではなく、「仕組みをつくる」
2章 決まったことを、決まったとおり、キチンとやる –「経験」と「勘」を排除せよ
3章 会社を強くするための「シンプルで、簡単なこと」–「他者」と「他社」から学ぶ
4章 この仕組みで「生産性を3倍にできる」–「むくわれない努力」をなくす法
5章 自分の仕事を「仕組み化する力」をつくろう –「基本」があれば「応用」できる
本文には、無印良品が大切にしている仕組みの数々が詰まっています。どれも膝を打つような仕組みばかりなのですが、今回はこの中でも、特に印象に残った無印良品の仕組みをご紹介します。
2000ページのマニュアル、MUJIGRAM
無印の店舗では、MUJIGRAM(ムジグラム)と呼ばれる2000ページに及ぶマニュアルが使われています。このマニュアルには、店頭のディスプレイの仕方や商品名のつけ方、さらには出店の可否判断の仕方まで、すべての仕事のノウハウが詰まっています。
「マニュアル」というと、決められたこと以外の仕事のできない、受け身の人間を生み出す、と思われている方も少なくないと思います。しかし、無印良品のマニュアルは、現場で発見された問題点や改善点を元に、毎月更新されていきます。
現場で働くスタッフが「こうだったら、いいのに」と思ったことを吸い上げ、改善点が盛り込まれる、「進化し続けるマニュアル」なのです。こうして無印良品では、全国で常に最高のサービスを提供することが可能になりました。つまり、このマニュアルは、社員やスタッフの行動を制限することが目的ではなく、全社員・全スタッフで問題点を見つけて改善していく姿勢を持ってもらうことが目的なのです。
スキルを蓄積する仕組みで脱・経験至上主義。
なぜそのようなマニュアルが生まれたのでしょう?理由は、無印良品が抱えていた組織風土を改革するためだと、松井社長は述べています。2001年に38億円もの赤字を計上してしまった時、松井社長は社員が上司や先輩の背中だけを見て育つ”経験至上主義”が赤字の原因の一つと考えました。
例えば、売り場づくりのノウハウ。以前は、ノウハウが店長の頭の中だけにあり、属人的な売り場づくりが行われていました。しかし、それでは売り場の質にムラができてしまいます。
松井社長は、どこでも”80~90点のお店”にするために、今まで個人のセンスや経験に頼っていたことを企業の財産にできるような、合理的な仕組みをつくるべきだと考えました。そこで、現場の知恵を全てすくい上げ、MUJIGRAMとして全国に共有することで、個人のスキルを蓄積することが可能になったのです。こうして業務は標準化され、全てのお店が均一に “無印良品らしさ”を出せるようになりました。
残業を許さない仕組みで生産性アップ
業務の生産性も、仕組みを作ることで改善することができます。たとえば、毎日終電まで仕事をし、週休二日のうち1日は家事で追われ、もう1日でなんとか休める・・・そんな生活では仕事のアイディアはなかなか生まれません。
そこで松井社長は、残業を許さない仕組みを作り上げました。まず、仕事にデッドラインを設けることで、集中力が生まれ、また仕事に優先順位をつけて取り組めるようになりました。
また、会議で必要な資料のフォーマットを決めるなど、情報の共有化を徹底することで、仕事の質を落とすことなく生産性を上げられます。残業を減らすためには、会社の仕事の仕組みも重要です。そこで松井社長は「夕方には新しい仕事を人に頼まない」というルールを設けました。作成に2時間かかりそうな資料を夕方に頼まれては、部下は残業しなければならないからです。
こうして残業を許さない仕組みをつくることで、社員は業務の効率化を工夫して行えるようになり、仕事の生産性の向上につながったといいます。頑張った時間で評価するのではなく、成果で評価する。そんな企業風土を育てるためには、残業0を徹底させる仕組みが有効なのではないでしょうか。
人材育成も仕組み化する
人材育成は特に属人化しやすい分野です。指導する担当者によって方法が違ったり、教え忘れていることがあったりと、教育にムラがでてしまいがち、という問題はどこの企業でもあると思います。無印良品は、人材育成を仕組み化することでこの問題を解決しました。
まず、業務内容を詳しくマニュアル化しました。本部の業務をマニュアル化した「業務基準書」に業務内容を具体的に記すことで、新入社員でもスムーズに手続きができるようになったといいます。マニュアルがあることで、担当者が異動になっても業務の引き継ぎがスムーズにできますし、そばに上司がいなくても、マニュアルを読めば部下が対応できるようになります。
また、無印ではスタッフを指導する立場の人のためのマニュアルも作成しています。「どう教えるか」を明文化することで、誰が指導しても同じことを教えられるようになったのです。こうして、初めて人を教える立場になった場合でも、何をどう教えればいいのかわかるようになりました。指導が苦手、という人のモチベーションも保たれ、指導することへの「やらされ感」が拭い去れるというメリットもあります。
新人教育に頭を悩ませているリーダーは多いはず。そんな時、マニュアルがあれば、指導の負担を大きく減らすことができるはずです。
反対勢力は”ゆでガエル”状態で染め上げる
経営者が抜本的な改革をしようとしても、周囲からの抵抗を受け、改革が進まない。そんな問題に頭を抱える経営者の方も多いかと思います。松井社長はそんな抵抗勢力に対して、「”ゆでガエル”状態にして染め上げる」方法を取ると本書で述べています。
カエルを熱湯にいきなり入れると、熱さのあまりに飛び出しますが、水に入れてから徐々に温度を上げていくと、温度変化に気づかないまま茹で上がって死んでしまう。そのことから、ぬるま湯のような組織にいると、業績や環境の変化に気がつけないまま組織が衰退してしまう、というのが一般的な“ゆでガエル”の解釈です。
しかし、松井社長はこの現象を、社内改革の際には有効な方法だと語ります。MUJIGRAMを作るとき、松井社長は反対勢力の彼らをあえてMUJIGRAM作成の委員に任命し、責任者として積極的に作成に関わらざるを得ない状態にしました。最初は“仕方なく”取り組んでいた彼らも、自分のこだわりのある分野についての仕組みをつくるとなると、知恵を出すようになっていきます。
こうして、反対勢力だった彼らも、自分たちが作りあげたMUJIGRAMを積極的に活用すべく、現場にも伝えるようになったそうです。他の社員が反対していても、まずはやらせてみる。そんなリーダーシップが、改革には必要なのかもしれません。
まとめ
ご紹介した例のほかにも、本書には多くの「仕組み」が詰まっています。業務の効率化や社員のモチベーションのキープなど、様々なことが「仕組み」を整えれば実現可能であることを感じました。
会社の長期的な成長にとって欠かせない仕組み作りについて、多くのことが学べる一冊です。是非、お手に取ってみてはいかがでしょうか。
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