前回記事では、最初に取り組むべき見える化である「お金の見える化」に関して、どういった種類の見える化を実行すればよいか、5つの視点を紹介し解説しました。
今回は、5つのそれぞれに関して、具体的に何をすればいいのか見ていきます
1.「キャッシュ状況の見える化」
利益以外にも現金収支に重点を置き、会社がいつでも使えるキャッシュを増やす経営を「キャッシュフロー経営」と言います。これは企業の規模に関わらず、実現したい経営手法です。前記事で述べた、「会社がどのくらいキャッシュを持っているのか」あるいは「現金化しやすい資産はどのくらいあるのか」を見える化するバランスシートの見える化はこの経営手法を実現する上で欠かせません。
キャッシュフロー計算書は、「営業活動」「投資活動」「財務活動」の三つに分かれていますが、中小企業の場合、特に「営業活動」によるキャッシュフローに常に目を置き、健全な商売ができているか確認しましょう。営業活動において、キャッシュフローを増加させる具体的な取り組みは以下の3つです。もちろん業種によっては他にも色々ありますが、まずはこちらを「見える化」しましょう。
未回収の売掛金
期限を超えて売掛金をまだ回収出来ていない顧客がどれ程いるか把握できていますか?
流動性の高い資産
現金化に時間のかかる不動産や仮払金消費税はどのくらいありますか?多額の資産があっても、それがすぐに使えなえれば危機の際は意味がありません。
預金通帳
すぐにキャッシュ残高やその推移が見えるようになっていますか?
銀行から融資を受ける際も、キャッシュフローを開示出来る状況にあり、キャッシュを中心とした、流動性の高い資産の割合が高ければ、企業の評価は断然高くなります。自社の資産状況を明らかにし、キャッシュの増減に常に注意しましょう。
2.「利益構造の見える化」
現状の利益がどういったプロセス経て生み出されているのかを把握しておくことが、今後適切な経営判断を行う上で重要となります。
規模が大きくなっていくと、社長が把握できるのは「全体像」になっていき、細かい所には目が届かなくなります。結果として、固定費、人件費の内訳も細かく知らず、わかるのは大体の売上と利益だけという状況になっている経営者は少なくないようです。
しかし実は、そういった細かい費用を見ることが、適切な経営判断ができるようになることに繋がります。数字を把握する必要はありません。全体の何%の費用が利益の増減にどういった役割を持っているのか。その費用を増減させるアクションはなにか。一目で分かるように図式化しましょう。
多くの場合費用をかければ売上はあがります。経営者がやるべきことは、いかに効率良く売上と利率を上げるかです。
3.「数値変化の見える化」
現状把握のために様々な経営指標を導入するだけでなく、そのリアルタイムな数値の変化をいつでも確認できるようにしなければいけません。変化の見える化のために必要なことは、システムです。経営指標を数字で記録した際に、同時にグラフとして表示されるようなシステムが、様々なKPIが重視される今の時代の見える化に必要です。
このシステム作りのため、一番手っ取り早いのはITの活用です。具体的には、会社で集めたデータを自動的に加工・分析してくれる「BIツール」と呼ばれるITツールの導入です。これに関しては、以下の記事で詳しく説明しています。
ITシステムの利用をおすすめしてきましたが、数字が出たらそのままグラフ化されるシステムを導入するだけで見える化は終わりません。それを見るべき人がいつでも見られる社内環境作り、社員教育を徹底しましょう。
4.「在庫の見える化」
在庫にどのようなモノがどれだけあるのか、複雑な台帳や説明を読まずに把握できるような管理法を確立しましょう。
在庫を持つことは商売をする上で避けては通れないものです。在庫の持ち方に関しては、JIT(ジャストインタイム生産システム)など様々な経営手法の要となっていますが、理想の在庫の持ち方とは、すぐに必要なものだけ置いておくというものです。
理想の在庫の持ち方への第一歩として必要なことは、どの在庫をいつ使うか把握することです。そのためには在庫の見える化が必要となってきます。見える化への取り組みの結果、使う頻度は低いのにも関わらず大量に保持しており無駄なコストがかかっていたことが明らかになるかもしれません。
在庫の見える化へ向けた取り組みをいくつか紹介します。
在庫の扱い方の見直し
入庫出庫の際、どのような処理をしますか?「モノ」の流れをITシステムの活用により、「情報」へと変換しましょう。
ICタグの利用
ヒューマンエラーをなくし、在庫管理の手間も大幅に省けます。結果として、入庫出庫担当者とそのシステムへの記録者が同一人物となり、リアルタイムな在庫管理ができます。
他のデータと比較し在庫を分類
部品の在庫を管理する際は、完成家となる商品の売れ行きなどの指標を元に在庫を分類してみましょう。利益にどれだけ貢献しているかで在庫に優先順位をつけるABC分析という手法もあります。
モノを情報に変換し、在庫それぞれを使用頻度や保持コストなどを見える化すると、そこから効率化やコストダウンのための様々な施策へ繋げることができます。
5.「部門・社員にも見える化を浸透させる」
見える化への取り組みにより、経営者は会社の現状を手に取るように分かります。同じように、社内の事業部署ごとや社員ごとで見える化を実践することで、社員一人一人が自分の現状や環境を把握した上で仕事をすることができます。
部門・社員ごとに見える化することの目的は、社員に経営意識を持たせる、もっと詳しく言えば、それぞれが何に責任・影響を持っているのかを明らかにすることです。
上の4つのことを部門ごとにはっきりさせることに加え、社員ごとに見える化するべきポイントがいくつかあります。
経費の見える化
毎年多くの社員が経費に関する不正で解雇されています。不正とまではいかなくても、自分のお金でなければ、節約せずに何かを買ってしまうことでしょう。制限などを設ける必要はありませんが、自分がどれだけ経費を使っているのか、社員自身が確認できる仕組みを作りましょう。
責任の見える化
どの顧客、売上、タスクに責任を持っているのか、社員は把握できていますか?例えば売掛金で商品を売ったとします。社員はその売掛金の回収まで責任を持たなければいけません。社員一人一人が持つ責任を明らかにしましょう。
成果の見える化
組織は人の集まりです。自分が事業に、部署にどう貢献しているのか、どんな役割を持っているのか。社員の成果を数値化し見える化することで、社員のモチベーションアップへ繋がります。
終わりに
お金の見える化には、社員や在庫、顧客などあらゆる要素が関わってきます。見える化のためには、情報としてインプットし、グラフなど見える形でアウトプットすることが重要です。エクセルやGoogleが提供するスプレッドシートなどで大規模なマクロを組むのも良いですが、システムで解決することが最もスマートと言えます。
「ALL-IN」概要資料
生産性をあげる極意 無料小冊子プレゼント!
Facebookページにぜひ「いいね」をお願いします!
「いいね!」を押すと「経営をアップグレードしよう!」の最新コンテンツが受け取れます