顧客生涯価値を上げるためのCLVマネジメント。前回記事まで、固客化の重要性を訴えてきました。今回は、具体的な施策に移る前に、経営者のみならず、社員全員が常に意識し続けなければならない、土台の部分、基本的なプロセス、目指すべき方向性を紹介したいと思います。
固客化の重要性に関しては、下の記事で詳しく紹介しています。
今回紹介するのは、固客化に直接繋がる経営活動、「CLVマネジメント」です。
1. CLVマネジメントとは
CLVはカスタマー・ライフタイム・バリュー (Customer Lifetime Value)の略で、「顧客生涯価値」のことで、「一人の顧客から発生する全ての付加価値売上」のことを言います。
顧客生涯(カスタマー・ライフタイム)は大まかに、
【見込み客】→【購入】→【ファン(リピーター)】 というプロセスに分かれています。
【見込み客】:まだ購入に至っておらず、広告宣伝費などのコストがかかるため、当然利益はマイナスです。
【購入】:一回の売上から顧客獲得コストを引いたら利益は少ししか残らないかもしれません。
【ファン(リピーター)】:顧客は企業に利益をもたらす存在となります。顧客をリピーターにするのにもコストは掛かりますが、新規客を得るための顧客獲得コストと比較すると、圧倒的に低いです。
顧客を「一回一回の購買から得られる利益」ではなく、「長いスパンで顧客がもたらす利益」で見る、これが顧客生涯価値の基本的な考え方であり、リピーター創造のために大変重要なことです。事業を始めてすぐの頃は、大きな額を払う顧客や毎回少額の購入をする顧客に一喜一憂してしまうと思いますが、3年、5年のスパンで顧客を見て、「顧客生涯価値を高める」活動に注力していくことが、持続的利益獲得につながります。
2. CLVマネジメントのための「3つのアクション」
CLVを高める施策は細かく考えたら色々なものが考えられますが、ここでは必ず実行するべき三つのアクションを紹介します。
CLVを計測し、把握する
自社のCLVを把握することは、CLVマネジメントを始める前の最も重要な下準備です。どんな戦術を使うにしろ、目標設定や効果の有無の判断基準、フィードバックのための指標がなければ、継続的に改良していくことができません。
顧客生涯価値を計測というのは、一人の顧客から自社が得た付加価値の累積を計測することです。いくつか計算式がありますが、主要なものを二つ紹介します。
- CLV=平均粗利益(売上-原価-顧客維持コスト)×累計購入回数
- CLV=生涯累計販売額(平均売上単価×累計購入回数)
購入頻度を高めること焦点を絞る
現状のCLVを把握した後は、それを高める施策に出ます。その際見るべきものは、CLV高めるための切り口です。どれを採用するかによって今後の施策が変わってきますが、まずはその3つを紹介します。
切り口① アップセル(購入単価を高める)
切り口② クロスセル(別の自社商品を売る)
切り口③ 購入頻度を高める
みなさんならどの切り口での施策に力を入れますか?
結論から言うと、切り口③の購入頻度を高めることが、最初に取り組むべきことです。アップセールスやクロスセールスは、せっかくの顧客との関係を壊すという危険があります。しかしこれらの施策を否定しているわけではなく、むしろどちらともCLVを高めるためには有効な手段であることです。しかし、非常に繊細な計画と実行が必要とされ、コストや大きなリスクが伴うことは明らかです。
購入頻度を高めることが先決するべき理由は、そこに大きな改善余地があるからです。多くの商品・サービスがリピートされないのは、満足度が低いからでも、不満があるからでもなく、単に「忘れている」という状態が多いようです。何か大きな価値を感じ、また買おうと思っていても、時間が経つにつれ、その思いは忘れ去られてしまいます。本来もっとあるはずの購入頻度に戻すことが一番取り組みやすい方策です。
顧客との繋がりを強く保つ
忘れられずに、無理にリピートさせることなく自然な流れで購入頻度を適正にするためには、「2つの力」を磨かなければいけません。
・記憶に残る商品力
同じようなもので溢れかえっている今の世の中、人は忘れてしまいます。その中で、人々の記憶に残るためには、商品の機能的価値に以外に、忘れられない「何か」を提供する必要があります。販売員の魅力や店舗の雰囲気など様々なものがあげられます。中でも他社との差別化に有効とされるのが、経験価値に着目することです。詳しい手法を紹介するのは今回の記事では避けますが、人に話したくなるような経験、感情が動かされる経験がこれに当てはまります。
・フォロー力
もう一つ大切なことは、顧客との継続的な接点を作る、「フォローする力」です。何かしらの接点が継続的にあれば、商品を思い出す機会は増えます。ここで注意したいのは、フォロー≠営業ということです。目的は、あくまで思い出してもらうことです。もちろん営業して、また購入するきっかけとなることは良いことですが、「売り込まれる」という印象がついてしまい、逆に顧客が更に遠ざかるかもしれません。
どこでどう顧客との接点を作るかは、しっかりと顧客調査をして、計画実行しなくてはなりません。
3. 目指すべき二つの「ゴール」
CLVマネジメントには、2つの究極のゴールがあります。
「究極の顧客」を育てることと「究極のリピートビジネス」を構築することです。
ゴール1 究極の顧客
こんな顧客が欲しい!と憧れる、究極の顧客とはいったいどんな顧客なんでしょうか。既存顧客はリピート度合いによって、4つに分類されます。
①シングル 一回購入してくれた顧客
②リピーター 二回以上の顧客
③ファン 何度も購入して商品を愛用してくれてる顧客
④アンバサダー 他人に商品をすすめたり、宣伝してくれる顧客
顧客維持コストは低いため、何度も購入することで、限界利益はどんどん上がってくため、リピート回数が上がるにつれ貢献利益も上がってきます。さらに、この中の④アンバサダーは営業マンの役割を担ってくれる、かけがえのない存在です。
究極の顧客であるアンバサダーの創造をゴールとしましょう。ステップ別の顧客育成の方法は後の記事で解説します。
ゴール2 究極のリピートビジネス
ビジネスには二つの種類があります。
- フロー型ビジネス
明日の売り上げが不確定でわからないビジネス。(飲食店や小売店)
- ストック型ビジネス
明日や来月の売上がほぼ確定していてわかっているビジネス。(会員制サービスや不動産賃貸業)
どちらのビジネスモデルが魅力的でしょうか。多くの人が②ストック型ビジネスと答えるでしょう。その理由は単純に、「安定している」からです。日々多くの困難に直面している経営者の方々は、この先の売り上げが確定しているという「安定性」がいかに貴重なものかお分かりになると思います
しかし、「いきなりフロー型からストック型に切り替えることは難しい」と、感じる方は多くいらっしゃいます。
確かにフロー型であるならば、何か抜本的なビジネスモデルの変革を行わない限りストック型への移行は難しいと思われます。しかしストック型ビジネスを「目指す」ことは可能です。
例えば、ファーストフード店では、回数券やポイントカードなど、顧客を安定させようという努力が見られます。フロー型でもストック型の携形態を少し取り入れる、「セミストック型」ビジネスになることは可能です。
顧客を「ストック」できるほど、商品・サービスに定着させることをゴールとしましょう。
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