「慶応箱根駅伝プロジェクト」とは
箱根駅伝と言えば、正月の風物詩として、また2019年で95回目と非常に長い歴史のある陸上スポーツ大会として有名です。起伏のとんだコース設定と、そのコースに挑むこの大会に全てをかけている学生やコーチの情熱と人間性というスポーツの楽しさを感じることができることから、大学野球に代表される大学スポーツの中でも、最も人気のあるものが箱根駅伝であるともいわれています。正月は箱根駅伝を見ながら過ごすという人も多いのではないでしょうか。
関東の有名大学が出場するこの大会で、歴史ある有名大学であるにも関わらず、長い間大会に出場できない大学があります。それは慶應義塾大学です。慶應義塾大学は日本を代表する大学であり、スポーツにおいても多くの実績を有しています。陸上部は100年の歴史がある古豪と言える大学ですが、最後に本選に出場したのが1994年と25年も前と低迷が続いています。
そんな中、慶應義塾大学では「慶應箱根駅伝プロジェクト」という、もう一度箱根出場を目指すためのプロジェクトが立ち上がり、新たな取り組みが始まっています。新しい指導者や科学的データを用いた練習・指導方法、スポーツとテクノロジーを融合した手法が大きな注目を集めています。
最も注目を集めているポイントが「リアルタイムトラッキングデータ」の取得という点です。リアルタイムトラッキングデータとは、選手のランニングに関するタイムリーな情報取得のことです。
従来は選手のスピードや距離などは、サポートスタッフが確認しコーチに伝達するという取り組みが一部取り入れられていましたが、リアルタイムでそういった情報を取得して、競技に活かすという発想は多くのチームで採用されていませんでした。
しかし、慶應義塾大学の新しいプロジェクトでは、より競技でのパフォーマンスを上げる方法を検討する中で、従来の方法とは異なり、走行スピード、距離、心拍数等のデータをコーチがタイムリーに把握し、走り方やペース等の選手へのより効果的な指示へと繋げるという取り組みを強化し始めました。
なぜ「トラッキングデータ」の取得を始めたのか?
では、なぜリアルタイムのトラッキングデータの取得を始めたのでしょうか。その理由は、状況把握と判断・実行の間の時差の解消のためです。
従来、そして現在も駅伝競技では、選手のタイムやスピードをサポートスタッフが測定し、コーチに伝達するという方法が一般的です。レースの各ポイントでサポートスタッフが選手の記録・状況を記録してコーチ・監督に伝達するという方法です。
しかし、この方法による場合、選手の情報がコーチに届くまでにタイムラグ、つまり時差が発生してしまうため、選手の状況に合わせてどういった指示を出すべきかの判断が遅れてしまい、指示を出した時には既に状況が変わっているということもありました。
また、刻々と変化するレース状況の中で、状況把握と判断・実行の間に時差があることは、レース展開上より不利になり、また選手の能力だけに依拠する競技となってしまうことから、チームとしての力を高めることが難しいという欠点があります。
これを克服するための方法、それがリアルタイムトラッキングデータの取得です。GNSSという衛星測位システムを使い、タイムリーに選手の状況を把握し、レースの全体像も想定できるため、より広い視点で判断・指示ができるという方法です。
従来の方法では、状況把握をして指示を出した時には、すでに状況が変化していて指示が的外れになってしまうということが多々あり、課題となっていました。これを解消するための方法として、リアルタイムのトラッキングデータの取得が考案されたのです。
データ分析から監督は選手の心拍数を見てペースの上げ下げを指示
このプロジェクトの中では、GNSSを使う点に特徴があります。選手は身に着けているApple Watchを使って、スタート時に専用アプリでデータ通信を開始し走行スピード、距離、心拍数といったデータをタイムリーに送信します。そして、監督は選手から送られてきたデータを、タイムリーにiPadで確認しながら、指示を出していきます。
特に取得できるデータの細かさも一つ大きなポイントです。スピードや距離は従来の計測でも可能でしたが、心拍数等のデータはタイムリーに把握することが難しい要素でした。
それが、各選手のタイムリーなデータが取得できることになるため、選手の個性に応じてポイントポイントで適切な指示が可能になってくるという点は、競技の在り方にも影響を与えるほどの変化と考えられています。よりきめ細やかな指示が可能になるのです。
従来の方法では、コース上にサポートスタッフを多数配置して、チェックするポイントごとに記録したデータを監督まで持っていくというアナログな方法であったため、監督がデータを見るまでにかなりのタイムロスがありました。しかし、デバイスとアプリを使用することで、この時差を極力減少することに成功しています。
慶應義塾大学のネット―ワークを通じて、幅広いバックグラウンドも持つ専門家が関与することで、この方法が確立されたと言えます。
船長が航海での意思決定をするには、羅針盤などのツールを手にした上で、船員から報告される天候や船の状況を把握しておく必要があります。GNSSを使ったこの手法は、まさに船長が手元で全ての情報が把握でき、的確な指示を出すことができるという方法なのです。
データ取得後の結果と今後
慶應義塾大学では、タイムリーなトラッキングデータの取得を開始した後、新しい取り組みであることから、アプリ起動に時間がかかり上手く活用できない事例などもありましたが、結果としては予選順位を前年よりも上昇させることに成功しました。大会出場の数か月前からの取り組みであったのですが、一定の効果があったと言える結果となっています。
そして、現状の箱根駅伝での協議規則では認められていませんが、現行のサポートスタッフによる各ポイントでの選手への指示という形ではなく、選手が身に着けたApple Watch等のデバイスに監督から直接指示を送るという方法が可能となれば、よりタイムリーなトラッキングコードの取得、それを用いた判断・指示という一連のプロセスをより効率的に回すことができるため、この取り組みの効果がより高くなると考えられています。またこのデータ蓄積を通じて、判断・指示の質も向上することが想定されています。
従来の精神論的な世界ではなく、現在、スポーツとテクノロジーは切っても切れない関係となってきています。この流れが進むことで、慶應義塾大学のこのプロジェクトのような取り組みが、スポーツの新しい可能性を広げることに繋がるはずという意見が多数あります。
まとめ
慶應箱根駅伝プロジェクトは、スポーツとテクノロジーの融合、今後の可能性を考える上で参考になる事例です。また、このプロジェクトの考え方は、ビジネスの場面でも共有した課題対処の方法であり、同様の取り組みはビジネスを加速させる方法としても共通します。
ビジネスにおいても、タイムリーに正確な状況把握を行い、検討し意思決定を行うことが重要です。そして、そのためには状況を把握するためのツールが必要であることは言うまでもありません。タイムリーに自社のトラッキングデータを把握し、判断し、次のステップに向けた効果的な指示を出すこと、これがビジネスを成長させるための鉄則です。
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