損益計算書や貸借対照表を見ても順調に成長しているのに、ある日突然倒産してしまう会社があります。この様に黒字なのに倒産してしまうパターンは黒字倒産という風に呼ばれていますが、なぜ黒字なのに倒産してしまうのでしょうか。
本記事では「在庫」という観点から企業が経営を誤ってしまう原因について追及したいと思います。
在庫がダブついていても儲かっている様に見える?
まず初めに一問クイズを出してみます。次のうちどちらの会社が上手く行っている企業の様に見えるでしょうか
(A社)
売上 :200万円
売上原価 :100万円
販管費 :50万円
営業利益 :50万円
(B社)
売上 :200万円
売上原価 :120万円
販管費 :60万円
営業利益 :20万円
売上という観点からA社もB社も同じですが、売上総利益率はA社50%に対してB社40%なのでA社の方が粗利の高いビジネスができていると考えられます。
更に、販管費を比較しても、同じ売り上げを作るために必要な販管費はA社の方が10万円も安いのでA社の方が少ない販管費で大きな売り上げを作れていると言えます。
これだけ見ればA社の方がB社よりも経営が上手く行っている様に見えます。ここで更に情報を追加します。
(A社)
期首在庫:80万円
当期仕入:150万円
期末在庫:130万円
(B社)
期首在庫:20万円
当期仕入:120万円
期末在庫:20万円
いかがでしょうか。当期仕入れA社はB社と同じ売り上げを作るために期首に在庫をA社より余分に抱えていますし、在庫が中々売れなくて期末には在庫が50万円分増えてしまいました。
一方でB社は仕入れてきた分の在庫をきちんと販売して期首の在庫と期末の在庫の金額に大きな変化はありません。A社と比較すればB社は在庫を必ず売れるような堅実なスタイルで商売をしていると言う事ができます。
ここまでくるとA社の方がB社のよりも利益を出す営業の仕方をしているけれども、B社の方が堅実な商売をしているのでどっちが上手く行っているか分からなくなってしまいます。ここで更に情報を追加してみます。
(A社)
期首在庫のうち50万円は実は非常に不人気な商品で売れる目途が全く立っていなくて、実はその様な商品が当期仕入れの中にも50万円分含まれている
(B社)
当期仕入れ120万円となっているが、これは20万円の仕入れを6回行ったという事で在庫が無くなるたびに20万円ずつB社は仕入れをしに来ていた。
この情報を加えると、一気にA社の印象は悪くなります。A社はさばけない在庫を抱え込む癖があるので、このまま経営していけば会社の現金がどんどん減っていき、販売できない在庫が増えていく事が予想されますし、
逆にB社は在庫を増やして冒険こそしませんがきちんと商品を売り切って在庫もさばいて今後も安定的に利益を出す事が予想できます。
いかがでしょうか。損益計算書だけ見れば好調な会社でも在庫の中身について精査していけば実は危ない経営状態である場合がある事がこの例からも読み取れます。
確かに貸借対照表には在庫を記載しますが情報量が少ないので軽視しがちになりますし、在庫によって現金が減っている事はキャッシュフロー計算書をきちんと作っている企業でなければわかりませんし、
更に言えば販売するのが難しい在庫を抱えているという事は決算書を見てもわからず在庫の中身をきちんと把握しないとわからないのです。
損益計算書だけ見れば、高粗利率で販売さえしていれば経営が上手く行っている様に見えますがその為の在庫の持ち方については注意しなければわからないのです。
棚卸しないと在庫が分からない!が実は一番怖い
上記の利用な理由から「在庫」が隠れた倒産要因になりかねないわけですが、どうすれば在庫をきちんと管理する事ができるのでしょうか。まずは在庫を持つ業種に限らず資金繰りの管理は可能な限りリアルタイムで行える体制を構築する必要があります。
企業が倒産するのは決算書の状態が悪いからではなく、運転資金が無くなるからなので、資金繰りを管理して運転資金が無くなりそうなタイミングを事前に把握して手当を行う必要があります。
「在庫」に関して考えると、一番怖いのが棚卸しないと経営者が在庫の状態を把握できないという状態です。一番、怖いのは先ほどのA社の例で挙げた通りに在庫の中に実質的に売れる目途が立っていない商品が含まれている場合です。
在庫は損益計算書の売上原価には含まれませんし、貸借対照表では資産に含まれるので軽視しがちですが、売れない在庫は場所代などの管理コストが掛かるだけではなく、
その在庫の調達に使ったお金が在庫を換金できない事によって塩漬けになるのでむしろ負債の様な性質を持っている場合もあります。
また、在庫が無いと言う事にも同時に注意する必要があります。人気で会社の稼ぎ頭の様な商品の在庫が切れてしまえば、本来在庫があれば作れていて売上が欠品によってなくなる機会損失が発生してしまいます。
しかも、買おうと思った商品が欠品している事が続くと顧客はいずれ自分の欲しい商品がきちんと在庫してある、在庫管理をきちんと行っている競合店に流れていきます。
この様に経営者は在庫について適正在庫をきちんとコントロールする事が必要であるという事が言えます。適正在庫をきちんとコントロールする為には経営者がきちんと在庫状況を把握する為にリアルタイムで在庫が分かる様なシステムを導入して、
販売管理システムと連動して在庫の中で人気商品の欠品を防ぎ、不人気商品を必要最低限しか仕入れない仕組みを構築する必要があります。
小売業は交叉比率を重視して経営をしよう
このように、小売業の経営者は在庫をきちんとコントロールする必要があるわけですが、ではどの様な指標で在庫をきちんとコントロールしているかを判断するのでしょうか。仕入れた商品がきちんと現金化できているかを交叉比率によって管理します。
交叉比率の求め方は
交叉比率=粗利率×在庫回転数
在庫回転数=売上原価÷平均在庫金額
と言う式で算出できます。平均在庫金額は期中の期首在庫と期末在庫の平均値によって求める事が可能です。1年に1回決算の時に棚卸を行い在庫を把握して年間の交叉比率を算出する事も可能ですが、
リアルタイムで出す場合は毎日の在庫金額が必要となるために人間の手では不可能な作業量になりますので1日、1週間、1か月単位で在庫を把握したい場合はシステムを導入した方が良いでしょう。
この交叉比率という指標を元に再びA社とB社を比較したいと思います。
A社とB社の交叉比率を算出すると
(A社)
平均在庫金額=(80万円+130万円)÷2=105万円
在庫回転数=100万円÷105万円=0.95回転
交叉比率=50%×0.95回転=48%
(B社)
平均在庫金額=(20万円+20万円)÷2=20万円
在庫回転数=120万円÷20万円=6回転
交叉比率=40%×6回転=240%
という事がわかります。交叉比率を元に比較するとA社は実は交叉比率が50%を下回っている商品販売が苦手で、在庫を貯めこむことによって資金繰りが悪化しかねない企業であるという事がわかります。
それと比較してB社は交叉比率200%を超える優良企業で少ない資金で上手く利益を生み出している会社であるという事が分かります。この様に小売業の場合は交叉比率を調べる事によってその会社が順調か否かが判断できるのです。
ちなみに、在庫をきちんと管理小売店なら会社全体の商品の交叉比率だけではなく、商品1つ1つの交叉比率をシステムにより算出できるようにしておき、商品毎の交叉比率を把握してどの商品が会社に対して利益を生み出しているかを把握し、仕入計画や店舗の売り場作り、商品開発に活かすようにしています。
おわりに
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