僕自身も、まさか、つけ麺を食べていて
経営学の大家「ピーター・ドラッカー氏」のことを
思い出すとは、夢にも思っていませんでした。
先日、僕は何度か訪れたことのある、
渋谷で人気のつけ麺屋さんに居ました。
僕の他にも、たくさんのお客さんが
カウンターの席につき、料理の到着を待っています。
その中でも、特に印象的だったのが、
僕の左斜め前に座っていた3人組。
その方々はフランス人のお客さんでした。
ダンディーな雰囲気のお父さんと、その娘さん、
そして娘さんの彼氏といったところでしょうか。
その3人組を観察していると、
とても面白いことに気が付きます。
「つけ麺」にもかかわらず、3人とも、
つけ汁をそのまま飲み干しているのです。
「つけ麺の食べ方が、よくわからなかったんでしょ?」
そう思われる方が多いかと思います。
でも実は、そこには「深い理由」があったのです。
フランス人にとって、ラーメンとは…?
今、世界でラーメンブームが起こっています。
そして、その中心地となっているのが、フランス。
街には、いくつものラーメン専門店が軒を構え、
人気店には連日、行列ができているそうです。
一見すると、日本と変わりなく
受け入れられているように見えるラーメン。
しかし、実はひとつだけ、
日本と大きく違う点があるのです。
それが、「ラーメンに対する認識」。
私たち日本人はラーメンを「麺料理」と認識していますが、
フランス人は「スープ料理」と捉えています。
だからフランスでは、
「麺は残しても、スープは飲み切る」
という方が多いのだそう。
冒頭のフランス人3人組も、
「ラーメン=スープ料理」と考えているので、
つけダレを飲み干していたんですね。
フランスと日本の「認識の違い」は、
それだけではありません。
実は、流行しているラーメンの「種類」にも秘密があるのです。
「とんこつラーメンが一人勝ち」の理由とは?
現地のラーメンの主流は「とんこつラーメン」。
ヘルシー思考が顕著な現代において、
なぜ、こってりとした「とんこつ」が
流行しているのでしょうか?
その秘密は、フランス人ならではの感性にあります。
先ほどもお伝えした通り、
フランスではラーメンを「スープ料理」と考えています。
そして、フランスのスープ料理には油が浮いていません。
澄んだスープをつくるときには、
調理の過程でアクと油を取り除くからです。
だから、フランス人にとっては
醤油ラーメンなどの「表面に浮いている油」が
「油っこくて体に悪そう!」と見えるそう。
でも、日本人からすると、
「とんこつの方が油っこいだろ」って思いますよね?
そこが、フランスと日本の感性の違い。
フランス人にとってとんこつのような「濁ったスープ+背脂」は
「ポタージュ」のような位置づけになるのだそう。
だから、白濁した「とんこつスープ」は
「クリーミーでおいしい!」と言われているのです。
日本人とフランス人の違いを
改めてまとめてみると、以下のようになります。
【日本人】
① ラーメン … 麺料理
② 澄んだスープのラーメン … あっさり
③ とんこつ … こってり
【フランス人】
① ラーメン … スープ料理
② 澄んだスープのラーメン … 油っぽい
③ とんこつ … クリーミー
同じ「ラーメン」の「特徴」でも
受け手が変わると、ここまで「感じ方」が変わってしまうんです!
今回の例のような「受け手の感じ方の違い」は
どんな商品に対しても起こります。
つまり、私たちは自社の商品を「誰に届けるか」を
しっかりと考える必要があるのです。
では、「誰に届けるか」は
どうやって考えていけば良いのでしょうか?
顧客を明確化するための3ステップ
経営学の大家、ピーター・ドラッカー氏は、
次のような言葉を残しています。
「マーケティングの基本はこちらが何を望むかではない。
相手が何を望むか、相手にとっての価値は何か、
目標は何か、成果は何かである。」
顧客が「誰なのか」によって、
「響く商品の特徴」も、「刺さる言葉」も、
「重視するポイント」も変わります。
逆を言えば、「自分たちの顧客」が誰なのかを
明確にできれば、効果的かつ一貫性のある戦略が
立てやすくなるということ。
「細部まで顧客を明確化」して戦略をつくり、
成功した事例としては、「スープストック トーキョー」が有名です。
スープストックでは「秋野つゆ」という
架空の人物を、実在する人間として語れるくらいまで
細部に渡って設計しています。
設計項目は多岐に渡り、
◯ 職業
◯ 年齢
◯ 住んでいる場所
などはもちろんのこと、
◯ 装飾性よりも機能性を好む
◯ フォアグラよりもレバ焼きが好き
◯ プールでは平泳ぎではなく豪快にクロールで泳ぐ
etc…
というような、本当に細かいところまで
つくり込まれています。
そして、
◯ 彼女が好むスープ
◯ 彼女が好む内装
◯ 彼女に響く言葉
etc…
というように「秋野つゆ」という「理想の顧客」に対して、
全ての施策を考えているのです。
それでは、顧客はどのように設計すれば良いのでしょうか?
そこには「3つのポイント」があります。
【1】顧客の「絵」を描く
「この商品のターゲットは誰ですか?」と聞いたときに
よくある答えが「30代の男性」というようなもの。
このように「年代」+「性別」でターゲットを
考える方が多いのですが、実は、それだけでは不十分なのです。
同じ「30代の男性」でも、
「務めている会社」「着ているスーツ」「シャツの色」
「時計」「読んでいる雑誌」「靴」などなど、
全く違う特徴を持っています。
そして、このような「外見の違い」は、
「行動の違い」を表します。
白シャツに揃いのスーツ、黒い靴の男性と、
色シャツにセパレートのスーツ、茶色の靴の男性では、
遊びに行く場所が全く違うでしょう。
ただ、これを「言葉」で考えていくのは
なかなか難しい作業です。
そこでオススメなのが「絵を描く」こと。
上手い下手は別として、絵として描くことで、
先ほどのような「特徴」を考えざるを得なくなります。
描くときのコツは「できるだけ細部まで描き込む」こと。
シワの一本まで考えられるのが理想です。
何枚か描いていくと、
おぼろげだった顧客のイメージが具体化してきます。
その顧客に対して、
◯ 彼はどんな雰囲気を好み、
◯ 普段どこに居て、
◯ どんなコダワリを持っているのか
考えていくのです。
【2】顧客の「つぶやき」を口にする
「お客さんがディズニーランドに行く理由は?」
と聞くと、高い確率で返ってくる答えが、
「非日常的な世界を味わいたいから」というもの。
でも、実際にお客さんがディズニーランドに行くときは、
「非日常」なんて言葉は使いません。
「子供がどうしても行きたいっていうから…」
「ミッキーに会いたい!」
「高校生活の最後の思い出を作りたい!」
といった言葉を使っているはず。
提供側が「顧客目線」に立てない要因のひとつに
「話す“言葉”が違う」というものがあります。
「提供側の言葉」で話していては、
「顧客側の目線」に立つことはできないのです。
そこでオススメなのが、【1】で描いた「絵」に
「場面」を書き足して、「喋らせてみる」こと。
人物が、実際に動く場面を想像することで、
顧客の「自然な言葉」が捉えやすくなります。
【3】その顧客は、本当に居るか?
「絵」を描き、「つぶやき」を口にしてみた。
ここで、注意しなければいけないのが、
「そんな人が本当に居るか?」ということ。
理想の顧客を設計する際は、意識していないと、
「提供側の願望」でしかない「実在しない顧客」を描いてしまいがちです。
そんな事態を防ぐためにオススメなのが
第三者にこんな質問をしてみること。
「友達に、こんな人(描いた顧客のこと)って居る?」
第三者の数人にこの質問をして、
知り合いの姿が思い浮かばなければ、
その顧客は存在しない可能性が高いです。
もしくは、存在したとしても、
少数派ということになります。
***
全く同じものでも「誰に届けるか」によって、
「感じ方」が大きく変わってしまいます。
「誰に届けるか」は、商品の設計から、
集客、キャッチコピー、営業など、広い範囲に影響を及ぼすもの。
今回ご紹介した3ステップで顧客を明確化して、
顧客にあった戦略を考えてみてください!
フランスでは、ラーメン屋さんは
カフェのように利用する方が多いそう。
友人とおしゃべりをしながら、
ゆっくり過ごすのが一般的なんですって。
冒頭の3人組も、ビールを飲み、
冗談を言い合って大笑いしながら、
ゆっくりとラーメンを食べていました。
最後に代金を支払うとき、フランス人3人組の
職人さんを見つめる目がキラキラとしていたのが、
とても印象的に残っています。
日本人は、自分たちが考えている以上に、
世界の方から尊敬されているのかもしれませんね^^
※この記事は、「Entre Magazine」のバックナンバーから抜粋しています。
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