経営コラム

モノを買う基準が“Amazon”になる時代の生き残り方

 足を運ぶお店と足が遠のくお店の違いとは?

「最近買ったものは?」

アンケートの質問に「はっ」としました。

買ったものの大半を締めるのは「書籍」。
それも、ほぼ全てをAmazonから購入していました。

改めて考えてみれば、店舗に足を運んで欲しいものを買う機会は
年を追う毎に減っているように感じます。

今や何でもネットで買えてしまうので、
買い物のために外に出ることのハードルが高くなってきているんですね。

しかしそれでも、店舗に足を運んでモノを買うことも、
決してなくなる訳ではありません。

変わらず足を運ぶお店と、足が遠のくお店。
その明暗を分けるものは一体何なのでしょうか。

ひとつの要因として考えられるのが、
お客さんの「判断基準」が変わったこと。

実は現在進行形で、お客さんの判断基準は
大きな転換点を迎えているのです。

 

変わり始める「ルール」

Amazonが登場して、20年あまり。
今ではすっかり人々の「買い物のインフラ」となりました。

僕も頻繁に利用しますが、本当に便利ですよね。

◯ 欲しいものがあったときにサイトで検索をすれば、
ほぼ確実に取り扱っている。

◯ 注文をすれば、翌日(数日中)に届く

◯ 有料会員ならば、送料は無料

◯ 一般の小売価格よりも安い場合が多い

◯ 趣味や趣向を分析して、好きそうな商品を紹介してくれる

これだけでも十二分に便利なのですが、さらにAmazonは
今後も様々な「攻め」の展開をすることが発表されています。

生鮮食品への参入、自社ブランド製品の充実など、
小売業の中でその影響力は増していく一方でしょう。

そして、この「インフラ」が一般的になった世界では、
お客さんの中に、新しい「買い物の基準」がつくられていきます。

それは、「欲しいもの」は「すぐに」手に入るという基準。

今後の小売業では「ココ」を基準として、
どのように差別化するか?を考えることが重要です。

その際には「今までの当たり前」を、もう一度考える必要が出て来ます。

次に紹介する、「僕が体験した、2つのお店での買い物」を見ると、
その必要性が良くわかるかと思います。

 

2つのお店の明暗を分けたのは何か

ここ数ヶ月の間に2度、
そこそこの値段のものを買う機会がありました。

購入したのは、それぞれ違うお店。

1.誰でも名前を知っている有名百貨店
2.お酒のセレクトショップ

どちらも、実績も知名度もある有名店です。
ただ、それぞれの買い物体験には、天と地の差がありました。

1つのお店は「二度と行かない」ということを心に誓い、
もうひとつのお店は「絶対にまた来よう!」と思いました。

それぞれのお店で何が起こったのか、見てみましょう。

【1.有名百貨店にて 】

都内の一等地。
そびえる建物にも貫禄があります。

置いている商品は一流のものばかり。
どこを見ても「良いもの」で溢れています。

さすが、老舗の百貨店。

しかし、接客がまずかった。

まず、商品知識が全く無いのです。
2つの似ている商品の「違い」を尋ねたら「一緒です」との回答。

店員さんが立ち去ったあとに、
商品の横に置いてあったパンフレットを読むと、
そこにはハッキリと「違い」が書いてありました。

接客をしていない店員さんの動きも目につきます。

ショッパーを束ねてあった紙テープをハサミで切って、
そのまま床にポイと投げる。

「10分後までに包装しますね」と言った包装が
10分後に出来ていない。

このお店が、誰でも知っている有名な百貨店なので、
落胆もひとしおでした。

【2.お酒のセレクトショップ 】

では、もう一方のお店はどうだったかというと、
このお店での購買体験は「素晴らしい」の一言。

どのスタッフに声をかけても、圧倒的な商品知識を持っています。

お酒のセレクトショップは商品回転がとても早いのが特徴です。
さらに、同じ銘柄でも「限定」や「バージョン違い」などがあり、
その種類は非常に多岐に渡ります。

でも、このお店のスタッフは、
そのほぼ全ての味を「知っている」のです。

飲んでいないとしても、
その味や香り、他の商品との違いなどを説明することがで出来ます。

そして、自分の味の好みや、今までに飲んだ銘柄などを伝えると、
ショーケースの中から的確な商品を薦めてくれるのです。

他の商品と同様、お酒も珍しいものになればなるほど、
実店舗で取り扱っているお店は少なく、ネット上の方が購入しやすくなります。

それでも僕は、今後もこのお店に足を運ぶでしょう。

僕の購買体験から、次の2つのことが見えてきます。

1.「商品が手に入ること」以外の部分は全て、
プラスにもマイナスにもなり得る

2.お客さんは「検索では見つけられないもの」を求めている

【1.「商品が手に入ること」以外の部分は全て、プラスにもマイナスにもなり得る】

Amazonの出現によって、良くも悪くも、
「欲しい」ものが「すぐに」手に入ることが、買い物の判断基準になっていきます。

それはつまり「商品が手に入ること」以外の部分が全て、
購買を決定する時のプラス要因にも、マイナス要因にもなるということ。

例えば「販売スタッフ」の存在。

スタッフとお客さんとの接点は「プラス」の要因になることが多い一方で、
僕が体験したように「マイナス」になることもあります。

そして重要なのは、マイナスな体験をしたお客さんは、
二度とお店に来ないことが多いということ。

お店自体に来なくなってしまうので、
「挽回のチャンス」が無いのです。

だから、私たちは「人と人との接点」には
特別、注意をする必要があります。

お客さんとの接点は「プラス要因」になっているだろうか?
それを常に見直す必要があるのです。

他にも、商品の陳列や、お店の雰囲気、立地、
商品提供のスピード、品揃え、などなど…

「商品が手に入る」以外の部分は、
全てプラス要因にも、マイナス要因にもなり得るのです。

【2.お客さんは「検索では見つけられないもの」を求めている】

インターネットの発達によって、お客さんは
「欲しいもの」を、家でも買える時代になりました。

それでも、お客さんがお店に足を運ぶことはなくなりません。
それは「検索ではわからないこと」があるからだと、僕は考えています。

僕がお酒のセレクトショップに行って、店員さんと会話をするのも、
「自分ではたどり着けない商品」と出会いたいからです。

そして、高確率でそのような出会いがあるので、
僕はそのセレクトショップに通い続けます。

どんな商品であっても今後は、
「そのお店で買う理由」が必要となるのです。

具体的に考えられる「理由」としては、次の5種類が考えられます。

1.そのお店でしか買えない商品がある
2.自力ではたどり着けない商品との出会いがある
3.商品が手に入る「以外」の「体験」がある
4.「人」との繋がり(スタッフ or コミュニティ)がある
5.お店の世界観や志、ミッションに共感している

僕が店舗を訪れて買い物をするお店は、
この中のどれか、もしくは複数の条件を満たしています。

これからの時代に生き残っていくためには、
インターネットに「無い部分」をどうやって活かし、
どうやって「お店で買う理由」をつくるかが鍵となるのです。

ネットで手に入らない部分を作ろう

Amazonが販売のインフラとなった世界では、
「欲しいもの」が「すぐに」手に入ることが基準となります。

そんな社会では、それ以外の部分、例えば「接客」や「陳列」などは全て、
プラス要因にもマイナス要因にもなる可能性があります。

ただし、そういった「インターネットで得られない部分」にこそ、
リアルな店舗の勝機がある。

人と人との繋がりや、世界観、体験など、
「検索で手に入らないもの」をつくって、
お店のファンを増やしていきましょう!

 

※この記事は、「Entre Magazine」のバックナンバーから抜粋しています。Entere Magazineの登録はこちらからどうぞ。

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