経営コラム

“価格”とは何か?

価格とは何か

 

“ 経営の死命を制するのは値決めです。
(中略)
自分の製品の価値を正確に認識したうえで、
量と利幅との積が極大値になる一点を求めることです。”

─ 稲盛和夫

***

「経営の神様」と呼ばれる、稲盛和夫氏も
「値決めこそ経営」という言葉を残すほど、
「価格」は奥が深いものです。

価格のつけ方によって、
商品の売れ行きが変わってしまったり、

同じモノを売っていても、
会社が得る利益が全く違ってしまったりします。

価格という分野は、シンプルなように見えて、
とても奥が深いもの。

様々な要素が絡み合い、本格的に語ろうと思ったら
分厚い専門書を1冊書いても語り尽くすことはできません。

それは、重々承知しているのですが・・・。

「価格について書きたい・・・!!」

そんな想いを抑えきれず、
無茶を承知でこの文章を書いています。

1記事では
あまり深いところまでは踏み込めませんが、

今回お届けする「5つの切り口」が
価格を考える上で少しでも参考になれば、
とっても嬉しいです。

【価格に関する5つの切り口】

1.  価格に合理的な根拠はない
2.  その顧客は会社を支えるか?
3.  価格は「2本のバー」を設定する
4.  顧客は「情報」にお金を払う
5.「価格そのもの」と「体感価格」は全くの別物

***

 

【1】価格に合理的な根拠はない

価格を考える際、多くの人が
計算などでシステマチックに「合理的な」価格を決めようとします。

その際に、よく使われるのが、
「原価」から考えて、「利益」を加えるという方法。

しかし、実はここには「2つの間違い」があります。

1つ目は「原価」の考え方。

多くの場合、この「原価」は
「商品をつくる際にかかる費用」を指します。

しかし、商品をつくり、それを「永続的に提供する」ことを
考えれば、そこに必要な費用は他にも、たくさんあるはずです。

・生産設備の買い替えやメンテナンスにかかる費用
・人材の育成にかかる費用
・将来のリスクに備えて資金を蓄えるための費用
などなど…

原価には、こういった費用も考慮していかなければ、
「永続的」に商品を届け続けることができなくなってしまいます。

そして2つ目は「原価」の意味です。

この「原価」が示すのは、
「会社が損をしない最低限の価格」。

つまり、原価がいくらであろうと、
「いくらで販売するか?」は全く別の話なのです。

極論を言えば、お客さんが納得し、価値を実感できるのであれば、
どんなに高額な値段をつけても問題はありません。

つまり適正な価格とは
「お客さんが納得するかどうか」が全て。

全ての商品の価格に「合理的な理由」はありません。

そして、この価格を探るためには、
この後で書いていくように「お客さんの心理」を
深く考えていく必要があるのです。

【2】その顧客は会社を支えるか?

「商品は安いほど、買ってもらえる」というものも
多くの人が考えてしまいがちなことの1つです。

しかし、これも正しいとは言えません。

このことをお伝えするときに、
僕はいつも、この質問をしています。

「今までに買ったものは全て、
その分野の中で“最も安いもの”でしたか?」

この質問に「イエス」と答える人は、まず居ないでしょう。

お客さんは「価格の高い安い」だけでなく、
様々な要素を総合して、買うかどうかを判断しているのです。

ただ、たしかに世の中には
「価格が安いから」という理由で商品を買う人も居ます。

しかし重要なのは、
「そのお客さんは、会社を支えない」ということです。

そういったお客さんは、商品そのものではなく、
「価格の安さ」に惹かれて集まってきます。

ですから、競合が1円でも安く販売を始めれば、
すぐにそちらに動いてしまうのです。

そして、そういった「安売り競争」に参加すれば、
勝つのは「業界で一社」のみ。

資本力がある大企業が圧倒的に有利な戦いです。

ですから、「価格が安い」という理由で買うお客さんは、
「1番に考える」べきではありません。

また、「安いから」を理由に買うという人が居れば、
逆に「高いから買う」という人も、市場には存在します。

少し高い値段を支払ってでも、品質と安心を求める人や、
他の人とは違う、ユニークな商品に魅力を感じるような人です。

こういった人たちは、商品の「価値」に惹かれて集まってきます。
会社を支えるのは、こういった人たちなのです。

【3】価格は「2本のバー」を設定する

価格は「2本のバー」を設定するというのが、僕の考えです。
その2本のバーとは、次の2つ。

1.お客さんの満足の最低ライン
2.お客さんの満足の最高ライン

価格を高くすれば、お客さんが商品に求める
「満足の最低ライン」も同時に高くなります。

高級ホテルや、高級フレンチに行くときには、
求める品質やサービスのレベルも高くなる。

これは、私たちの感覚としてもわかりやすいですね。

ただ、それに加えて「満足の最高ライン」も
同時に決めていると、僕は考えています。

つまり、お客さんは「支払う額」が少ないと、
その商品の「絶対的な価値」が、どんなに高かったとしても、
「ある上限値」以上は、その価値を実感できないのです。

これは、飲食店で考えるとわかりやすいかもしれません。

例えば、通常のお店よりも原価率を2倍・3倍にし、
その代わりにお店の回転率を上げることによって、
提供価格を安くしている大人気店があります。(実在するお店です)

このお店は
「お手軽な価格で本格フレンチが味わえる」
ということで、いつでも大行列です。

このお店を訪ねた友人に、
たまたま感想を聞く機会がありました。

「あのお店行ったんでしょ。どうだった?」

その回答は
「美味しいけど、やっぱり本格的なものとは違うね。」
というものでした。

しかし実際は、厨房で腕をふるっているのは、
ミシュランの星が付いたレストラン出身のシェフ。

原価率が圧倒的に高いので、
素材も、そこまで差のないものを使っているはずです。

それでも、あまり「価値」が実感できなかったのは、
「満足は支払った金額に比例する」という強い思い込みが、
私たちの中に存在するからではないかと思います。

ですから、商品そのものに十分な価値があるのであれば、
商品は「なるべく高く」販売するべき。

「お客さんの納得する最高の値段」で販売することが、
「お客さんの感じる満足」をも最大にするのです。

【4】顧客は「情報」にお金を払う

お客さんは、いったい「何」に対して
お金を支払っているのでしょう。

それは、極論すれば「情報」だと僕は考えています。

なぜなら、ほとんどの場合、
「支払い」は「価値の実感」よりも前に起こるからです。

つまり、お客さんに価格を納得してもらうために、
僕たちがするべきなのは「情報を伝える」こと。

お客さんの頭の中に、商品に関する「情報」が伝わるだけで、
全く同じ商品でもお客さんが「実感」する価値は大きく変わります。

例えば、友達からボロッボロの
使い古された野球グローブを差し出されて

「5万円で買わない?」

と言われたとします。

あなたなら、買いますか?
おそらく、ほとんどの人が断るでしょう。

でも、その後に、こう言われたらどうでしょうか?

「このグローブ、イチローが中学時代に使ってたやつなんだよね。」

今度は一変して、多くの人が興味を示すのではないかと思います。

ここで重要なのは、追加の情報を聞く前も後も、
「ボロッボロのグローブ自体は何も変わっていない」ということ。

ただ「情報」が加わるだけで、
その「価格」は、高くも安くもなります。

価格を引き上げたい場合に、一番簡単な方法は、
実は「情報を加える」ことなのです。

【5】価格そのものと「体感価格」は全くの別物

「価格そのものの高い・安い」と、
「お客さんが感じる高い・安い」には、実は関係がありません。

「100万円」という価格だったとしても、
それをお客さんが「高い」と感じるのか「安い」と感じるのかは、
状況によって変わるのです。

売っている場所や、商品の並べ方はもちろんのこと、
“数字を見る順番”なんかでも、この感覚は変わります。

例えば、プラスチック性の使い捨てポットに
ホットミルクを注いでつくる、チョコレートドリンクがあったとします。

もし、これがスーパーに置いてあって、
インスタントコーヒー、使い捨てのティーバックと並んで
「1ポット500円」で売っていたら、どう思いますか?

「高い」と思いますよね。

でも、おしゃれなカフェで
カフェラテ、フレーバーティーと並んで
「1ポット500円」だったらどうでしょう。

「まあ、そんなものか」と思うのでないでしょうか。

ここで重要なのは、
「人は“何かと比べる”ことでしか、判断ができない」
ということ。

「高い」とか「安い」という場合、
相手は必ず「何か」と比べているのです。

ですから、価格を考える際には、
「お客さんが頭の中で何と比べるのか?」を考えることが重要です。

そして「比べるもの」は、伝え方や販売の方法によって、
ある程度コントロールできます。

ポジショニングやカテゴリー、商品ラインナップや、
販売場所、お客さんの“心の財源”など、価格を決める際には、
戦略的な部分も同時に考える必要があるのです。

***

「価格」は本当に深い分野の一つ。

今回お伝えした5つの切り口が、
価格を考える際に、少しでも参考になれば、
とっても嬉しいです。

 

※この記事は、「Entre Magazine」のバックナンバーから抜粋しています。Entere Magazineの登録はこちらからどうぞ。

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