「良いものを作ったはずなのに売れない」「リピーターが少なくて利益が上がらない」そんな悩みの原因は、あなたの会社の「価値化=ブランディング」にあるかもしれない。
モノが溢れ、飽和状態の世の中。あなたの会社の商品を「見つけてもらう」「リピートしてもらう」「他の人にススメてもらう」ためには、あなたの会社のブランド力を高めることが重要だ。
しかし「ブランディングって大企業がやることでは?」「うちの会社では難しい」と思う経営者の方も多いかと思う。だが、実はポイントを抑えれば、小さな会社でも、顧客からずっと愛されるブランド(=会社の価値上げ)になることが可能だ。
そこで今回は「小さな会社のブランド戦略」として、国内外数千社の企業ブランディングを手がけるスターブランド社ナンバー2コンサルタント、粉奈健太郎氏にお話を伺った。
お話を伺った方
人物紹介:粉奈 健太郎氏
スターブランド社ナンバー2コンサルタント兼「THE Speech! CLASS」ブランドマネージャー「小さな会社のブランド戦略」スターブランド社(※1)でブランド戦略コンサルタントとして常に10社程度のクライアントを持ち日本各地を飛びまわっている。年間出張は250日、年間に行うセミナー&講演数は100本近い。手掛けるクライアントは、建設&建築業、製造業、小売業、食品&飲食業、コンサル業など多岐にわたり、ブランド戦略において広報活動やイベント型マーケティングに主軸をおいた手法に定評がある。プレゼンリーダーとして「自分ブランドを磨く、大人のためのパブリックスピーキングクラス THE Speech! CLASS」のブランドマネージャーも務め、村尾隆介仕込みのプレゼンテクニックを日本全国で教え伝えている。(企業研修としても人気)スターブランド社が主催するビジネスコミュニティ「スターブランドCLUB」で毎月開催しているシークレットセミナー(東京、大阪、福岡、岩手、山形、広島)では、毎回後半のコーナーを担当している。(※1)http://www.starbrand.co.jp/
村尾隆介のFBページ@branding.asahimachi@10ways.for.iwate@branding.in.sanin
1.「ブランディングに取り組めば小さな会社でも大企業に勝てる」
– 粉奈さんのこれまでのご経歴を教えてください。
粉奈健太郎氏(以下、粉奈)- スターブランド社はこれまで10年以上、地方自治体や銀行から中小企業、フリーランス、個人までを手掛けるコンサル会社として「小さな会社のブランド戦略」というカテゴリをつくってきました。
私はこれまで5年間、全国の様々な企業のコンサルタントを務め、また弊社が主催するビジネスコミュニティでは、全国約300社の会員企業へ毎月さまざまなアイデアや事例をご提供させていただいています。
–小さな会社に特化したブランディングを行われているのですね。ブランディングというと大企業が行う印象ですが、なぜ小さな会社もブランディングを行う必要があるのでしょうか?
粉奈- 私たちは、小さな会社こそブランディングを行うべきだと考えています。理由は3つありますが、「広告宣伝費をかけずに、見つけてもらえるから」、「他の人へ勧めてもらえるから」、「値下げ競争から脱することができるから」です。
– 広告宣伝費をかけず、顧客に見つけてもらうとはどういうことでしょうか?
粉奈-いままでは広告宣伝費(マスメディア)にコストをかけるのが主流でしたが、インターネット&SNSにより、現在はクチコミやバイラルマーケティングを上手く活用し、広告費を使わなくても新規顧客を獲得することができるようになりました。これは、広告費を使えない小さな会社にとっては大きなチャンスといえます。
例えば、ストーリー性やイベント性を持たせるブランディング手法によって、クチコミやメディアを通じて商品や会社の魅力を社会へ伝えることができます。そうして、いままでのように高い広告を出さなくても、見つけてもらえるようになります。
ここでのポイントは、商品の機能やスペックではなくつくり手の想いや背景などを魅力的に打ち出すことです。モノが溢れている時代ですから、価値ある商品が沢山あるのは当たり前です。そこで選ばれるための付加価値とは「誰が」「どうやって」それをつくったのか? に共感してもらえるかどうかということになります。さらに、その「共感」から「応援(=ファン化)」まで関係性をつくっていければ顧客は、継続的に会社の商品を買ってくれるリピーター、そしてファンになってくれます。
– 商品ではなく作り手の魅力を打ち出す、という点については後で詳しくお聞きします。他の人に広めてもらうため、という二つ目の理由はいかがでしょう?
粉奈-特徴的な独自性や、価格以上の付加価値があったり、会社自体が魅力的だと、エンドユーザーや関わった人は誰かに伝えたくなります。宣伝文句よりもリアルなクチコミの方を信じるのが顧客心理ですし、その方が自分たちで営業する以上に顧客の幅も広がるので、クチコミを意図的につくることで売上げアップに繋がります。
ここでのポイントは、「伝えやすさを磨く」ということです。理解できないことや伝えにくいこと(説明できないこと)は、誰も伝えてくれません。どういうふうに伝えてほしいのか? ということをしっかり伝えないとクチコミは起こりません。
– クチコミしてくれるファンができると、他社との値下げ競争にも陥らないのですね。
粉奈- そうですね。ブランディングによって価格以上の価値を持たすことができれば、ちょっと高くてもこちらを選んでもらえるようになります。他社が値段を下げたら、こちらはもっと下げる・・・そんな値下げ競争はマイナスのことしか生みません。利益率も下がって、社員も疲弊して、どんどん会社がよくない方向へ向かっていく・・・。そっちに行かないために必要なのがブランド戦略と言えます。
2.「ちょっとした工夫で会社のブランド力を高めよう」
–先ほど、商品ではなく会社のブランド力を高めることがポイントだとおっしゃっていました。経営者は、どのように会社のブランド力を高めればいいのでしょうか?
粉奈- そのコツは、「ストーリーづくり」にあります。言い換えたら「その会社の“らしさ”」です。そこまでを含めて気に入ってもらえるように。細かく言うと、会社の世界観、取組みや制度、働き方などのカルチャー、イベントや展示会の話題性、オフィスや工場のブランド化、ユニフォームのブランド化などがあります。
まず「イベント性」という観点では、ユニークなイベントを行ったり、展示会で一番目立つようにしてメディアから注目を集めていくものいいです。
例えば、キッチンツールを扱うオークス社(新潟県燕三条)では、ユニークなイベントや展示会ブースを連発していくことで自社の価値を高めていっています。
オークス社はものづくりで有名な燕三条に本社を置いていますが、商品知名度は高いものの、会社自体は世間一般的にあまり認知されていないことが悩みでした。そこで、徹底的にイベント力を高めて「アイデア集団として」もっともっと会社の価値上げをしていこうと取り組んでいます。
イベントは、社員と顧客が直接交流できるのも良くてマーケティングとしてもこれからの時代に有効な手段だと思います。このように、イベントを通じて会社のブランド力を高めることができます。
– オフィスや工場のブランディングはいかがでしょうか?
粉奈- オフィスのブランディングは、そこで働く社員のモチベーションアップはもちろん、同業者からの注目も集まり、他業種も含めて見学者が増え「オフィスに来た人が沢山写真を撮ってSNSでシェアしてくれる」という効果があります。
オフィスのブランディングは、大きく3タイプに分かれます。「世界観型」、「色統一型」、「モチベアップ型」です。
「世界観型」とは、オフィスに一つの世界観を持たせて、それに合わせて雰囲気を作り込んでいく方法です。例えばとある新卒採用コンサル会社では、「人生は一本の映画を撮るようなもの」と考え、社会人としての新しい人生のお手伝いをする仕事は、フィルムメーカーのようだと考えてすべてを「映画」にまつわるもので統一していく世界観でオフィスをつくり上げました。会議室を試写室のようなデザインにしたり、レッドカーペットや、映画の制作スタッフのようなIDカード、映画のチケットのような名刺など、ひとつの世界観に全てを統一していくことで、社内外、同業者、異業種、学生たちから注目され話題になっていくようになります。
「色統一型」は、会社として大切にしているコーポレートカラーを徹底的に使っていくことで圧倒的な空間を演出していきます。
さらに会社にキャラクターがいたならば、ガイド役として活用することもあり、お手洗いの男女のシルエットをキャラに置き換えたり、10人に1人が気づく程度にこっそり仕込んでいきます。
ゆるキャラみたいにしたり、大げさに使っていくと保育園のようになってしまいがちですので、キャラを使うならばガイド役としてスマートにしていくのがいいと思います。
最後の「モチベアップ型」は、会社の働き方に関する困りごとを解決する形でオフィスづくりをしていく方法です。例えば、「無駄に会議が長い会社」ならば会議室から椅子をなくし、空気イスで会議をするように「ルールごと」変えます。「挨拶やコミュニケーションが足りない会社」ならば、イヤでもみんなのデスクを通らないと自分の席にたどり着けない動線を組み込みます。こういった感じで「ルールごと変える」をいくつも取り入れることで働き方を変えたり、モチベアップに繋がるようにもできます。
どこの会社でも基本的なことができずに困っていたりしますので、お手本として注目される取組みにもなり得ます。
– すごくワクワクする取組みですが、オフィスの改装は時間と手間がかかることだと思います。もっと手軽にできるブランディング方法はありますか?
粉奈- ユニフォームの刷新ならば、もっと手軽にできるはずです。単なる作業着ではなく、ブランド戦略としてのユニフォームづくりは、「営業的効果」「広報的効果」「採用的効果」を会社にもたらします。さらに言うと、このブランド戦略としてのユニフォームは、会社だけでなく少人数のお店でも、一人でやっているフリーランスの方でも有効に活用ができます。
スターブランドが手掛けるものは、物販としてお客さまが買っていってくれるくらいカッコいいものが基準になっているのも特徴だと思います。
3.「ブランディングとは中途半端撲滅運動のこと」
– 様々なブランディングの例を紹介していただきましたが、勝てるブランドに共通する点はあるのでしょうか?
粉奈- 勝てるというか「結果を出せる」会社やお店の共通点を挙げるならば、「今までのやり方や考え方からいったん離れる覚悟」を経営者が持てるかどうかが結果を出せる分かれ目だと言えます。
ブランディングには、今までやってきたことの延長線上でより良くしていく「イメージアップ戦略」と、全く新しくつくっていく「イメージチェンジ戦略」の二種類がありますが、よほどの老舗か有力商品がない場合は、イメージアップだけだとそんなに大きな結果は得られません。「今までとは違う結果」を得たいならば、今までのやり方&考え方から離れる必要があります。そこには勇気と覚悟が必要で、その決断ができる「強いリーダーシップ」も、重要な要素の一つです。
–予算の都合や社内からの声を考慮して、段階的に進めたいと思う経営者の方も多いのではないでしょうか?
粉奈- おっしゃる通りですが、ブランディングに関して一番やってはいけないことが「中途半端」です。つくり上げたいイメージも中途半端、提供できる価値も中途半端、伝え方も中途半端では、誰も見つけてくれませんし、興味も持たれず、印象にも残らず、最悪の場合には元々のブランドイメージ以下になってしまう恐れもあります。
誤解がないように付け加えますがお金をかければいいという訳ではありません。とにかく「やるなら、(決めた期間内は)徹底的にやりきる」という覚悟が重要です。
スターブランド社では、ブランド戦略のことを「中途半端撲滅運動」と言い換えてクライアントへお伝えすることも少なくありません。
4.「愛されるブランドを作るために、経営者がすべきこと」
– 自社のファンを増やすために、経営者ができることはあるのでしょうか?
粉奈- ここまでの話のすべての前提にあるのは、経営者が自分の会社(商品)とスタッフのことを他の誰よりも愛していなければなりません。自分が愛していないものは、他人も愛してくれません。会社、スタッフ、商品のすべてを、愛情を持って育て、扱うというのが最も重要です。
–経営者が会社を心から愛していれば、社員にもそれが伝播しそうですね。
粉奈- そうですね。経営者がやるべきもう一つのこととして、チームビルディングがあると思います。働くスタッフやメンバーが楽しく働けるように環境を整備してあげることが重要です。自分たちが楽しんでいないと相手にも楽しさは伝わりませんから。
それがなければ絶対に「ファン」は生まれません。「FAN=FUN」です。
– 経営者が直接的にブランディングに携わる方法はあるのでしょうか?
粉奈- 経営者は、フロントマンとしてブランディングに携わることができます。例えば<ヨシダソース>の吉田社長は、アメリカンドリームを体現した日本人として有名で、社長の顔が会社のロゴマークにもなっています。社長の人柄そのものがブランドになっている、そんな例もあります。このように、経営者が、愛されるフロントマンとして会社の価値を高めることもできると思いますが希有な例でしょうね。基本はチームです。ですので経営者はチームビルディングに注力して欲しいです。
–最後に、ブランディングに取り組む小さな会社の経営者の方にメッセージをお願いします。
粉奈-結局のところ、「自分たちが楽しめなければ、お客さまも喜んでくれない」が鉄則だと思います。仕事は楽しむものではない、真面目にやるものだ、という考え方もあるかもしれませんが、「お客さま以上のファンと呼べる存在」をつくりたいならば・・・。
ブランディングは若い経営者に代替わりするタイミングで全面的に行われることが多いのですが、少し上の世代でも、柔軟な方は乗り気でやってくれます。いずれにしても成功の共通点は「とにかく楽しむ」「とにかくやりきる」です。
粉奈さん、ありがとうございました!
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