町の本屋の閉店が相次いでいるという事がしばしばニュースで取りざたされます。この時によく原因として挙げられるのが、Amazonをはじめとするネット通販や電子書籍の台頭です。
このようなニュースにおいてこのようなモノはしばしば悪者扱いされますが、最終的に消費者が支持されている以上、本屋がネット通販や電子書籍の台頭に合わせてビジネスモデルを変更していく必要がありますし、電子書籍によって大手出版社の業績は逆に良くなっているケースもあるので出版業界全体で考えれば必ずしも悪者とは言えません。どの業界においてもIT化は向き合わなければならない課題だと言えます。
本記事では、そのようにビジネスモデルの変化を迫るIT化とどのように向き合うべきかについて本屋の衰退とAmazonの台頭という切り口から説明します。
なぜ、Amazonは「本」の通販から事業を始めたのか?
Amazonは今でこそ、家電から食品まで何でも販売する総合通販サイトとなっていますが、実は創業当初Amazonは「本」に特化した通販サイトでした。しかも、創業者のジェフ・ベゾスは意図的に通販の商材の中から本を選んだと言います。なぜ「本」が通販に適した商材だったのでしょうか。
世の中には様々な商材がありますが、本ほど種類の多い商品はありません。日本だけでも年間7万冊以上の新刊が刊行されていますし、「A」という本が無かったので「B」という本を買おうという風に代替する事ができず、それぞれが代替できないユニークな商材です。
つまり、実店舗ですべての人の趣味嗜好に合わせて本を品揃えしようと思えば巨大な店舗が必要となります。このように何万冊種類者在庫の中から自分の欲しい商品を選ぶ際には実店舗よりも通販の方が優れているのです。また、本はブランド品や食品などのように模造品や質の悪い商品を買わされるリスクもありません。
事業者の視点から見れば、市場規模が大きく、仕入れや品質管理が容易で、ISBN番号があるので販売管理もしやすく、送料もほとんど必要しない極めて通販に向いた商材だったのです。
このような理由から、Amazonは「本」という切り口から通販事業を始め、やがて家電から食品まで様々な商材を扱う巨大通販サイトになったのです。
従来の本屋型モデルはなぜAmazonと勝負できないのか
進化をやめた出版業界
Amazonの優位性は上記の通りですが、一方でいわゆる町の本屋さんはどのようなビジネスモデルだったのでしょうか。少なくとも日本の町の本屋さんは通販が発展する以前は極めて安定したビジネスモデルでした。
書籍には「再販制度」というものがあり定価でしか販売できないので価格競争は発生しません。また出版社の多くが委託販売制度を採用しているため、例えば仕入れて店頭に並べたとしても販売できなければ、本屋に返品する事が可能です。このように本屋は小売店でありながら、価格競争もなければ、在庫リスクもほとんどありません。
また、本は目的来店性の強い商材で本を買いに行く顧客の購買力を期待して百貨店などの商業施設は積極的に本屋を上層階に誘致します。(この効果をシャワー効果と言います。)
このように通販が発展する以前の本屋というのは極めて安定したビジネスモデルであったため、長らく小売店としての進歩が止まっていた業界の一つでした。
すなわち、他の小売業であれば商品のカテゴリーを絞って一点突破したり、専門家的な知識を持ったスペシャリストが相対で商品の提案を行ったりなど買わせる工夫を行って進歩していくなか、本屋はどこに行っても同じような品揃えで一様に本が並んでいるという風に小売店毎の特色があまりなかったのです。
特徴のない本屋は利便性で淘汰される
このように尖った所の無い小売店というのは極めて危険だと言えます。特に本と言う商材は目的性が強いので、あらかじめどの本を買うかが決まっていれば実店舗にわざわざでかける必要はありませんし、買い物ついでに本屋でどんな本が売られているかチェックしようという衝動来店客は一部の本好きだけなのです。
このように今すぐ欲しいという顧客や衝動来店客という客層に対しては本屋というビジネスモデルは通販と比較して優位だと言えますが、それ以外の客層に対しては通販の方が利便性は高いと言えます。特に最近では新刊が紙の本だけではなく電子書籍でも刊行される事が多く、電子書籍は購入すれば家にいながらすぐ読めるというだけではなく、再販制度の適用対象外なので値引きが可能なので紙の本よりも安く販売されている事が少なくありません。
また、紙の本のように場所を取られる事もないので、紙で束の状態で書籍を手元に置いておきたいという人以外には電子書籍の方がメリットは多いのです。
このように規制によって小売店としてのあまり進歩しないうちに、本の通販が台頭し電子書籍が出現した事が町の本屋の減少につながったと考えられます。本屋とAmazonを比較した時に、実店舗よりも通販の方が優位な点が多く、紙媒体よりも電子書籍の方が媒体として優位性が多いために本屋がAmazonと同じような品揃え、同じような提案力で勝負をするのは極めて困難だと言えます。
衰退する本屋と成長する本屋
このように町の本屋がAmazonと同じような土俵で勝負をして勝つことは困難ですが、実店舗の本屋というビジネスが必ずしも通販や電子書籍によって駆逐されるというわけではありません。
例えば一つの切り口として「イベント」という付加価値をつけて本を販売している「天狼院書店」や「B&B」という本屋さんもありますし、セレクトショップのような形であえて店舗のコンセプトにあった本しか販売しない「恵文社」のようなモデルも考えられますし、本以外も取り扱って「ヴィレッジバンカード」のような商品構成も考えられます。また、バリューブックスという古本屋はAmazonのマーケットプレイスを有効活用してせどりから年商16億円まで成長しました。
また、店舗毎に見ればトレンドをきちんと読んだ上で扱う本の特集を組んだり、ポップで販売したい商品をプッシュしたり、商品の売れ筋をデータに基づいて分析した上で在庫を設定したりと通常の小売店が行っているような細かい販売施策も十分有効だと言えます。
確かに町の本屋が通販や電子書籍の台頭により閉店するケースも少なくありませんが、むしろITによって規制に守られていた業界が小売店としての競争に晒されるようになったとも言えます。現在はそのような競争から、今までたくさんあった町の本屋の中から小売店として生き残るべき本屋だけが生き残るようになる過渡期であると考えられます。
おわりに
以上のように町の本屋の衰退とAmazonの台頭について説明しましたが、ここからの学べる他の業界にも通じる重要な教訓があります。それはどのように規制に守られている業界であっても進歩しなければならないという事です。
安定していた本屋というビジネスモデルも通販や電子書籍などのような技術の進歩によって崩壊する可能性があるので、どの業界においても新しい技術と向き合い、顧客に望まれるサービスを提供する事が重要です。
顧客に望まれるサービスを提供するという観点で企業がIT化を行う際に取り組まなければならない事は様々ですが、大きく分けると2つで、1つは販管費を削減する事によってサービス供給の価格を下げる、売れ筋をきちんと把握して顧客が望んでいるサービスを提供する事です。このような観点から、商品の在庫や販売管理のシステムは売れ筋商品を把握する為に必要ですし、勤怠や経理システムは販管費を削減する為に必要です。
しかし、いざシステムを導入してこのような事をしなければならないと言われても具体的に何をすれば良いか分からないという企業が大半ではないでしょうか。
ALL-INはこのような企業の為のシステムで、勤怠、経営、在庫、販売管理などの企業に必要なシステムの殆どが一括で導入する事が可能です。競合に遅れを取らないためにIT化は必要だけれども何から始めれば良いのか分からないという企業経営者の皆様はぜひALL-INの導入をご検討ください。
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