地方創生 カギとなるのは「生産性向上」
日本経済を復活させる方法はシンプルだと三橋氏は語る。今の日本はデフレ、つまり需要不足に悩まされているが近い将来、真逆の問題を抱えている。すなわち人手不足だ。これから総人口に対して生産年齢人口の割合が減り続けることで供給能力が需要に追い付かなくなり、特に地方では「超人手不足」に拍車がかかる。この問題を解決するのが「生産性向上」だ。生産者一人当たりの生産性を高めることで、人手不足が解消し国民の所得も増えていく。
生産性を高めるには設備、人材、公共事業、技術開発の4つに投資を行う必要があり、その中でも交通インフラという公共事業への投資が望まれる。新幹線、高速道路などのインフラが整備されることにより、各地域の距離が縮まり日本を「小さく」することが可能だ。そうすると今まで取り残されていた地方が、大都市を市場と化すことができ、人・モノ・サービスの流れが活発になり「地方創生」につながります。
しかし、今の日本では特定の人・地域が儲かるのが現状。そこで今回、「全国民が豊かになる 最強の地方創生」という新著を出版した、経済評論家・作家の三橋貴明さんに地方創生のあるべき形や、起業家、企業が地方創生においてどのような役割を果たせるか、話を伺った。
お話を伺った方
三橋 貴明 氏
経済評論家・作家経済評論家・作家として人気ブログ「新世紀のビッグブラザーへ」や、読者が3万人を超えるメルマガ「三橋貴明の「新」日本経済新聞」を運営。当ブログの1日のアクセスユーザーは12万人を超え、2015年8月には人気ブログランキングの総合部門・政治部門にて1位となる。また、執筆活動も意欲的に行い、2007年に出版した『本当はヤバイ!韓国経済』(彩図社)がベストセラーとなる。
目次
【前編】
1.なぜ「地方創生」なのか
2.経世済民の政策が取れない日本
【後編】
3.新幹線で日本が“小さく”なる
4.外国人よりも日本人採用に目を向ける理由
5.起業家は、アニマルスピリットを持て!
なぜ「地方創生」なのか
-社会に対して警鐘を鳴らす内容の書籍が多いですが、今回はなぜ「地方創生」に焦点を当てたのですか?
三橋氏(以下、三橋)-出雲で講演をした際に、興味深い話を聞いたことが切っ掛けでした。 「出雲では人口が流出し、若者がいなくなっている。どうしたらいいか?」と相談されました。しかし私が「若者は減っても、高齢者はいなくならないので需要は減らない。つまり需要に対する供給の担い手が少なくなったことで、逆に利益は上がったのでは?」と聞いたところ、実際は昔よりも儲かっているとのことでした。
ビジネスでは、需要に対して供給能力が足りない時にこそ儲かります。経済も同じです。需要に対して供給能力が追い付かないインフレが起きた時に、生産性を高める投資を行い、供給能力を高めることで経済成長が起こります。ですから、生産年齢人口が減るのであれば投資をして、生産性を向上させて、供給能力を上げれば利益が出ます。
この話をきっかけに、「生産年齢人口が減る=成長できない」という勘違いを正して、本来の地方創生がどうあるべきかを今回の新刊で書きたかったからです。
-現在の地方創生の実態を教えてください。
三橋- 政府は、「地方創生するためには地方同士で競争してください」と言いますが、これは市場原理に任せることで、まるで平等のように見せかけて、実は極めて不公平なことを皆理解していません。 例えば出雲では出雲大社などの観光資源が豊富なのに、交通インフラが整っておらず、人が訪れにくい。そんな状況で地方と東京が競争しても勝てるわけがない。インフラの充実度が違うので生産性で東京に勝ち目がないのです。
交通インフラなどの土台を整えた上で競争するならばわかりますが、それを是正しないで競争させて負け組をつくることに意味はない。だから正しい地方創生について書く必要があると思いました。
経世済民の政策が取れない日本
-なぜ政府は地方創生に有効な政策をとれないのですか?
三橋― そもそも政府は「経世済民」のためにあります。経世済民とは国民を豊かにするための政治のことです。しかし、現在は「国民を豊かにする」という発想が消えていると感じます。だから特定の人、地域が儲かる事態が起きています。特に日本においては東京に一極集中させるような状況が顕著です。もちろん地方が貧しくなるということもあるのですが、若者などの人口が東京に集中すると少子化につながります。
また、あまり知られていないことですが、実は江戸時代にも同じことが起きていて、江戸に働き手の男性が集中したにも関わらず、女性が足りず、少子化が起こりました。元禄バブル崩壊後に、将軍徳川吉宗が、享保の改革で財政の支出を切り詰め、税金を上げる緊縮財政を行いました。結果、増税により国民は消費を控え物価が下落、デフレが引き起こされました。さらに所得が減れば子供を養う余裕がなくなるため少子化を加速させたのです。「デフレ」と「東京一極集中」というセットが、「少子化」と「人口減少」を起こす最大の原因です。現在の日本でも「デフレ」と「東京一極集中」が起きています。
これは統計的なデータにも現れていて、女性は東京に来ると婚姻率が下がります。たとえば新宿区・渋谷区在住の30代女性の未婚率は50%を超えてきている。実に2人のうち1人。東京一極集中することと比例して、ますます結婚率は下がっていくでしょう。
-東京に人が集まる主な理由はなんですか?
三橋― それは、地方に仕事がないからです。仕事が無いから東京に来る。ならば、地方に雇用を創出できるようにインフラを整備して、東京にいなくても豊かになれる環境があればいいのです。若手のいなくなった地方で人口が減ることはもちろん、若手が移った東京ですら少子化が進むので、このままでは人口はどんどん減ります。
以上のことを踏まえると、日本を存続させるために政府は必要な措置をとるべきなのですが、未だそこまで踏み切れていません。
また、経済効率という観点で見ると、実は一極集中は効率がいいのですが、安全保障的には分散させた方が安全です。人口が集中した東京で首都直下型の大地震が起きたら大変ですよね。高度経済成長期の日本では、田名角栄が「列島改造論」により日本国土の均衡的な発展を掲げていたのですが、バブル崩壊以降、東京のみを発展させる動きが強くなり、人口を分散させつつ発展する発想がなくなってしまいました。
-有効な政策が取れてない今は、地方進出にメリットが出にくいのでしょうか?
三橋― 地方に仕事が少ないので、今はメリットが出にくいでしょう。仕事がないから東京に人口が集中しています。とはいえ、今後の地方では、総人口に対して生産年齢人口の比率が減る人工構造の変化は絶対に避けられません。そして、いずれはどこの地域も超人手不足が起こります。近い未来、地方においてサービスの担い手がいなくなり、需要に対して供給が追い付かなくなるでしょう。そういう時に地方進出をして、起業したら利益が出やすいですよね。
短期的には、若手の東京への流出は進むのは防げません。一旦、東京に来て人手不足がより深刻になったとき、東京で培ったノウハウを用い、地方でビジネスを行うというのは良いのではないでしょうか。
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