はじめに
前回に続き、今回も経済評論家の三橋貴明氏に「地方創生」についてお伺いしたインタビューの続編。
>>>【前編はこちらから】
近い未来、生産年齢人口の減少に伴い、「超人手不足」の時代が到来する。地方の人手不足には拍車がかかり、需要に供給能力が追い付かなくなる。この問題に対する解決策が「生産性の向上」であり、一人当たりの供給能力を上げることが急務だ。生産性を高めるためには然るべき投資が必要であり、特に交通インフラへの投資が必要であると三橋氏は語る。
今回は交通インフラが持つ役割や、起業家が地方創生において果たせる役割についてお届けする。
お話を伺った方
三橋 貴明 氏
経済評論家・作家経済評論家・作家として人気ブログ「新世紀のビッグブラザーへ」や、読者が3万人を超えるメルマガ「三橋貴明の「新」日本経済新聞」を運営。当ブログの1日のアクセスユーザーは12万人を超え、2015年8月には人気ブログランキングの総合部門・政治部門にて1位となる。また、執筆活動も意欲的に行い、2007年に出版した『本当はヤバイ!韓国経済』(彩図社)がベストセラーとなる。
目次
【前編】
1.なぜ「地方創生」なのか
2.経世済民の政策が取れない日本
【後編】
3.新幹線で日本が“小さく”なる
4.外国人よりも日本人採用に目を向ける理由
5.起業家は、アニマルスピリットを持て!
新幹線で日本が“小さく”なる
―「全国を新幹線でつなげ」という表紙の言葉に目を惹かれたのですが、改めて高速道路や新幹線が地方創生において果たす役割について教えていただけますか。
三橋氏(以下、三橋)― そもそも、交通インフラは生産性向上のために整備するものです。より具体的に述べると、生産性向上と市場の一体化が大きな役割となります。例えば新幹線が整備され、短時間で移動できるようになれば、移動に使っていた時間が余ります。その余った時間で別の仕事ができれば、それは生産性の向上ですよね。
高速道路も一緒です。運送を例に挙げると、今まで下道を使って8時間かかっていたのが、高速道路の整備により2時間まで短縮されたら、余った時間で違う荷物を別の場所に運ぶこともできます。一人当たりの生産量を拡大するために、インフラを整備するのです。
一方、各地方にとって、東京、大阪、名古屋などの大都市とつながると、自分のモノやサービスの市場が広がります。宮崎では福岡という大市場に対して、高速道路が整ってないため農産物を運びにくいんです。逆に高速道路が通れば、福岡という大きな市場が宮崎の農家に開かれ、宮崎の経済発展につながります。金沢は市場が東京圏と一体化した顕著な例です。北陸新幹線が開通したことで、金沢の観光や飲食サービスの市場が東京圏に広がり、現在、金沢では建設ラッシュが起きています。
―公共事業投資に踏み込めない政府に対して、民間や企業が果たせる役割はあるのでしょうか?
三橋― 山陰や奥羽越、四国新幹線の整備については、県会議員や知事達が推進委員会を作っているので、そういう場所に参加し、積極的に声を出してほしいと思います。やはり地元が声を出さないと新幹線は通らないですから。
あとは、山陰新幹線が通れば、東京都民の安全保障につながることを理解してほしいと思います。新幹線があることで山陰が豊かになれば、東京で何か起きたときに助けてもらえますし、逆もまた然りです。自分は山陰新幹線には乗らないから、などと個人的な観点で考えるのではなく、長期的には自分のためにもなるという見方をするべきです。
外国人よりも日本人採用に目を向ける理由
―安倍政権は外国人労働者受け入れを掲げていますが、著書の中で三橋さんは反対されています。その理由は何でしょうか?
三橋― なぜ経営者が外国人を雇うかというと、人件費が安いからですよね。ただ、実質賃金の安い地域で、さらに賃金の安い人材を投入して競争させても意味はないです。そもそも政府の目的は国民を豊かにすることであり、実質賃金を上げることが役割なのです。
外国人採用が注目されているのは、人手不足になるからです。しかし、人手不足が顕著なサービス産業において、生産性を向上させれば実質賃金は上がり、国民が豊かになります。逆に、人手不足なサービス業の人材に対する需要を、外国人で満たしてしまうと、生産性の向上を図る必要がなくなるため、経済成長につながらなくなる恐れがある。
生産年齢人口の比率が下がる中、これからは完全雇用が当たり前になるでしょう。生産年齢人口が減っても需要は変わらず残り続けるので、サービスの担い手を生み出す必要が出てきます。企業としては、雇用を増やさざるを得ないという状況が起こります。その中で企業は採用した人材に対して投資を行い、生産性を上げたほうが良いと思います。
起業家は、アニマルスピリットを持て!
―現状況において、企業あるいは、起業が地方創生において果たせる役割というのは何でしょうか?
三橋― 国土の安全保障上、日本国は国民が分散して暮らす必要があります。地方企業では人手不足が深刻ですが、国民が分散するためには勇気を出して投資を行い、生産性を挙げて利益を上げるという経営が求められると考えます。
経済成長は人手不足の時、生産性向上のための投資が為されてはじめて発生します。インフラの整備などは政府の仕事ですが、設備投資や人材投資は企業の役割なので、投資という具体的なアクションを起こしてほしいと思います。将来は不確実なので、投資するには二の足を踏むかもしれません。それでも勇気をもって行動する経営者の魂「アニマルスピリット」が必要です。「失敗するかもしれない、でもやる」というアニマルスピリットがあったからこそ、日本は世界第2位の経済大国に成長することができました。
―最後に起業家や、経営者に向けたメッセージをお願いします。
三橋― 人手不足の産業こそが「成長産業」です。その基本に立ち返りましょう。人が余っている産業で成長することは難しいです。介護、医療、土木、建設、運送などが人手不足の産業ですが、成長産業というイメージはないですよね。しかし、これらは間違いなく成長産業に該当します。
私がこれから起業するとしたら、土木業です。なぜなら人手不足が顕著になるからです。例えばドローンで得た測量データをブルドーザーなどに入力して、自動で施工できるようになれば少ない人数で大規模な工事に取り掛かれます。実際にそういった技術はすでに開発されています人手不足の産業でこそ、生産性向上が図れた時に成長が期待できる、つまりは「豊かになる」ことができるのです。
三橋さんありがとうございました。
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