企業がどれだけ効率的に利益を出しているかという指標にROEという指標があり、近年ではROEで企業の価値を測定する考え方がブームになっています。
よって、ROEを高めるような経営をしなければならないと言われて漠然とその通りだと思いつつも、では自分の会社に関係があるのか考えて見るとよくわからないという経営者も多いのではないでしょうか。本記事ではROEを気にするべき企業について説明します。
また、過去にもROEについての記事を異なる切り口から掲載していますので、ぜひそちらもご覧ください。
そもそもROEとは?ROEを高めるメリット
そもそもROEとは何なのでしょうか。ROEとはReturn On Equityの略称で日本語に訳すると「自己資本利益率」と言い、
自己資本利益率=当期純利益÷自己資本
という式で求められます。つまり、少ない資本でどれだけ高い利益をだしているかの指標で自己資本利益率が高い企業ほど効率的に利益を生み出す体質ができているという事です。
ROEが高いという事は、少ない資本で効率的に利益を生み出せるということになるため、株式投資家からすれば高配当が期待できる優良企業に見え、株式が上場している場合ROEの高い株式は値段が上がりやすくなります。
このように上場している株式会社が会社の時価総額をあげようと思えばROEを経営の指標として経営を行うべきだと考えられます。
ROEの低い上場企業は危険?村上ファンドの買収戦略から見る日本の上場企業の問題点
では、どの位のROEで経営ができていれば優良企業だと言えるのでしょうか。
もちろん業種によって違いますが、だいたい日本では10%を越えていれば優秀であると言われていて、日経平均を出す際に採用されている企業の平均ROEは8%程度だと言われています。一方でアメリカの場合のS&P500指数採用企業の平均ROEは15%程度と言われています。
つまり、アメリカの方がずっとROEが高い経営が行われて、上場企業の時価総額もアメリカの企業の方がずっと高くなっています。
では日本のROEはなぜ低いのでしょうか。本質的な答えは株主と経営陣との関係性にあります。ROEは株主にとって最重要な指標ですが、経営者にとっては必ずしも優先順位の高い指標とは限りません。
上場企業でありながら不必要に会社に潤沢な資産を貯めこんでいても株主に還元しないので、資産に対して時価評価額が低い株式が存在します。これに目を付けたのが村上ファンドで、村上ファンドは余剰資産を株主に還元するか、事業投資に回すように株主として経営陣に訴えてきました。
このことの是非はともかくとして、日本の企業とアメリカの企業のROEの差はこの様な現象に反映されています。通常、上場企業に余剰資産があれば株主はそれを経営陣に配当金として排出させてROEが高い経営が行われているかどうかをチェックします。
そこで得た配当金を更に違う優良企業に対して投資することでお金が循環するのですが、日本の企業の場合は経営陣が安定を図るために会社が貯めこんだ資産を排出しないし、それに対して株主が攻める事はないという風になっていたのです。
このように上場企業がROEの低い経営をしていても株主のチェックが働きにくいという問題は村上ファンドが活動をしていた当時から言われていて、今になってようやく是正されはじめた日本の上場企業の問題点です。
以上の事からわかる通り、上場企業は利益を出して株主に配当金として還元しなければならないので、本当にROEの低い企業は投資家によって魅力はありません。
しかし、不当に会社に内部留保を貯めこんで低いROEで事業を行っている企業は、しっかりと配当を要求する株主に株を持たれた場合、経営陣は今まで行って来た経営をかき乱される事になります。
非上場企業はROEを気にした方が良いのか?中小企業がROEにこだわるメリットとデメリット
このような事から上場企業はROEにこだわった経営を行わなければならないという事がわかります。一方で非上場企業はどうでしょうか。
結論からいうと非上場企業は必ずしもROEにこだわる必要はありません。非上場企業の資本施策の考え方は百社百様で良いのです。
例えば、他人から借金をするのが嫌だから銀行に頼らず全部自己資本で経営をしたいと言うのも良いですし、逆に銀行が低利率でジャンジャンお金を貸してくれるから負債を厚めにして利益を生み出す経営をするというのも選択肢です。
利益を出すとどうせ税金をとられるからそれなら儲けた分は全部自分や従業員に還元したり新しい商品の研究に使って利益を出さない経営をしようするのが賢い経営者かもしれません。
上場企業は株主に配当金として会社の利益を還元するために小資本で高利益を生み出す経営体質をつくる事が求められますが、非上場企業の場合は株主が自分自身や身内なので配当金として株主に還元する事はあまり求められません。
よって非上場企業の方がROEにこだわる必要が無いので経営の選択肢が広いのです。このような理由から、株主を持つと株主の方を向いて経営をしなければならなくなります。
そのため、あえて誰もが知っている有名企業でありながら上場していなかったり、上場してしまった後に株主との関係性から経営の不自由さを感じて株式の公開買い付けを行ってあえて非上場企業に戻る会社も存在します。
よって、確かにROEは確かに経営の効率を測る為に重要な指標ですが、非上場企業については必ずしもROEに固執せずに経営者の考える資本政策と利益の作り方で経営を行う事が可能です。
ちなみに、この様に非上場企業はROEを気にする必要はないのですが例外としてベンチャー企業はROEにこだわる必要があります。
ここで言うベンチャー企業というのはベンチャーキャピタルから投資を受けて、会社を上場させたり、どこかの会社に事業を売却する事を狙っている企業の事を指します。
ROEの低いビジネスというのは投資家から見れば魅力がありません。ROEが低いビジネスは資本の投資を行ったとしてもビジネスが成長して、儲けを出せるイメージが湧かないからです。
例えば同じ資本金が1億円の会社でもROEが20%の会社とROEが5%の会社では、純利益が2000万円と500万円で1500万円の差が出てしまいます。
更にこの2つの同時に上場した場合、株式投資家からの人気に圧倒的に差が出るはずなので2つの企業の時価総額にも大きな差が付くと予想がされます。
ベンチャーキャピタルは10社外れても1社当たれば良いという考え方なので、当たりの1社を最大化する為にできるだけ当たれば大化けしたい会社に投資したいと思います。このような観点から見ればROEが低い企業が上場したとしても大化けする事はないので魅力的な投資対象ではありません。
企業を売却する場合でも同様です。ROE20%の企業が、ROE5%の事業に魅力を感じるでしょうか。ROE5%の事業に自社の事業の親和性や特殊特許、特別な伸びしろなどが無い場合で事業単体について買収するべきかを評価する際にROE5%を買収する位ならば、その資金でROE20%の自社の事業を伸ばす方法が無いかをまず検討するはずです。
この様な理由から事業を買収する場合でもROEの低い企業は魅力的ではありません。
以上の事から言えるのは、非上場企業の場合はROEにこだわらずに自由に経営して良いけれども、ベンチャー企業の場合は初めからROEが高くなるようなビジネスモデルを設計していないとベンチャーキャピタルに目をつけてもらえないため、大変になるということです。
おわりに
以上のように、ROEを気にするべきかについて説明してきました。ROEは確かに経営の効率を測る重要な指標で上場企業にとって重視すべき指標ですが、ベンチャーキャピタルからの投資を狙うベンチャー企業を除けば、多くの非上場企業にとって重視すべき指標ではありません。
それよりも経営者の利益を従業員に還元したり、研究開発などによって未来の投資に使って会社の営業利益をどの様に戦略的に投資するかを考えるべきだと考えられます。
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