近年日本でも広がりつつある「リモートワーク」。クラウド型ツールやチャットツールが発達した昨今、日本のホワイトワーカーも「オフィスに行かずに働く」という選択肢を持てるようになった。リモートワーク導入は、採用においても生産性向上においても、あなたの会社にメリットをもたらすはずだ。
しかし、「リモートワーカーとコミュニケーション不足にならないか」「オフィスにいない社員をどう評価すればいいのか」と、リモートワーカーのマネジメントに悩みを抱える経営者も多いと思う。
そこで今回は、社員の3分の1がリモートワーカーである先鋭ベンチャー企業、コマースデザインの坂本悟史社長に、リモートワーカーをマネジメントするための3つのポイントについてお話を伺った。
1. 「採用に悩む経営者はリモートワークを導入すべき」
– リモートワークを導入したきっかけは?
坂本社長(以下、坂本)- 弊社は地方のクライアントが多いのですが、その多くが採用に問題を抱えていました。その解決策としてリモートワークがハマるのではないかと思い、自社でも試してみようと始めたのがきっかけの一つです。
もう一つのきっかけが、採用したパートさんとの相性が合わなくて上手く行かなかったことです。もっと良い人に出会いたいと思い、それでは全国を対象に募集をかけてたくさんの人の中から良い人を採用したらどうかと思ったことが二つ目のきっかけです。
– 採用に悩む中小企業はリモートワークを導入すべき、ということでしょうか。
坂本- そうですね。クライアントとお話して感じることが、地方の会社は「人が集まらない」という悩みを共通して抱えているということです。
例えば伊豆にある会社の採用条件で、「パソコンができて、コミュニケーション能力があって、かつ伊豆のオフィスに出勤できる人」というと、3つ目の条件で一気に数が絞られてしまいます。パソコンができてコミュニケーション能力がある人は全国にたくさんいるのに、もったいないですよね。特に地方の会社は人に出会う機会を広げるためにも、食わず嫌いは辞めてリモートワークを導入すべきだと思います。
2. 「準社員的」なリモートワーク活用でマネジメントの負担を軽減
– 「リモートワーク」と一言で言っても、社員の海外移住を支援する会社やクラウドソーシング活用まで、様々な種類のリモートワークが存在します。貴社ではどのようにリモートワークを活用しているのでしょうか?
坂本- 弊社では、準社員的な「フリーランス型」のリモートワーカーが従業員の3分の1を占めています。
フリーランス型のリモートワーカーとは、出勤する社員とは別に最初からリモートワーカーとして採用する従業員のことです。契約体系は業務請負契約が多いです。初めからリモートワーカーとして募集するため、勤務地にこだわる必要がないのが利点です。海外から仕事をしている人もいます。
– 初めからリモートワーカーとして採用すると、社員が途中からリモートワーカーになるケースよりもマネジメントがラクになるということもありそうですね。
坂本- リモートワーカーのマネジメントについての悩みで大きいのが「コミュニケーション」と、不公平感を感じさせない「人事評価」だと思うのですが、初めからリモートワーカーとして採用しているのでその点に悩むことはあまりありませんでした。
そういう意味で、リモートワーカーのマネジメントに戸惑うことが少なかったということはあると思います。
3. リモートワーク向き「仕組み作り」のポイント
– 初めからリモートワーカーとして採用するといえど、オフィスに来ない社員のマネジメントに戸惑うことはありませんでしたか?
坂本- いえ、それがほとんどありませんでした。
– それはどうしてでしょうか?
坂本- リモートワークしやすいような仕組みが出来ていたからだと思います。例えば業務フローのマニュアルを作ったり、クラウドツールを早くから使っていたりなどです。元々は自分が自宅でも仕事ができるように仕組みを作っていたのですが、それがリモートワークにも対応できることに後から気が付きました。
– 仕組み作りがリモートワークを成功させるためのポイントなのですね。どのようにリモートワーク向きの仕組みを作ればいいのでしょうか。
坂本- 事前に起こりうる問題をシミュレーションして対応を考えておくことが、業務フローをリモートワーク向きに仕組み化する上で一番重要だと思います。
リモートワーク導入に失敗してしまう会社の多くは、何か問題が起こった時にその都度説明している企業であることが多いです。その場合、人が社内にいるほうがいいですよね。しかし、あらかじめ起こることが分かっている問題の解決策を事前にシミュレーションできていれば、人が社内にいなくてもなんとかなります。
つまり、事前に起こりうることを洗い出しておいて考えておくことが、業務フローの点において在宅ワークのマネジメントをしやすくするポイントだと思います。
–「起こりうるトラブルを事前にシミュレーションする」。重要だと分かっていても、なかなかそこまで手が回らない経営者の方が多いと感じます。
坂本- 事前に考えるコストを払いたくない、と考える経営者の方は多いと思うのですが、リモートワークに限らず、業務改善するためにある程度の前払いは必要だと思います。お金と同じで前払いは辛いんですが、払えば後からメリットがやってきます。
– 仕組み作りのポイントは「前払い」なのですね。リモートワークのためにどのようなツールを使っていますか?
坂本- 各種のクラウドツールを使っています。ビジネスチャットツールや、グーグルスプレッドシートなどです。似たようなものはたくさんあるので、探してみていくつか試されるのがいいと思います。
ただ重要なのが、クラウドで動くということです。ファイルをアップする度に「更新したので確認お願いします」と連絡するよりは、お互い見える場所で同時に編集できる方が、効率が良いので。
4. 採用のポイントは面接中の最後の一言
– 家で勤務すると仕事をサボってしまうのではないか、あるいは働きすぎてしまうのではないか、と不安に思う経営者の方も多いと思います。勤務時間の見える化についてはどのように取り組まれているのでしょうか。
坂本- 勤務時間の見える化については、クラウド型の勤怠管理システムを使っています。しかし、いくら勤務時間を見える化しても、当然いかようにも誤魔化せてしまいます。重要なのは、社員と同様に採用選考を丁寧に行って、サボるような人を採用しないということです。
– 採用が重要とのことですが、リモートワークに向いている人をどのように見極めればいいのでしょうか。
坂本- 面接の最後に「何か質問ありますか?」と聞いた時に、いくつ言えるかということが重要です。質問が出ない人というのは、その場で思いついていないだけなので、その問題に直面した時に初めて手を上げて質問してくる可能性が高いです。
その場に直面しなくても、これがあり得るな、と自分でシチュエーションを想定して手があげられるひとというのが、都度都度のコミュニケーションの頻度が一日一回で済む。でもそうじゃない人は、何か問題があったときに隣に座ってないといけない。
– 「事前にシミュレーションできる能力」というと、先程の仕組み作りのポイントにも通じていますね。
坂本- その通りです。リモートワーカーに向いている人は、リモートワークの運用にも向いています。リモートワークのためには仕組み作りが重要で、仕組み作りのためには事前に予測することが重要です。それができる人は、リモートワークになった時も対応できる人材だと思います。
まとめ リモートワーカーをマネジメントする3つのポイント
– お話を伺って、リモートワーカーのマネジメントのポイントは以下の3つに集約されると感じました。
【ポイント1】 「逆質問」できる人を採用
【ポイント2】 起こりうる問題の対応策を先回りで考え、業務フローを改善
【ポイント3】 クラウド型ツールを使う
リモートワーカーの採用、マネジメント、仕組みづくりについてお話を伺ってきましたが、リモートワーク導入を考えている経営者がまず取り組むべきポイントはどれでしょう?
坂本- 全てが繋がっているので、どれか一つに取り組もうとしても失敗してしまうと思います。
社員から提案できるフラットな社風があり、良い人を集める求人・選考、マニュアル作りや教育、マネジメントしやすい仕組みづくり、それを構築できるコミュニケーション、その上でのメンタルケアなど、全ては繋がっています。取り組むなら、全て一緒くたにやらなければなりません。
–坂本社長、ありがとうございました。
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