経営者インタビュー

”一番は僕が、管理が嫌いだから”―ソニックガーデン倉貫義人に聞いた 「リモートチーム」のマネジメント術

sonic-garden-1

昨今、自由な勤務体系と生産性の高さから、ますます注目を集めるリモートワーク。居住地を問わず優秀な人材を採用できる、移動の時間やストレスが軽減できるなど、そのメリットは多大なものである。

しかし、「リモートワーカーとコミュニケーション不足にならないか」「オフィスにいない社員をどう評価すればいいのか」と、リモートワーカーのマネジメントに悩みを抱える経営者も多いだろう。

そこで今回は、『リモートチームでうまくいく』の著者であり、従来の会社経営とは対照的な独自のマネジメントを実践している、ソニックガーデンの倉貫社長にリモートワーカーのマネジメントについてお話を伺った。

1. リモートワーク導入の経緯と利点・苦労

―社内でリモートワークを推奨するようになったきっかけを教えてください

倉貫− 人を増やそうと思って、採用を始めたんですけど、採用を東京に限っちゃうと、採れる人が限られます。特にエンジニアは東京では奪い合いになっていますから。応募地を全国に広げたら、地方からも応募が来ました。今では社員が26人いるんですけど、半分が地方在住です。

―「通勤時間の短縮」や「生産性向上」の他にも良かったことはありましたか?

倉貫− リモートワークをしていれば 、集まって会議することはできないので、会議室がいらなくなる。そうすると、オンラインミーティングが会議室になるので、人数制限がありません。だから、会議の内容に興味があったら、ただ会議を聞くだけの人が参加できて、これを僕らは「ラジオ参加」と呼んでいます。経営に関するミーティングも興味があれば傍聴できる。会議室がなければ、会議ができないと思いがちですが、むしろ、会議に参加できる枠が増えました。

―社員全員がすべての会議に参加できることのメリットは

倉貫− 弊社では情報をオープンにすることに気をつけています。会社に行けば情報が入手できるけど、在宅勤務では情報が入ってこないという情報格差ができるのは良くないので、誰がどこにいても情報が入ってくるようにしています。物理的な場所がないから、会社のことを知るには情報がすべてなんです。経営や営業の数字、会社で使う経費も僕らの会社ではすべてオープンにしています。

― 当初リモートワークを進めていて、困ったことはありませんでしたか?

倉貫− 地方と本社で差がついてしまうのではないかという懸念はありました。有利不利をつくらないように、東京にいるメンバーも含めて全員リモートにしようって思った時に、もとからリモートの人は良かったのですが、ずっとオフィスに通っていた人は習慣を変えるのに苦労していました。

僕自身もリモートワークを勧めながら、社長がやっていないという状況だったので、自らリモートワークを始めました。そうすると徐々にみんなリモートワークをするようになって、慣れていきました。

sonic-garden-2

2. 社員がセルフマネジメントできれば、管理も管理職も不要

―リモートワークを任せられるのは、「セルフマネジメントができる人」と著書の『リモートチームでうまくいく』と書かれています。御社のマネージャーは何をするのでしょうか?

倉貫− うちの会社にはそもそもマネージャーがいません(笑)社長と副社長とマーケティングをする人はいますけど、あとはみんなエンジニアなので。じゃあ経営者は何をするかというと、経営者の仕事の一つは会社で何が起きてるかとか、会社の価値観を社員に伝えることですね。

僕らの会社では、場所が離れていて、朝礼ができないかわりに、毎日5分間だけ社長が会社の出来事や価値観を録音して、みんなのスマホに配信する「社長ラジオ」というのをやっていて、それを通じて社員に会社の現状や価値観を伝えています。

― マネージャーがいないとなると、評価や昇進はどうされているのか

倉貫− 昇進とか階級とか昇給みたいなものはないです。いわゆる会社のヒエラルキー的な階段はなくて、みんなフラット。一応、技術力のレベル分けはあって、下のクラスで実力をつければ、上のクラスに行けるという感じですね。かといって、目指しているのはマネージャーとしての地位とかではなくて、あくまでプレーヤーとして腕を上げることですね。

― それには何かこだわりや理由があると

倉貫− 一番は僕が、管理が嫌いだから(笑)自分がエンジニアとして管理されたくないし、自分自身も管理するのは別に好きじゃないので。管理のない会社にしたいなと思っていて。

そもそも、我々の会社でやっている事業が、決められたことの手を動かすだけの仕事だったら、上司に管理されてもいいと思うんですけど、そうではなくて、頭で考えて問題を解決する仕事だから、指示されたからといって、早く解決できるものでもないんですよね。

現場の人間とマネージャーがいたとしたら、現場の人間の方が、技術力もあるし、お客さんのことにも詳しいので、問題解決できるから、上司がすることがなくなっちゃうんですよ。それだったら管理しない方が生産性も上がるだろうと。

―ではリモートワークを始める前から、マネージャーがいない体制で、だからこそリモートワークを導入しやすかったと。

倉貫− そうです。もともと管理しない会社にしたくて、そうすると自然と社員がセルフマネジメントするようになるし、セルフマネジメントができているということは、管理する必要がないので、場所が離れていても大丈夫だなって。管理のない体制が先にできていたから、特に考えることもなく、勝手にリモートワークが始まってましたね。

3. セルフマネジメントができる人材の採用と評価

―セルフマネジメントができる人材を採るために、採用にとても注力されていますが、どうやってセルフマネジメントができるか見分けているのですか?

倉貫−  そうですね。僕らの採用プロセスが少し変わっていて、いきなり面接ではなくて、ウェブから申し込みフォームで、応募してもらってから、ウェブ試験を受けてもらっているんです。ウェブで勉強したり、試験したりするシステムがあって、自分でチェックリストをつけながら、勉強していかなきゃいけない。

結構な量があるので、一気にやろうと思ってもできるものではなくて、コツコツやらないとできないので、セルフマネジメントできない人は途中で脱落していくんですよ。できる人はこつこつやっていって、トライアウトをクリアして、面談に進めるという採用フローをつくりました。

―リモートとオフィスで格差を作らないように、どのように評価をしているのかを伺いたかったのですが、もしかして、管理しないということは評価もしないということなのでしょうか?(笑)

倉貫− おっしゃる通り、評価をしないんですよね(笑)なので、賞与などはチームで山分けです。昇級する、しないもないので、評価する必要がないですし、サボってても構わないし、頑張っても構わないという会社です(笑)

― 成果は個人であげるのではなく、チームであげるものという考え方に基づくのですか?

倉貫− そうですね。チームで仕事しているから、チームとして生産性をあげて、成果を出して欲しいですよね。個人評価にしてしまうと、助け合いが起きなくなってしまうので、チーム全体で評価します。会社の評価=自分たちの賞与ってつながるシステムだからみんなで頑張ろうという考え方ですね。

sonic-garden-3

4. お金ではなく、内発的動機がモチベーション維持の鍵

―昇給がないと社員のモチベーションの管理が大変では

倉貫− モチベーションを管理する必要は別にないですよね。

セルフマネジメントができる社員でもモチベーションが落ちることはないのか

倉貫− モチベーション落ちたらほっとけばいいかなって(笑)いや本当に。人間落ち込むことはあるので、落ち込んでいる時に無理して頑張らされても、しんどいですよね。そこは家族とか恋人が励ませばいいので(笑)どうしても仕事のやる気がない時に、めちゃめちゃ頑張れって言われるのって嫌じゃないですか?

― 嫌ですね(笑)

倉貫− ショックなことがあったりして、頑張れないのに、「いやいや、お前頑張れよ!お金あげるから頑張りなさい!」って言われても、頑張れないので(笑)僕らの会社では「内発的動機」っていう言葉を大事にしていて、飴と鞭でモチベーションを与えるのではなくて、本人が自分でやりたい気持ちを促進して、やりたいように仕事させてあげれば、一番やる気が出る。

人間なんて士気の高い時もあれば、低い時もあるんだから、高い時頑張ればいいし、低い時は少し休めばいい。それをフリーランスでやっちゃうと、高い時は良いけど、低い時は生活が苦しくなる。会社ならチームでやってるから、それを助け合える。

じゃあ内発的動機で働く時に、お金でつらないようにするには、もうお金を十分与えればいいんです。 僕らの会社では、入ってから「一人前」っていうトップクラスのレベルになったら、給料が一気に上がるんです。ちょっとずつ上げるんではなくて、すごい上がるので、それで満足できるだけの給料を最初からあげちゃえばいい。そうなると、お金でコントロールしなくてもよくなる。

5. 安定していて、無理がないストック型ビジネス

―社員に十分な給料を払うためには、粗利が高いビジネスモデルを確立しなければならないですよね?

倉貫− そうですね。ただ、利益はそんなに大事ではないと考えています。利益を出すのはすごく簡単で、社員の給料を減らせば、すぐに利益は出る。利益をたくさん出している会社は、僕は良くない会社だと思っています。賞与前利益はまだいいですけど。僕らの会社は基本的に、ストックビジネスで、毎月お客様にお金を頂くビジネスモデルで、大体、期初で期末の利益が見えるようにしています。利益を出すくらいだったら、社員の給料を上げようっていう発想でやっています。

だから、ビジネスとして一番重要だと考えているのは、利益が出るということよりも、安定してお金が入ってくる仕組み。今期は大きな案件が取れたので、1億円入ったけど、来期は全然案件取れなくて、みんなボーナス出ませんってなるよりも、毎月ちゃんとお客様にサービスして、毎月ちゃんとお金が入るっていうビジネスモデルが理想的だなって考えていて、そこを考えてつくったので、そうするとみんなの給料も最初から高く設定できるし、会社も維持していける。

毎月ちゃんとお客様からお金が入ってくるようになれば、慌てて営業する必要はないですよね。そうすると、嫌な仕事は受けなくていいんです。背に腹は代えられないから、仕方なくこの仕事受けるかっていうことがなくて、僕らに合ってない仕事はお断りできる。採用も案件をいっぱい抱えているわけではないので、合ってないと思ったら、うちじゃなくて他のところ行ったほうがいいですよって言える。

案件いっぱいあったら、人採らなきゃってなるけど、そうはしない。本当に良い人がいたら、入ってもらって、人が入ったら案件も採用するというやり方。普通の会社は、大きくすることを目的とするなら、案件ありきで、人を採用するかもしれないけど、僕らは良い人が入ってから、案件取るので、人がまず先なんですね。

なので、会社としては売り上げ目標がないんです。目標のない会社です。(笑)結果として、今の6年目まで、ずっと増収・増益をしてますが、目標にしたことはないです。なので、KPIはないです。(笑)

―「ストック型のビジネスモデル」だからこそ可能な働き方なのですね。

倉貫− そこは大事ですね。ストック型にすることで、お客さんに対しても責任が持てるんですよね。売り切り型のモデルだと、売ってしまえば良いかもしれないけど、それって実は、営業の方が力が強くなっちゃうんですよね。しょうもない製品でも、売っちゃえばお金になるということだと、営業の力が強くなっちゃう。

そしたら、エンジニアの会社なのに、良いものを作ることに対する誇りを持てなくなっちゃう。でも、僕らはお客さんと長いお付き合いでシステム作っていくので、なんかあったら、全部自分たちに問題が返ってくる。バグを作っちゃったら、自分たちで直さなきゃいけないので、いい加減なものは作れなくなる。

だとしたら、良いものをつくるしかない。でも、良いものを作るって、エンジニアにとっては最高じゃないですか。だから、長くお付き合いしていくストック型のビジネスは、エンジニアには向いている。

sonic-garden-46. これからリモートワークを導入する経営者がすべきこと

―今までにリモートワークなどしたことのない会社の経営者が、社員がより快適に、かつ生産性を上げて働けるようにリモートワークを導入するには何が必要だとお考えですか?

倉貫− よく「リモートワークをするためには?」みたいな相談受けるんですけど、リモートワークをよくできている会社を分解してみると、実は離れて働いていること以上に、ITを使って合理的、効率的に働けているかっていうのが重要で、効率的に働けていることと、離れても働けることの2点を合わせてリモートワークなんですね。

大体の会社が、いきなり今までと同じ働き方で、離れた場所で仕事をしだすんですよね。働き方や、評価の仕方とか、成果物の書き方とか、情報共有の仕方など昔のやり方のままで、場所だけまず離しましょう、ってやるから失敗するんですね。

そうじゃなくて、まずはオフィスにいて、一緒の場所で働きながら、コミュニケーションや会議の仕方を見直したほうがいいし、時間で働くより、成果で働くように評価だって変えたほうがいい。まずはオフィスにいながら、合理的な働き方に切り替えましょう、と。それができたら、離れて働いても、問題なく働けると思うんですよね。

― 具体的にはコミュニケーションの取り方や、会議の仕方をどのように変えたら良いのでしょうか?

倉貫− オフィスで同じ場所で働いていても、チャットをまず使ってみる。「いや、社内で隣にいるんだから、チャット使わずに声かければいいじゃん」ってなるかもしれないけど、チャットだと、その場にいない人でも、後から見たらそのチャットの会話が見れるわけですよね。そうしたら、「あ、この二人こういう会話とか相談してたんだ」っていうのが、社内の情報共有になるんですね。だから、実は隣にいる人でもチャットの方が、トータルで見ると効率いいんですよね。

会議だって、オフィスの中でも席が離れているなら、テレビ会議でミーティングすればいいですよね。必ずしも会議室に行く必要はないですから。あとはペーパーレスにしましょうっていうのも、もう当たり前の話で。今まで紙で回して、ハンコ押さなきゃいけない文化だとしたら、まずはそれをやめて、ペーパーレスにしてから、リモートワークを考えればいいわけで。

仕事のやり方と働く場所を一気に変えようとするから失敗するわけで、オフィスにいながら、まずは仕事の仕方を変えてみましょうってことですね。

― 労働時間の管理に関してはいかがですか?タイムカードなどを使っている会社もありますが。

倉貫− そうですね。実は、タイムカードは悪くはないなと思っています。特に、新卒の社員はまだリモートワークはできないし、とはいえ、たまに在宅とかオフィスの外で働くこともあるんですね。そうすると、セルフマネジメントがまだできていない人は働いている時間を計らないといけない。

そういう場合に、従来のタイムカードだと、オフィスにいないとタイムカード押せないし、押すのは出勤時と退勤時たけなので、ちょっとの隙間時間とか、仕事したい時とかの細かいオン/オフが今までのタイムカードだと表せなかったので、僕らが今会社で使っているのはオンラインでできる勤怠管理ですね。新卒メンバーとかはそれを使って、仕事開始を記録して、休憩する時も記録して、また仕事戻った時は、仕事開始ボタンを押して、そのオン/オフを自分で記録して、足し算をしたら8時間になるように自動集計してくれる『F-Chair+(エフチェアプラス)』というツールを使っていますね。

新入社員はオフィスに来て仕事したりするんですけど、先輩がここにいるわけじゃないので、常に見ることはできないですよね。このツールのいいところは、ちゃんと仕事をしているかどうかの緊張感を保つために、仕事モードをオンにしている人のスクリーンショットをランダムに撮るんです。いつ撮るかわかんない(笑)。わかっていればその瞬間だけ仕事すればいいんですけど(笑)

もちろん、オフにしてる時は撮らないので、休みたい時はオフにして、ネットサーフィンして構わないけど、それは休憩なので、またオンにしたら仕事モードになってスクリーンショットを時々撮るっている感じですね。そうすると、仕事する側もしっかり仕事するし、先輩社員も安心して、放っておいて仕事させられるので。

このツールは勤怠管理とスクリーンショットを撮る機能を持ってるんですけど、オフィスでも導入すればいいのになって思ってるんです。だって、オフィスでみんなパソコンに向かってるけど、本当に仕事してるかどうかわかんないですもんね。(笑)

オフィスでもまず導入することで、みんなちゃんと時間を切って仕事するっていう意識が芽生えるので、それが芽生えてからリモートワークをするべきですね。

―本日はありがとうございました!

「ALL-IN」概要資料

生産性をあげる極意 無料小冊子プレゼント!

目次

  1. ALL-IN開発コンセプト
  2. ALL-INの機能紹介
  3. 料金比較
  4. 導入ポイント

Facebookページにぜひ「いいね」をお願いします!

「いいね!」を押すと「経営をアップグレードしよう!」の最新コンテンツが受け取れます

すべての業務がひとつにつながる、クラウド経営システム「ALL-IN」について詳しく知りたい方はこちら!

クラウド経営システム「ALL-IN」の
資料をダウンロードする(無料)