「グロースハック(Growth hack)」という手法を聞いたことはありますか?「名前は聞いたことはあるけど、詳しくは知らない」という経営者の方も多いかもしれません。しかし「グロースハック」という考え方はマーケティング予算が限られる中小企業の経営者にこそ知って頂きたいのです。今回はグロースハックの解説を事例付きで分かりやすくお伝えしていきましょう。
目次
- そもそもグロースハックとは?
- 【事例】Dropbox
- 【事例】クックパッド
- 【事例】nanapi
- 【事例】twitter
- 【事例】Airbnb
- まとめ
そもそもグロースハックとは?
グロースハックとは「ユーザーの反応をモニタリングしながらサービスを高速で改善すること」です。特にWEBサービスなど、ユーザーの反応がすぐに見える業界では、ニーズをキャッチしサービスを進化させることで、マーケティング予算を使わず顧客数を拡大させていきます。
皆さんも「WEBサービスの構成が頻繁に変化する」「見たことなかったバナーが追加されている」といった経験はありませんか?
「グロースハック」はユーザーの反応を見ながら商品・サービスの改善を高速で行い、サービスをユーザーに好かれるものにして急激に成長させます。
よく「PDCAを回す」と言いますが、グロースハックも反復的なプロセスという点で「高速でPDCAを回すこと」と理解して頂いても良いかもしれません。しかし「100個売った施策のうち、90個が失敗するというのが当たり前」という世界なので、より強いメンタリティも必要になります。
(参考: 電通報「最近流行りのグロースハックって何?」より)
現在ではグロースハックを専門に行う「グロースハッカー」という仕事もあるほど、グロースハックは注目を集めています。
例えば2012年のアメリカ大統領選では、共和党のミット・ロムニー陣営が24歳のグロースハッカー、アーロン・ジーンを招聘し「好感度の高い」ウェブサイトデザインの変更を依頼しました。
ジーンはウェブサイトのバナーのサイズ、位置、色などを細かく分析し、微調整を繰り返して、有権者にとって最も好感度の高いデザインを追求した結果、1億8000万ドルもの政治献金を集めることに成功しました。とにかく徹底したユーザー志向を追求し、仮説検証を高速で行うことが特長です。
グロースハックのポイントを理解するためには、ジーンの事例のように、事例をたくさんみていくのが近道だと思います。ユーザーの好感度を短期間で最大化させ、低マーケティング予算でサービスを急成長させた事例をご紹介していきましょう。
Dropbox
ユーザー数5億人を突破し、世界を代表するオンラインストレージサービスを展開するベンチャー企業「Dropbox」。過去記事:「データ管理を簡単に!無料で使えるオンラインストレージ5選」でもご紹介しました。
実はこのDropbox、広告費をほとんど使っていないことをご存知ですか?Dropboxはグロースハックを仕掛け、急成長してきた企業なのです。
お友達紹介キャンペーン
Dropboxも、以前は他のスタートアップと同様に広告枠を買っていましたが、一人のユーザーを獲得するのに233~388ドルの費用がかかってしまっていました。 当時のDropboxの料金が99ドルだったので、ユーザーを獲得すればするほど赤字になってしまう状態だったのです。
そこで仕掛けた有名な改善策が「お友達紹介キャンペーン」でした。
Dropboxを利用していることをSNSやメールで友人にシェアし、友人が新規登録してくれると容量をタダでプレゼントする、という戦略です。
これによって、Dropboxを普段から使ってくれている顧客がDropboxの宣伝を助けてくれるという構図が生まれました。このお友達紹介キャンペーンによって登録数は60%も増加したそうです。
プロモーションビデオ
また、Dropboxは自作の「プロモーションビデオ」を作り、登録者数を急増させた先駆け的な存在です。数分のビデオは、ユーザーはDropboxの使い方を直感的に理解することを助けます。
先ほどのお友達紹介キャンペーンと合わせて、この動画がTumblrなどSNSで話題になり、Dropboxは一晩でなんと7万人もの新規ユーザーを獲得しました。
Dropboxのトップページも、ユーザーの視線をプロモーションビデオだけに集中するように設計されています。多くのユーザーがDropboxの使い方を理解することができ、さらなる登録者数拡大に繋がっているのです。
参考:The 7 Ways Dropbox Hacked Growth to Become a $4 Billion Company
クックパッド
レシピサイト最大手のクックパッド。20~30代の女性を中心に、月間2000万人以上のユーザーが利用し、110万人の有料会員(月額294円)を保有しています。
クックパッドでは「3年以内に世界で有料会員数トップ10のサービスになる」ことを目標に、過去10年間で100万人の有料会員を獲得してきました。
「有料会員登録」の二段階設計
有料会員になってもらうために、クックパッドではまずはユーザーが決済情報を入力無しで、一定期間無料で有料会員を使えるようにしました。その後、本登録を促すのですが、「有料会員登録したらさらに7日間は(有料機能を)無料でつかえます」という二段階の設計にしています。
無料クーポンの発行
サイト外からの潜在顧客に有料会員になってもらうために、外部サービスの会員限定で無料クーポンを付与する施策を打ちました。これらの施策は、すぐには有料会員登録につながらなくても、「プレミアムサービスというものがある」ということが認知されることに貢献しています。
さらに、誕生月に3ヶ月無料クーポンを配布したり、9月9日を「クックの日」と名付けて、「サイトに来てくれたユーザー全員に2ヶ月無料クーポンをプレゼントする企画」を実施するなど、地道なグロースハックをしかけ続けることで、クックパッドは継続的に有料会員数を増やしています。
nanapi
日常で使える生活の知恵などのハウツーを紹介する情報サイトのnanapi。nanapiではKPIをPV数に設定し、PV数獲得のために緻密なSEO対策(GoogleやYahooなどの検索サイトで、特定のキーワードで検索した際に上位に表示されるための対策を施しています。
記事を読まれやすく人力改善
例えば、nanapiではもともと7つしかなかったハウツーのカテゴリを5000個まで増やしました。例えば、「恋愛」カテゴリの中には「モテる方法」という項目があり、その中で女性目線の「男心を理解する」というカテゴリがあります。ここまでカテゴリを細分化・構造化することで、ユーザーが記事を探しやすくなりました。
また、nanapiでは記事のタイトルを4種類も設定しています。nanapiではサイト内、パンくず、ソーシャルサイト、検索エンジンのすべてで異なる記事タイトルを設定し、ユーザーの読みやすさを追求しています。
このように、nanapiではユーザーが自分のサイトに来るときにどういう気持ちなのか考え、地道なグロースハックをしかけています。
参考: nanapiが人力でやっている細かすぎるが効果的なグロースハック
おなじみTwitterでは、顧客を定着させるためのグロースハックをしかけています。Twitterでは、5~7人フォローしたユーザーのアクティブ率が劇的に上がるという数字を掴みました。
必ず5人フォローさせる
そこでTwitterではフォローのレコメンド機能を提供し、新規登録時に5人以上フォローしないと利用開始できないようにしたのです。この結果、Twitterではユーザー継続率を4倍に伸ばすことに成功しました。
また、最初に設定するIDの重複による登録画面での離脱率が高かったため、ユーザーが入力した名前を元にIDを自動入力するよう改善したところ、1日あたりの登録ユーザー数が改善前より大幅に増加しました。
他にも、RTされた場合や人気のツイートをメールでお知らせしたり、トップページにはサインアップ(とログイン)以外の導線は用意しないなどのグロースハックで、新規登録者の拡大と継続顧客の増加を図っています。
参考: グロースハックとは何か 〜グロースハックをマスターするための究極のガイド〜
Airbnb
リピーターが多いサービス事例から学ぶ「世界観を構成する4つの要素」でもご紹介した急成長中のサービスAirbnbでは、まずユーザーが止まったステップで次のアクションに進むための方法をメールで配信しています。
メールリマインド
例えば、部屋を貸し出すユーザーが「写真のUpload」を途中で放置した場合、5日後に「写真を公開しましょう。なぜなら・・・」といったメールが届くのです。このリマインドメールにより、Airbnbは新規登録ユーザー数を増加することができました。
また当時業界最大手と言われていた、ローカルな物件や求人などの情報が集まるサイトCraigslistと連携することで物件契約件数を増加させました。ユーザーは物件情報をAirbnbのプラットフォームを通じて一度投稿をすると、Craigslistへも同時に掲載することができるようにしたのです。この同時投稿によって今までAirbnbを知らなかったユーザーにもAirbnbが認知されただけではなく、物件契約成立の確立を大幅に高めることに繋がりました。
参考: 広告費ゼロ!グロースハックの代名詞Airbnbが900万ユーザーを獲得した方法
まとめ
以上、話題の企業で行われているグロースハック5選をご紹介しました。Dropboxのようなアイディア勝負から、クックパッドやnanapiのような地道な努力まで、話題のIT企業では様々なグロースハックが試されています。
広告費にお金をかけずに顧客を獲得することができるグロースハックは、現在多くのIT企業で取り入れられています。あなたの会社でも、真似できる点は真似して、グロースハックを仕掛けて「ユーザーから好かれるサービス」を目指しましょう。
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