残業時間の削減。これは、今日の日本企業に課された最重要課題と言えるでしょう。社員の残業を見て見ぬふりをした経営はおそらくこれ以上通用しなくなっていくことが予想されます。
今回は、日本企業が抱える至上命題である、残業時間の削減がテーマです。これは、働き方改革、業務効率化とも大きく関わってくるテーマになります。
第1章では、今日の日本における労働生産性の現状と、世界の各国との比較についてご紹介します。第2章では、厚生労働省が実施した時間外労働削減のための取り組みに対するアンケートをご紹介し、その中のノー残業デーについて詳しく述べていきます。最後に第3章では各企業が行う、残業時間削減のために実施しているのユニークな取り組みについてご紹介していきます。
1. 日本における労働生産性の現状と海外各国との比較
<出所>公益財団法人日本生産性本部「日本の労働生産性の動向」
上記のグラフは、公益財団法人日本生産性本部が発表した「日本の労働生産性の動向2016年版」における日本の名目労働生産性の推移を示しています。リーマンショックがあった2008年以降、毎年増加傾向にありますが、まだ2008年前の水準には至っていません
<出所>公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2016版」
次に、これはOECD加盟諸国の労働生産性におけるランキングです。なんと日本は、35か国中22位という驚愕の事実が分かります。
この二つのデータから、今日本が抱えている残業は、この低い労働生産性から来ているものと推測することができます。
2.残業削減のための取り組みアンケート調査結果
では、今日本各社は労働生産性をあげ、残業時間を削減するためにどのような取り組みを行っているのでしょうか。下記は、厚生労働省が作成した時間外労働削減のための取り組むに関するアンケート調査結果です。
<出所>構成労働省受託事業部「時間外労働削減の好事例集」
この中で、一番上にあるノー残業デーについて少し補足します。労務問題などに関する調査を手掛ける産労総合研究所(東京・文京)によると、14年度時点では、ノー残業デーを導入している企業は74.3%に達し、ほとんどの企業でノー残業デーを採用しています。
そんな中、水曜日にノー残業デーを設定する企業が多く存在しています。なぜかというと、まだ週半ばでいまいち仕事に対し、気持ちが盛り上がらないといった社員に対して、モチベーションコントロールの狙いがあるためです。その結果、水曜におけるジム利用数、英会話や音楽レッスンなどの習い事の利用者数などは休日の曜日についで高い数値が出ています。
つまり、ノー残業デーを水曜日に設け、会社員がジムや英会話などを利用し、リフレッシュを図ることで、一週間高いモチベーションを保ったまま、社員が働けるようになるのです。
ノー残業デー採用をご検討の方は、ランダムに設定するのではなく、水曜日に設定してみてはいかがでしょうか。
3.日本企業における3つの残業削減取り組み事例
残業80%減を実現した残業チケット 〜株式会社ピコナ〜
3DCGプロダクションの株式会社ピコナが実施している残業チケットという仕組みが話題を集めています。このチケットを採用後、月平均100時間を超えていた残業時間がなんと20時間を切るまでになったのです。
ピコナが実施するこの耳慣れない「残業チケット」という仕組みは、月初めに残業チケットが10枚配布され、残業する際にそのチケットを使用するというもの。ただし、6枚以上の使用にはペナルティーがつきます。6枚以上になると、1枚につき「ピコナポイント」がペナルティーとして5点ひかれてしまいます。
このピコナポイントとは、福利厚生の一環であり、貯まると豪華景品獲得のためのサイコロが振れるというものです。
初めはなかなか、成果は出なかったこの施策はだんだん成果を出すようになり、今では、1枚も残業チケットを使用しない社員もいるそうです。
朝方勤務で仕事効率25%アップ! 〜伊藤忠商事〜
伊藤忠商事が実践している朝方勤務とは、20時以降の残業を原則禁止してどうしても必要な場合は事前申請制とし、22時以降の深夜残業を禁止する一方、残業は翌日の朝勤務へシフトするというものです。
インセンティブとして朝5時から8時の時間帯は深夜勤務と同様の割増賃金を支給し、8時前に始業する社員には朝食を無料で食べられるという特典もあるそうです。
この制度により、20時以降残業する社員数は1年で30%から7%へ減少。22時以降残業する社員は10%から0名となり、残業時間削減に成功しました。
残業しなくても残業手当を出す? 〜SCSK株式会社〜
SCSK株式会社はかつて、ブラック企業であると烙印を押された企業であった。しかし、今は構造改革に成功し、平均で18時間ほどだといいます。では、何がSCSK株式会社を変えたのでしょうか。それは会長兼健康経営推進最高責任者である中井戸信英氏が打ち出した斬新な施策でした。
中井戸氏は、ただ残業を減らせと社員に伝えても、会社が業績を上げるために強いていると感じてしまうだろうと考え、残業時間が50時間から20時間に短縮できたら、30時間の残業代は全部翌年のボーナスで戻すと約束したのです。
これにより、社員が残業削減を快く行える環境を作ったのです。
おわりに
第1章でも述べましたが、世界において、日本は労働生産性で大きく劣っていることが残業王国となってしまっている一つの要因と言えます。早めに手を打たなければ、日本に明るい未来を期待することは難しくなります。なので、一刻も早く、労働生産性を高め、残業削減に乗り出しましょう。
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