経営者インタビュー

二度の上場経験の持ち主「上司学」の嶋津 良智氏に聞く。会社を任せられるチームのつくり方とは?

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1.はじめに

「会社を任せられるチーム」のつくり方を考えたことはお有りだろうか。 経営活動の生産性を高めていくためには、あるタイミングからどんどん自分の仕事を部下に任せていかなければならない。しかし、任せることが苦手な経営者も多いはずだ。部下との関係性づくりに悩んでいる方も少なくないだろう。

今回のインタビューはこれまでに自らが率いる組織を二度、上場に導き、独立後は世界14都市で総計3万人以上のビジネス・リーダーを育成してきた嶋津 良智氏に「会社を任せられるチームのつくり方」について伺った。

2.お話を伺った方

嶋津 良智氏
一般社団法人日本リーダーズ学会 代表理事

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もっと‘稼ぐ’組織を作る「上司学」メソッドの開発者である第一人者。大学卒業後、IT系ベンチャー企業に入社。同期100名の中でトップセールスマンとして活躍、その功績が認められ24歳の若さで最年少営業部長に抜擢。就任3ヶ月で担当部門の成績が全国ナンバー1になる。その後28歳で独立・起業し代表取締役に就任。M&Aを経て、2004年52億の会社まで育て株式上場(IPO)を果たす。

2005年「育てる側がよくならないと『社会』も『企業』も『人』も良くならない」との思いから、「『あなたのもとで働けてよかった』をすべてのリーダーへ」を理念に、次世代リーダーを育成することを目的とした教育機関『 リーダーズアカデミー 』を設立。

主な著書としてシリーズ96万部を突破しベストセラーにもなった『 怒らない技術 』をはじめ 『 あたりまえだけどなかなかできない 上司のルール 』、『 だから、部下がついてこない!』『目標を「達成する人」と「達成しない人」の習慣』などがあり、累計132万部を超える。

3.たった一人の上司との出会いが、全てを変えた

―嶋津先生は世界中で「リーダー育成・組織づくり」の分野でご活躍されていますが、この分野で生きていこうと決断されたキッカケを教えて下さい。

嶋津 良智氏(以下、嶋津)―バブルの時代、私は就職活動をしていました。いま周囲に話すと驚かれますが、特に才能や取り柄がない「どこにでもいるような学生」で、全く入社試験に受からず苦労をしていました。

困り果てて友人に相談すると「営業職を希望すればいい」とアドバイスを貰いました。当時、営業職の求人だけは山のように募集があったのです。

笑い話ですが、当時の私は人見知りで、営業に向いていないと思っていました(笑)背に腹は変えられず、営業職を希望して改めて就活をすると1社だけ受かりました。今だから言えますが、当時は仕方なくその会社に入社しました。社会に出ることに全く期待せず、憂鬱な気持ちで私の営業マンとしての人生がスタートしたのです。

入社して、まったく成果が出せず苦しんだ時期が続きました。嫌になって何度も何度も辞めてやろうと思いました。しかし「あるリーダー」との出会いにより私の営業人生が一変します。苦手意識を克服し、みるみる成果が出るようになり、一気に同期の中でトップセールスになり、最年少で営業部長に就任しました。

私がその時に思ったことは、「たった一人の良き上司との出会いで、仕事観が変わり、人生が変わった」ということでした。この経験は衝撃的で、私が『上司学』を始めた原体験になっています。

私のモットーの1つに「育てる側がよくならないと『社会』も『企業』も『人』も良くならない」という言葉があります。これは、裏を返せば「育てる側がよくなれば『社会』も『企業』も『人』も良くなる」ということです。多くのビジネスパーソンも、私のようにたった一人との出会いによって人生が変わるかもしれないと考えたら、ワクワクしてしまったのです。

そんな想いから、もっともっと社会を引っ張るリーダーが「育てられる人」になって欲しいと考えて現在の事業「リーダーズアカデミー」をスタートしました。

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図:リーダーズアカデミー「上司学」より

―「リーダー育成」は、会社経営の中で極めて重要なテーマです。この分野で活動されている嶋津先生のお姿には、本当に刺激を受けます。

嶋津― なんの取り柄もなく才能もない自分が、何故チームを率いて上場を二度も経験でき、会社経営を存続できているかといえば「自分を“凡人”だと自覚している」ということに尽きると思います。

この自覚は、実はリーダーとして大切な要諦の1つです。セミナーなどで、経営者の方にお伝えしているのは「際立った成果を得たいのであれば、どこかのタイミングで “部下に任せること” が必ず求められる」ということです。

ドラッカーも「組織というのは自分の強みを活かし、自分の弱みを中和するためにある」と言っています。

自分の得意なことは、誰かの不得意。その逆も然りです。そういった違いを組み合わせて最良を生み出していくことが、組織をつくる意義の1つだと思います。

組織づくりに苦しむケースはある程度パターンが決まっていて、一番多いのは創業社長に多く見られる「万能ワンマン経営タイプ」です。このタイプの経営者は「任せる」ことが苦手な方が多いようですね。

―目標を達成するリーダーと達成しないリーダーの差は、1つは「任せる」ことだと嶋津先生は言われています。

嶋津― 成果にレバレッジをかけるために「任せること」が必要です。任せることによって「チーム力」が養われ成果が出やすくなるだけでなく、人材が成長したり、社員が定着し離職率が下がったり、様々な良い効果が得られます。

目標達成する人・しない人の違いは「一人でできることは、たかが知れている」と自覚しているかどうかです。世の中のリーダーにもっと積極的に「部下に任せること」を実践して頂くのが私の使命の1つですね。

4.理想の組織をつくるためのプロセス

―これだけ多くの成果を出され、2度の上場経験、130万部以上のベストセラー作家の先生でも「チームづくり」に関する悩みはあるのでしょうか?

嶋津― もちろん、日々悩みの連続です(笑)人と組織をずっと研究をしていますが、このテーマにはゴールは存在しないと思っています。人と人とが絡み合い、無限の組み合わせが起こるのが組織です。ですから、人・組織のテーマで悩みがない状態はありえないのかもしれませんね。

しかし、悩みが尽きないテーマだからこそ、リーダーはどう向き合うかが重要です。リーダーにとって一番良くないのは「良くないと思っていることを、放っておくこと」だと私は考えています。

経営者は、目を背けたくなるような課題に徹底的に向き合って、解決していくことでしか前には進まないと思うのです。

私も、数え切れないほど失敗を繰り返し、成功も経験し、今に至るまで課題に向き合い続けてきました。これからも向き合い続けるでしょう。そういった経験すべてが血肉となり「リーダーズアカデミー」のカリキュラム(知恵)として体系化されます。そうして練り上げた知恵をクライアントの皆さまにお伝えして、お役に立った時、初めて全ての失敗が報われているのかもしれませんね。

―先生が描く、理想のチームについて教えていただけないでしょうか

嶋津― 理想のチームを描くために4つのプロセスがあると考えています。第1段階が「明確なビジョンを描き、リーダーが語り、チームに共有し続ける」こと。第2段階に「ビジョンに対してメンバーに自分事として理解してもらうため、個人のビジョンとすり合わせる」こと。第3段階に「ビジョンの達成に、メンバーを参加させるため、方法論を共に議論していく」こと。最後の第4段階で「理想のチーム像の定着を目指し、業務改革や、制度を通して徹底的な反復活動を実行する」ことです。

全てが一気通貫されており、統一感のあるチームが理想だと思っています。特に、「個人のビジョン」と、「会社のビジョン」が一致している状態はとても大切です。

5.勇気を持って、部下に任せよ!

―理想のチームをつくるには、先ほどの「任せる」ことは重要なのでしょうか?

嶋津―  そもそも、良いチームづくりは自分一人では成し得ないことです。ですから「任せる技術」を磨くことは、とても重要なことだと思っています。

私がよくセミナーで口にするのは、上司の究極の仕事は「自分の仕事をなくすこと」だということです。それは決して楽をしてくださいという意味ではなく、自分がしなくてもいい仕事をどんどん任せたほうが、経営の全体最適に繋がるという意味です。

「上司が自分の仕事をどんどんなくしていくこと」こそが、数千の組織を見てきた絶対的な「成功する組織の法則」だと確信しています。任された本人も成長しますし、上司自身の時間が確保され、未来への投資が可能になります。ですから、上司は、まず「自分の仕事をなくすために、何ができるか?」を自分自身に問うことをオススメしています。

―任せる時に「自分でやったほうが早い」「本当に任せて良いか不安だ」という声がよく挙がりませんか?誰でも任せることはできるのでしょうか。 

嶋津― もちろん可能です。やり方を覚えてしまえば、誰でも「任せること」は上達していきますよ。

任せることが怖いという方に、簡単ですが強力な任せる技術をご紹介しましょう。それは「細分化反復法」です。これは私が中国出張時の工場見学時に考え付いた言葉です。読んで字の如しで、細かく仕事を区切って、その区切った仕事を覚えるまで1から反復させて、覚えたら次の区切った仕事に移らせるというやり方です。

たとえば、ある一つの成果を出すときに、細分化すると10の仕事になったとします。一気に10を教えて、「この仕事はこうやるんだ。できるようになるまで頑張って」と言われるより、初めに10の仕事の1だけを教えて「これができたら次の仕事に移ろう」と言われる方が、教えられる側も見通しが立つ分、やる気も起きやすくなります。

はっきりいって教えるのは大変ですが、一見遠回りのようで最終的には成功の近道となります。

―それでも「任せる」ことに関しては、心配になる方が多い気がします。多くの経営者の方が本当に悩んでいます。

嶋津― まずは、完璧主義を捨てることですね。確かに、自分だったら100点で出来る仕事を、部下が60点のクオリティのこともあります。しかし、それでは、いつまでも任せられませんし、部下も育ちません。

ですから、こう考えてみてはいかがでしょう?「自分だったら100点。だけど、彼ならこの仕事をいつか120点にしてくれる・・・かもしれない」と(笑)

任せなければ、こういった喜ばしい可能性の芽を摘いでしまい、部下が育つ機会を奪うことにも繋がります。ぜひ、勇気をもって部下に仕事を任せてみてください。必ず、新たな組織変革の一歩を踏み出せるはずです。

6.研修が嫌いだった嶋津氏が、セミナー講師をやる理由

―こういった「チームづくり」に関しては、なかなか独学や現場の学びだけでは限界もあると思います。一方で、学びの時間を取ろうと思っていても、時間を投下できない経営者の方が多くいます。

嶋津― 「歯」が痛くなったら、絶対に歯医者に行って治療をすると思います。時間がないと言って、歯医者に行かない人はいないはずです。

「組織づくり」も同じです。本当に「組織づくり」「人づくり」が大切だと認識しているのであれば、必ず時間をつくり、スケジュールに入れるはずです。

要は、経営の優先順位の問題でしょう。つまり「組織づくり」「人づくり」が会社経営に与える影響や継続的な「売上」に与える重要性をまだ認識していない方が多いのかもしれませんね。

―経営者・上司が「学び続ける」ことは、このテーマに限らずとても重要です。ただ、なかなか時間とお金が割けない方の悩みも聞きます。

嶋津― 私も20年以上は経営者を務めていますから「目先の売上」の重要性はよく理解しているつもりです。ですから「来月の売上が上がらなければ会社が潰れる」といったギリギリな状況の時に、学びましょうと言うつもりはありません。

ギリギリの状態にならないため、余力がある時に、人づくり・組織づくりに「お金と時間」を使って、投資することは心からオススメします。教育への投資は、将来何倍にもなって会社に恩恵を与えてくれます。

色々な理由をつけて「学びの場」に人材を送り込めていないようであれば、教育への投資を改めて検討すべきでしょうね。

―嶋津先生も、昔は「研修嫌い」だったと聞きました。どのような気持ちの変化があったのでしょうか。

嶋津― 以前の私は「すべての学びは現場にある」と言ってはばかりませんでした。後に間違いだったことに気づくのですが(笑)

どうしても会社経営が上手くいかない時期があり、紹介された研修に、藁をもすがる思いで参加しました。

するとその研修が、期待以上に良かったのです。これまで実務で経験していたことが、きちんと体型立てられて再現可能な「スキル」として存在していて、衝撃を受けました。体系化されていたので、学んだことの社内展開が効くのです。業務の「マニュアル化」や「標準化」という発想はこの時に得たのかもしれません。散々バカにしていた研修にたった一度の参加しただけで、私は経営者としての次のステージに導かれたのです。「なんだ、机の上でも、現場で使える学びはあるじゃないか!」と目から何枚ウロコが落ちたことか分かりませんでした。

この経験から、私自身180度考えを改めて、惜しみなく教育・研修には投資するようになりました。考えてみれば、自分が抱えている課題は先人たちが考え尽くしてきたことです。ですから、先人の智慧から学ぼうとしないのは、経営者として大きな機会損失だと思うのです。

世の中の多くの組織を見て「もったいないな」と感じることが少なくありません。少しテコ入れするだけで、組織が劇的に変わる可能性があるのに、経営者が学ぼうとする意志がない企業が多いように思います。たった一度の研修で私が救われたように、この記事を読まれた方もたった一度のセミナーで経営が変わるヒントが掴めるかもしれません。

経営には様々な優先順位がありますが、私は「組織づくり」こそ経営の最もクリティカルなテーマだと考えています。致命的に大切です。ですから、組織づくりの改革をお手伝いしたいと考えて今の仕事をしているのです。

―「学び」の重要性について改めて確認できました。最後に読者の方にメッセージをお願いします。

嶋津「あなたにとっての、理想のチームとは?」と、一度考える時間を取ってみてください。

「理想のチームはどんなチームですか?」と聞いた時に、うまく説明できない方が多いように思います。しかし、理想のチームが明確にするだけで、組織改革が大きく動き出します。組織づくりに時間が取れない気持ちは理解できます。ですから、毎月定期的に時間を確保するというより、一度「セミナー・講演会」という機会を使って、講義を聞きながら考えた方が効率的・効果的かもしれません。今は素晴らしいセミナーが沢山ありますから。弊社リーダーズアカデミーには絶対的な自信を持っていますし、浜口さんのプレジデントアカデミーもそうですね。2016年9月17日に浜口さんと「組織づくり」をテーマとしたコラボセミナーを開催します。お時間に都合のつく方はぜひお越しください。

1つの小さなアクションが、会社、そして自分の人生を変える大きなきっかけになるかもしれません。ぜひ、「チームづくり」「人づくり」を通して、素晴らしい会社をつくっていってください。

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目次

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