見える化

「見える化」が経営を左右する3つの理由

mieruka 2前回の記事では、見える化とは何たるか、勘違いしやすい点などを紹介しました。

今回は、見える化の導入が経営を改革し、事業を成長させる3つの可能性を紹介していきます。

問題の早期発見ができる

mieruka p2 3見える化をすることで、後々事業に大きな影響が出るような問題の種の早期発見を可能にしたり、今まで目も向けなかった新たな指標を取ることや管理を始めるきっかけとなり、新たな課題や問題が浮き彫りになるということがあります。

例えば、業界・業種を問わず、世界中の企業が参考としているトヨタ式の「Just In Time(ジャスト・イン・タイム生産方式)」は「必要なものを必要なときに必要なだけ」という考え方に基づいています。JITを達成するためには「何がどこにどれだけあるか」をいつでも把握できなければなりません。トヨタはそれを可能にするため、帳簿上に複雑に記録されるものを、誰が見てもすぐわかるように、「かんばん」という形にすることで、「在庫がなくなりかけている」という問題の早期発見を可能にする「見える化」を達成しました。

生産現場においての「在庫」など、全ての部署はそれぞれ把握するべきものを持っています。営業やマーケティングの現場では、顧客のCLVなど顧客に関するあらゆる指標の全体の動きや流れを掴み、想定外の動きを発見し問題や課題を浮き彫りにすることが求められます。経営者は会社の血液ともいえる、「お金の動き」を把握することが重要です。これがどれだけ重要か、まずは以下の引用を読んでください。

東京商工リサーチが、2012年に倒産した企業の財務データ分析した調査結果によると、赤字だった起業の割合は55.3%でした。約半数の会社は赤字ではないのに黒字で倒産しています

このような統計結果が出る主たる理由は、「売り上げを回収できていない」からです。会社に現金がない状態で、500万円の仕入れの支払いが一か月後に迫っているとします。もしその時1000万円の売上があったとしても、それが3か月先に支払われる売掛金であったら、支払いができずに会社は倒産してしまいます。経営者は利益が出ているのか出ていないのかだけでなく、すぐに現金化できるものがどれ程あるのかなど、「お金の性質」も把握しなければなりません。

医者は「心電図」という心臓の動きの見える化を行うことで、患者の異常を発見します。経営者も、社内の様々な「人・モノ・カネ・情報」の動きを見える化し、問題の早期発見を可能にしましょう

次なる打ち手へのヒントが隠されている

mieruka p2 4見える化によって表面に出てくるのは、問題だけではありません。「いつも通りでない」出来事に気づくことができます。その事象は今後の新たな戦略・戦術のヒントとなるかもしれません。そのヒントは、イレギュラーなお金の動きやある従業員の顧客からの評価の急激な変化、なぜか一時的に生産性の上がった業務プロセスなどに隠れています。日々の見える化の実践によって、何が「通常の動き」なのかを把握することで、そういったイレギュラーを発見することができます。

経営学の学術研究の分野では、「ブラックスワン」という言葉があります。通常の事例(白い白鳥)の中に隠れた、ありえない現象(黒い白鳥)のことです。近年経営学の学術的研究の分野では、従来の論理や通説では解明できない事象を分析し、その謎を解明した論文の価値は高まっています。なぜなら経営の現場に「こういうやり方もあるのか」「気を付けなければいけない」などという大きな示唆を与えられるからです。

論文はブラックスワンを発見するだけでは完成しません。その事象を徹底的に検証することで初めて「学び」を得られます。経営の実践の場でも同じです。見える化を通して、何か「気づき」を得たら、そこに興味を持って、あらゆる視点から徹底的に調べましょう。全く関係のない別の指標の動きと何か相関関係があるかもしれません。

社員の「経営の当事者」意識を向上させる

mieruka p2 5見える化を通して、問題の早期発見やヒントを得られることが分かりました。しかし、これらを経営者一人で発見する事はとても困難です。見える化の実践で社員も会社の状態を把握することができ、問題とヒントをより多様な視点から発見することができます。

経営者のコックピット作りが最も重要であることには変わりはありませんが、従業員一人一人が見える化の恩恵を受けられる仕組みを作ることで、「会社の状態を様々な視点から見られるようになる」以外にもう一つ、会社をよくする秘密があります。それは、「社員が「経営の当事者」という意識を強める」ということです。

会社を左右するのは経営者です。しかし規模が大きくなるにつれ、人を雇い、自分でやっていたものを人に任せます。経営者一人では会社は動きません。パイロットだけでなく、整備士、キャビンアテンダントなどその他大勢の協力の上、飛行機は安全に目的地に達するのです。つまり、社員一人一人が会社を動かしています。しかし、会社が大きくなると、社員のその意識は次第に薄れていってしまします。それは、自分がやっていることがどう会社に影響しているのか認識しづらくなるからです。

もし、日々の経営成果、それも売上だけでなく自分の部署での行動が大きく関わる指標が、目の前で日々変化していく様子を「見れば」、自分がどう会社を動かしているかを認識し、与えられたタスク以上の改善を行うことや、会社全体の利益を気にした行動をするモチベーションとなるでしょう。そのためには「見える化」の仕組みを社内全体で共有できるようなシステムが必要です。

「見える化」は会社の経営を左右する最も重要な取り組みの一つです。

→次の記事へ 3.「「見える化」の事例―企業の明暗を分ける」

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