IT投資と言えば、何を思い浮かべるでしょうか。おそらく、経理や人事などのバックオフィス業務に関して、会計ソフトや勤怠管理のシステムを使って管理しているという会社は多いかと思います。日本の企業は従来このようなバックオフィス系の「守り」のITシステムに多額の投資を行ってきました。
しかし、守りのIT投資では競合と差別化し利益を獲得するのは今後更に困難になってきます。本記事では日米のIT投資を比較しながら、今後日本の企業に必要な「攻め」のIT投資について説明します。
少子化で儲かる企業と儲からない企業の二極化
2017年9月現在、日本の有効求人倍率は1.52倍となっています。2018年卒の学生の就職内定率は9月1日の時点で90%を越えていると言われています。
このような状況は一説によるとバブル時の求人倍率だと言われていて多くの企業は人手不足に悩んでいます。この事実には色々な分析が可能ですが、少子高齢化という人口トレンドを加味すれば、今後も人手不足が続くと考えた方が無難です。
そして一般的にブランド力や待遇で言えば、中小企業よりも大企業の方が人材採用において有利なので、中小企業は数値以上に採用が困難になると考えられます。
つまり中小企業は人材雇用だけで成長計画を描く事が非常に困難なのです。もちろん中小企業でも人を採用できる企業はありますが、中小企業が人を雇う為には競合よりも高待遇で人材を登用する必要があります。
しかし、競合より良い待遇で人を雇う為には競合よりも高い生産性の活動が求められます。
つまり、生産性が高い企業はその利益を利用して人材やシステムに投資を行って更なる成長が可能で、生産性の低い企業は利益が低いので従業員の待遇が悪く人が増えないし、利益も低くなるという風に生産性の高さが企業の業績に大きな影響を与える事になり、この差は年を経るごとに拡大し、儲かる企業と儲からない企業は二極化す可能性があるのです。
日本の「守り」、アメリカの「攻め」のIT投資
生産性の高さとは実はIT投資と大きく相関しています。
例えば、昭和の企業では書類はタイピストという専門職が作成して、会社の大きなファイルキャビネットに保存されていて、作るのも探すのも大変でしたが、コンピューターが安価になり、誰でも扱えるようになったので誰もがワードで簡単に書類が作成できて、ハードディスクなどの記録媒体で大量の書類を持ち歩いてメールで簡単に送りあえるようになったのです。
このように生産性の高さの背後にはそれを実現するIT技術があることが少なくないのです。
従来の日本ではIT投資と言えば、バックオフィス業務が中心であり、ITを利用した業務プロセスの効率化や業務コストの削減というのが主要なIT投資テーマでした。
例えば、日本企業において特に進んだのが経理の領域で、どんなに小さな中小企業であっても経理ソフトを利用して経理業務が一般的になっています。
また、日報や業務報告書、稟議書などの書類のやりとりをITシステムによって行うというのも珍しくありません。工場においてはセンサーなどを利用して工場内の稼働状況を「見える化」し生産体制を分析、効率化する事に注力されています。
<独立行政法人経済産業研究所「IoT/インダストリー4.0が与えるインパクト 第10回」より表を引用>
上の表は日米のIT投資の用途を比較したものですが、日本とアメリカでIT投資の関心が大きく異なる事がわかります。
すなわち日本ではバックオフィス業務を効率化する「守り」のIT投資が主要なテーマになっていますが、IT先進国のアメリカでは既に関心領域は一歩進んで「攻め」のIT投資に関心が及んでいます。アメリカ企業は、業務を効率化するだけではなく、ITシステムを使ってどのように売上や利益を増加させたり、顧客満足度を上げたりするのかというのが主要な関心事になっているのです。
もちろん、どちらの姿勢が一概に正しいという事はできませんが、日本に必要なのは両方のIT投資を効率良く行う事です。今後日本で不足する人材は経理・人事・工場労働などのIT投資によって業務効率の削減を行っているコストセンターの人材だけではなく、営業やマーケターなど利益を生み出すプロフィットセンターの人材も不足します。
そうなったときにプロフィットセンターの業務がITによって効率化されていなければ生産性が低いので競合に後れを取りかねません。
なぜ日本は「攻め」のIT投資ができないのか
このように、アメリカと比較して「攻め」のITインフラに関する投資が日本では遅れているのですが、ではなぜ遅れているのでしょうか。細かい事まで注意・管理する日本の国民性などからも説明ができますが、一般的に「攻め」のIT投資の方が現場からの反対が強い傾向にあります。
バックヤードの業務効率化、コスト削減の場合はシステムの導入がそのまま現場の人の働きやすさにつながる事が多いのですが、プロフィットセンターにITシステムを導入すると現場は一時的に混乱します。
つまり、今まで必要なかったのに営業状況をシステムに入力する必要ができたり、顧客との関係性を数値化して管理する事に対して営業が作る顧客との関係性は数値化できるものではないという反論があったりと、現場サイドから、今まで行っていた仕事の仕方が変わる事への反発が起こりやすいのです。
このような理由から、会社において「攻め」のIT投資を行うためにはIT化の推進者の強いリーダーシップが必要となります。
日本には発生しなかったニューエコノミーによる好景気
日本において1990年代初頭にバブルが崩壊した後は失われた20年と言われていて、2017年現在景気が回復傾向にありますが、長い間暗黒期に陥っていました。一方で、アメリカでは1990年代後半よりIT投資によって「ニューエコノミー」という好景気が到来しました。
いわゆるITバブルというもので、2000年代初頭のバブル崩壊まで景気は拡大しつづけたのです。日本においても同時期にITバブルは発生しましたが、いま振り返るとその影響はアメリカの比ではない位に微々たるものです。
この時期にアメリカで誕生した企業としてはグーグル、amazonなどの今のITインフラを支える企業が誕生したのに対して、日本では楽天、ライブドアなどの企業が誕生しましたが、世界への影響力を比較すると微々たるものです。
これには色々理由が考えられますが、1つの大きな理由は現在のベンチャー投資のように有望なスタートアップ企業の資本に投資を行おうという文化が日本にはなかった事が大きな原因の一つだと考えられます。
すなわち、アメリカではITを利用したビジネスモデルの構築に資本が流入したのに対して、日本では大企業などの業務改善に銀行から資金が注入されたということです。
その後、日米どちらがIT分野において世界に影響を与える事になったのかは言うまでもありません。攻めのIT投資は、業務改善によるコスト削減のようなすぐ手に入る利益をもたらす事はありませんが、ビジネスモデルの構築や顧客満足度の向上など長期的な視点で考えられば取り組まなければならない経営課題だと言えます。
「攻め」のIT投資の第一歩として
以上のように日米のIT投資を比較した時に、日本において今後「攻め」のIT投資が必要になると言う話をしましたが、何から行えば良いのでしょうか。まずは社内のITアレルギーに向き合う必要があります。
すなわちプロフィットセンターに対してITシステムを導入するのです。ただし、ただ顧客管理やCRMのシステムを導入すれば良いというわけではありません。
プロフィットセンターは、企業において、利益をもたらす部門。収益(プロフィット)と費用(コスト)が集計される部門。
コストセンターは、直接的に利益を創出しない部門。費用だけが集計され、収益は集計されない部門のことを指します。
より詳しくは、こちらをご参照ください。
プロフィットセンターとコストセンターの業務は連動しているので、お互いの業務を邪魔しないようにIT化を進める必要があります。社内にIT化に明るい人間を用意して臨んだ方が良いと考えられます。
おわりに
IT投資は、政府も施策に掲げている現在ホットなテーマです。今後、ITをいかに活用し、生産性を高めるかが企業の生き残りサバイバルにおいて、重要になることは間違いないと言えるかもしれません。
社内のIT化というテーマについてどうすれば中小企業でも社内のIT化を推進できるかを考えて作られたのが、ALL-INです。
ALL-INは社内の業務に関するすべてのシステムを網羅していてそれらが連動しているので、「このシステムとこのシステムを組み合わせても業務効率が阻害されないか」「複数のシステムを使う為に研修などを開催しなければならない」という風に悩む必要はありません。
ALL-INを導入してマニュアル通りに運用すれば自然と社内の業務全体がITによって効率化できる様にできており、自然と「攻め」のITも社内に取り入れられます。
下記の記事には、日本のIT投資の現状をより詳しく述べられているので合わせてご参考にしてみてください。
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