今回は、多くの事業を回し、新商品を出し続ける、エスキュービズムの薮崎社長に、起業の想い、事業の作り方、生産性向上に関する考え方をお聞きしてきました!
<お話を伺った方>
株式会社エスキュービズム
代表取締役社長 薮崎 敬祐2002年東京大学経済学部卒業、2004年東京大学大学院経済学科修了。
株式会社リクルート入社、新卒および中途採用を中心にした人材サービスのソリューション営業を経て、2006年5月株式会社エスキュービズムを設立。株式会社エスキュービズム Webサイト http://s-cubism.jp/
株式会社エスキュービズムはどんな会社か
―――HPや御社に関する他の記事などを拝見していると、創業以来様々な事業をやってらっしゃいますよね。簡単に今の御社の事業に関して教えて頂けますか?
そうですね、今は「IT」「家電」「中古車流通」の三つに絞っています。どれも単体で100億円を狙える事業です。
IT事業では、小売や流通領域を中心にシステムを提供しています。ECサイトの構築提供したのがきっかけで、そこから現在売り上げシェアがNo.1となっているEC-OrangeというECサイト構築パッケージ、タブレット活用のOrange Operationなどの商品に発展しています。
これらに加え、VRとECを組み合わせた「VRコマース」という領域や、街全体をインバウンドに対応できるようIT化するなどのプロジェクトにも取り組んでいます。
家電領域では、「ルーム家電」というコンセプトの下、テレビ、冷蔵庫、掃除機など様々な製品を開発しています。大手家電メーカーが取り組んでいる高機能・多機能・高価格なリビング向けの家電とは違い、ワンルームや寝室、書斎などの小部屋で使うことを想定して機能を絞りつつお手頃価格で提供しています。1ドア冷蔵庫や19インチのテレビなど人気が高いです。最近では厚さがわずか3.2cmのロボット掃除機を発売したりと順調に売上を伸ばしています。
中古車市場もその市場の大きさに比べて、通販が普及していないので、そこに狙いをつけています。
優秀な人が思いっきり力を発揮する組織
―――どんな思いがあって、この会社を立ち上げたのでしょうか。
大企業には優秀な人が集まりますが、若い内に何かに挑戦できる人というのは少ないです。なぜなら、大企業に入ってしまうと年功序列の下、時間軸が長くなってしまって、若い内は事務仕事に近いようなことをやることになるから。
それで「やる気のある人が思いっきり力を発揮できて、それに報いることの出来る組織」を作ろうと思って、立ち上げたのがこの会社ですね。
しかし、だからといって、“成長”というのを押し付けてはいません。社員一人ひとりの「自分はどうなりたいか」、「どうしたいか」を重視していて、様々な人が共存できるようにしたいと考えています。
―――でもエスキュービズムさんも結構大きい組織ですよね。どのようにそういった組織文化を維持しているのですか?
評価制度などで、貢献度に合わせてきちんと報いていることだと思います。例えば、たとえ若手の営業であっても、成績を残したら、それに応じてきちんと給料や評価などで報います。多くの企業が、評価に上限があって「これ以上成果を上げても特に評価は上がらない」という、非常にできる人からすると、言わば「やったもん負け」のような評価制度です。エスキュービズムはこういう「やったもん負け」がない“公平”な評価になるようにしています。
また一方で、キャリアの描き方にも幅を持たせています。一般的な企業は、現場のプレーヤーからマネージメントになることでしか、給料や役職の面でステップアップは難しいです。しかしエスキュービズムは、評価制度において、マネージメントだから偉いとかではなく、プレーヤーを究めてステップアップしていける道も作っています。
弊社はITや家電などいろいろな事業をやっていて、営業といってもITの営業と家電の営業は違うし、それは開発も同じで、様々な人種がいるという、ある種特殊な企業だからこそかもこういう考え方になったのかもしれないですね。ですが、頑張っている社員は、どこにいても必ず誰かが見つけ出します。そして挑戦してもらえる環境を用意するようにしています。
―――頑張れる人ってどうやって見つけ出しているんでしょうか?またどのように育てているんでしょうか?
成果を出しているかどうかです。どういう成果か、というのはその人のポジションなどにもよりますが、「頑張っている」「できる」という言葉ではなく、きちんと数字や結果を出しているかが重要だと思っています。
注意しなければならないのが、「自分はできる」と思っている人は結構いるんですが、大体自己評価が高いだけで、本当にできる人ってそのうちの数%くらいしかいないんです。だから、採用段階でのエントリーマネジメントも大事ですが、“できる”ひとは仕事でしっかり成果をだすから、見えてきます。そうしたところでも、人事制度を成果主義にすることは重要だと考えています。ただし、何度も言いますがこの成果主義は、頑張った人に正当に報いるためであり、「やったもん負け」にならないためのものです。普通に頑張っている社員はもちろん公平に評価される仕組みにもなっています。
育て方に関してですが、弊社はOJTです。実践を通して学んでもらっています。
―――では社内研修っていうのはあんまりないんですか?
そうですね。研修っていうのは座学であって、本とかから自分で学びとるスキルがある人にとっては逆に非効率なんですよね。本読んだ方が早い。一方、あまり本とかでは紹介されていない、クローズドな情報に関して言えば、研修はとても重要なんですけどね。
あとは、自分でやりながらでないと学べない。降ってくるケースに対応し続けていく中で学んでいくことが重要だと考えています。そういった意味で、MBAでは、いろんな事例をもとにみなさん学んでますよね、それは実践的なケースが一番大事だからです。なので、図書制度を設けたり、書籍購入は会社負担にするなど、学ぶことへのサポートは充実させています。
成長する事業・商品ニーズの見つけ方と選びかた
―――次に、エスキュービズムさんの商品や事業の生み方に関して詳しくお話を聞いていきます。画期的で便利な商品などが次々生まれてますよね、アイデアはどのように生まれているのか教えて頂けますか?
事業は違いますが、商品アイデアはボトムアップです。当然のことなんですけど、現場の社員の方が顧客の声を知っているからです。
お客さんが欲しいと思ったものは全部ビジネスになるんです。そうして、営業など顧客に近い立場の人がニーズを把握したら、そこに技術者の声をかけ合わせます。今の技術で何ができるのか、できないのか、ニーズに対しどんなソリューションが可能なのかといった具合で、アイデアを具体化していきます。
あとは、どれだけそれを欲している人がいるか。そのお客さんが欲しいなって思っている価格で提供できるか、競合はいるかっていうところで絞っていきます。そこから、極力コストをかけずに実験を繰り返し、商品のカタチを決めていきます。
現場の声を聞くっていうのは簡単そうに聞こえますけれど、組織が大きくなると、非常に難しいです。実は会社って、2階層下の役職までしかコミュニケーションがとれないんです。ですからエスキュービズムでは、役員、部長、社員となるべく会社をフラットに保って、現場の声が私まで届くようにしています。
―――たくさんのビジネスアイデアから、どのように事業化へと進めるものを選んでいますか?
市場規模や成長性など基本的なことを除いたら、大きく二つあります。
一つは、「優位性の構築ができるか」です。既存の、もしくは参入してくる他社にまねされない堅固な優位性を構築できなければいけません。その可能性があるかどうかを見ています。
もう一つは、「やりたいかどうか」です。当然のように聞こえるかもしれませんが、これがとても重要です。大体一つの事業を成功までもっていくのに、3年くらいかかることを見越しています。その間、コミットが求められるんです。これは優位性の構築の話にもつながるんですけど、その構築にある程度長い時間をかけなければ、すぐにまねされてしまいます。社員が、会社が本当にやりたいことでなければ、その長さは続けられないんです。
エスキュービズムが考える生産性
―――最後に、ざっくりとした質問ですが、エスキュービズムさんが社内の生産性を上げるために行っていることを教えていただきたいです。
一番大事なことが、「やらないことを決める」っていうことです。これいらないなって思ったらすぐに捨てていく。だから会議とかも「これいらなくない?」ってなって、次からなくなるってことはよくありますね。
「経営者の仕事って何か」となったとき、同じことが言えるんです。やることはたくさんある中で注力しなければいけないものがある。そのためには捨てるものも決める。そういった意思決定ができることが経営者に取って重要な事だと思います。まぁその判断基準というのは数をこなさないと、わからないんですけどね。
―――ではそういった、生産性向上のための文化が隅々まで広がっているんですね
実はそういうことでもないのです。生産性って必ずしも社員全員が意識する必要はないと思っていて。生産性上げることよりも、なぜ上げるかが重要なんだと思います。事業の売上をもっと大きくしたくて、そのためにやらなければいけないことがたくさんある。だから、時間をもっと空けなければいけないから、業務を効率化するんです。
ありがちなのが「人件費削減のためだ」とか言って、従業員に業務効率化を強いるパターンなんですけれど、それは従業員にメリットがないから良くないと思っています。だからエスキュービズムでは生産性向上を押し付けません。
でももちろん、経営者としては生産性を上げてほしいです。そのためには、「より大きな仕事できる」や「給料が上がる」などのメリットが必要で、社員がそうした目的を達成しようと頑張った結果、いつの間にか生産性が上がっている、ということが大事ではないでしょうか。
なにかしら目標を持ってやりきれる人は、そうやって生産性向上につながっていきます。ただ本当にやりきれる人ってなかなか少ないんですけどね。最初の話に戻りますが、そういった人材が思いっきり頑張れる環境を作っていきたいですね。
―――薮崎社長、本日はどうもありがとうございました!
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