経営コラム

「伝わる」コトバのつくりかた

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“「伝える」と「伝わる」は違います。

こちらがいくら正しく伝えたつもりでも、
相手の頭の中で同じ要素と構造が再現されていない限り、
何も伝えていないのと同じことです。”

 ─ 畑村洋太郎

「伝える」ことと「伝わる」ことは、全く別のこと。

人前で話す機会や、人に「伝える」機会が増えるほど
実感させられることです。

ただ、改めて「その違いは何か?」と聞かれると、
はっきりした答えが頭に浮かばない方も居られるのではないでしょうか。

僕は「伝える」と「伝わる」の一番の違いは、
「関わる人数」だと考えています。

◯伝える・・・言葉を発信すること
(1人で完結する)

◯伝わる・・・発信した言葉を相手が受け取って「行動」が起こる
(2人以上が関わる)

僕たちにとって、この2つのどちらが大事かといえば、
もちろん「伝わる」ことです。

マネジメントにおいても、マーケティングにおいても、
営業においても、何らかの「行動」が起こらなければ、
それは伝えていないのと同じです。

でも、ついつい私たちは、ただ「伝える」ことだけをして、
「行動が起こらない」ことを嘆いてしまいます。

「伝わる」コトバって難しいですよね。

だからこそ、今回は「伝わるコトバ」はどうやって生み出せば良いのか?
ということを、考えていきたいと思います。

「伝わる」ためには、何が必要?

ただ「伝える」だけでなく、「伝わる」コトバをつくるために
まず大切なのは、次の2つの違いを意識することです。

◯伝える・・・「自分」の問題

◯伝わる・・・「相手」の問題

「伝える」という行動は、自分自身がするものなので、
全てを自分でコントロールすることができます。

一方で「伝わる」かどうかを決めるのは常に「相手」です。

自分が「正しい」と思う表現、「良い」と思う表現が、
相手にとっても「正しい」「良い」とは限りません。

それを判断するのは、常に「相手」なのです。

例えば、あなたが「プリン」が大好きで、
その素晴らしさを相手に語っていたとします。

あなたがどんなにその素晴らしさを語ったとしても、
相手が「卵アレルギー」だったなら、
絶対に「食べる」という「行動」が起こることはありません。

相手にとっては、そのプリンは「ただの毒」だからです。

自分にとっての常識や、自分の感覚、感性だけを頼りにすると、
相手に動いてもらうのは難しくなってしまいます。

大切なのは「相手が見ている世界が常に正しい」ということを意識して、
「行動」してもらえる表現を考えることです。

それでは、相手に「行動」してもらえるコトバをつくるには、
いったい何を考えれば良いのでしょうか?

「伝わるコトバ」をつくる3ステップ

「伝わる」コトバをつくるためには、次の3ステップに沿って、
表現を考えることがオススメです。

1.自分が「伝えたいこと」を明確にする
2.伝えることで引き出したい「行動」を明確にする
3.相手が「行動」してくれるコトバを考える

例えば、小さな子どもと一緒に美術館に来ているとして、
大きな声で騒ぐ子どもを静かにさせるとします。

あなたなら、どんなコトバをかけますか?

「静かにしなさい!」

このコトバは、「伝わらない」表現です。

このコトバを伝えても、子どもは駄々をこねるか、
さらに大きな声で騒ぐことでしょう。

効果的なコトバとしては、例えばこちら。

「声を出さずに絵を見るゲームをしよう。
全部の絵に合計何色の色が使われてるかわかった方の勝ちだ!」

きっと子どもは、夢中で絵を見始めることでしょう。

今回は「子ども」に対しての例を紹介しましたが、
相手が「大人」でも「部下」でも「法人」でも、考え方は一緒です。

「何を言うか」ではなく「どんな行動が起こるか」が重要なのです。

この3ステップの中で特に難しいのが、
「3.相手が「行動」してくれるコトバを考える」
という部分だと思います。

この部分を鍛えるためには、
次の2つのエクササイズがオススメです。

コトバづくりのエクササイズ

「行動」を引き起こす表現を考えるためには、
日頃から次の2つを意識することがオススメです。

1.子どもに伝わるコトバしか使わない
2.「人」のデータベースをつくる

それぞれを少し詳しく見ていきましょう。

1.子どもに伝わるコトバしか使わない

コトバが相手に「伝わる」までには、
次の5つのステップが必要です。

① 自分がコトバをつくる
② 自分がコトバを発信する
③ 相手がコトバを聞く(読む)
④ 相手がコトバを理解する
⑤ 相手が行動を起こす

つまり、いくら相手にコトバが届いても
「理解」してもらえなければ、その先は無いのです。

そういった意味で「伝える」という作業は
「神経衰弱ゲーム」に似ています。

自分が発信したコトバが、相手の頭の中にあって、
それが一致しない限りは理解してもらえないのです。

だからこそ、私たちは「なるべく簡単なコトバ」を
使うことを心がける必要があります。

難しいことを難しく伝えることは、誰にでもできること。

難しいことを、子どもでもわかるように説明できる人が、
「大人」でも「部下」でも「法人」でも、
「人」を動かすことができるのです。

2.「人」のデータベースをつくる

何を伝えれば「相手」が動くのか?を知るためには、
「人」を観察する必要があります。

もちろん、完全に理解することはできません。

ただ、何人もの「行動パターン」を自分の中に
積み重ねていくことで、動いてもらえる確立を高めることができます。

そのためにオススメなのが
自分の「半径1メートル」を観察すること。

この範囲をよくよく観察するだけでも、
たくさんの情報を蓄積することができます。

・自分自身の頭の中
・社内のやりとり
・カフェ・飲食店での周りの人の会話
・街を歩く人の様子
・店舗でのお客さんの振る舞いと接客

などなど・・・

まずは一番身近な「自分自身」を観察するだけでも
「人」についての理解を深めることができます。

・何を言われたときに、嬉しくて、傷ついたのか。
・モノを買うときに、心の中はどう動いているか。
・なぜ好きなのか?なぜ嫌いなのか?

などなど・・・

その他にも、社内のやりとりや、それぞれのメンバーの
行動を注意して見ているだけでも、

どんな場面で、どんなことを伝えると、何が起きるのか?
という情報を知ることができます。

こういった情報を自分の頭の中にどんどん蓄積して、
「コトバ」を考えるときに思い出すのです。

伝えたい相手に近い人、近い場面のデータがあれば、
「行動」に繋がるコトバが、つくりやすくなります。

「そもそも伝わらない」という大前提に立つ

「伝わる」コトバを考えることに必要なことは、
「そもそも伝わらない」という大前提に立つことだと僕は考えています。

そもそも伝わらないんだから、伝わる上で
邪魔になるものを、なるべく取り除く。

簡単なコトバを使い、相手の世界観で理解しやすいコトバを意識する。

そうやって意識していても、自分が想像するよりも
“はるかに”少ししか伝わらないんですから、嫌になっちゃいますよね(笑)

でも、やっぱり、そうやって
「人」を想い、「人」のことを考えること以外には
道はないのだと思います。

何で人間は「コトバ」でコミュニケーションを取るのだろう?

「伝える」ことに悩んだときに、
そんなことを、ぼんやりと考えたりします。

ほんとのところは理由なんて無いのかもしれませんが(笑)
僕は、こう考えています。

「伝わってしまうと、イノベーションが起こらないから」

意思とか、考えが全て正確に伝わってしまうと、
みんなの発想が同じになっていってしまうんじゃないかと思うんです。

自分が伝えたことと、相手が受け取るものがイコールじゃないからこそ、
そこで考えが「飛躍」する可能性がある。

だからこそ、「人」は不自由な「コトバ」を使い続けるし、
進化をし続けているんじゃないかと思います。

ぼんやりとそんなことを考えて、

だから「伝わる」ための努力をもっとしなくっちゃ!

と、自分を励ますのです。

 

※この記事は、「Entre Magazine」のバックナンバーから抜粋しています。Entere Magazineの登録はこちらからどうぞ。

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目次

  1. はじめに
  2. 数千社の経営を見てきた専門家が考える「経営が上手くいかない最大の原因」
  3. 優秀な経営者は気づくけど、なかなか実行できない10のこと
  4. あなたの会社の生産性が上がらない2つの理由
  5. システムを導入すべき理由と7つのチェックポイント
  6. おわりに

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