組織化, 経営コラム

能力を引き出すためにマネジャーが考えるべき、たった1つのこと

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ノコギリと人材育成

最近は人材の育成について考えることが多いので、
何をするにしても、何を考えるにしても、
人材育成と結びつけて考えてしまいます。

そうやって「何かひとつのこと」に思いを馳せながら
様々な思考や体験をしていると、

千に一つくらいの確立で、
自分の考えていることをピタリと説明する
モデルに出会うことがあります。

今回ご紹介するモデルも、そんなものの一つ。
それは、森の中に居るときに出会ったものでした。

自然の中で過ごす時間は、
いつも僕に、たくさんの気づきを与えてくれます。

そのとき僕は、燃料用の薪をつくるため、
丸太をノコギリで切っていました。

何本も何本も丸太を切りながら、ずっと僕が考えていたのは
「どうやったら最も効率よく切れるんだろう?」ということ。

様々な方法を試していくうちに、
僕は「1つの答え」にたどり着きました。

それは
「ノコギリの仕事を邪魔しない」ということ。

何か特別なことをするのではなく、
「邪魔をしない」ということを考えたとき、
最も効率よく丸太を切ることができるのです。

そのことに気づいたとき、
僕の頭にもうひとつのひらめきが起こりました。

「それって、人材の育成と同じだ!」

今回は「丸太とノコギリ」が教えてくれた、
「人材の能力を引き出す方法」について考えていきます。

最も効率よく丸太を切るためには?

まずは
「なぜ“邪魔をしないとき”に最も効率よく切れるのか?」
ということについて考えてみましょう。

「ノコギリ」というものは元々、
「木を切る能力」を持っています。

つまり、その「持っている能力」を発揮してもらえば、
自然と木は切れるはずなのです。

逆に「木がうまく切れない」というときには
「ノコギリの仕事を邪魔してしまっている」可能性が高い。

例えば、次のような「邪魔」が考えられます。

□「引く」ときに切れるノコギリを「押して」切ろうとしている
□ 切り口の左右にある丸太の断面が
ノコギリを挟んでしまい、摩擦が生まれている
□ 断面に対して「斜め」にノコギリを引いてしまっている

こういった「ノコギリの仕事を邪魔する要素」を取り除いていくと、
ノコギリは本来の能力を発揮するようになります。

つまり、次のようにノコギリを使うのです。

□「引く」ときにだけ力を入れる
□ 切り進めても丸太の断面がノコギリを挟まないような置き方をする
□ 断面に対してまっすぐにノコギリを引く

こうやって「邪魔を取り除く」だけで、
力を入れなくても、驚くほど簡単に丸太を切ることができます。

そして、この「ノコギリの特性」は、
そのまま「人材の育成」にも当てはめることができるのです。

「丸太を切るように」人材の育成を考える

人材の育成についても、ノコギリで丸太を切るときと、
全く同じ考え方が当てはまります。

まず重要なのが
「メンバーは誰でも“そもそも能力を持っている”」
と考えることです。

これは、どんなメンバーと仕事をするときでも同じですが、
特に「優秀な人材」と一緒に仕事をする場合であればあるほど重要となります。

そして、その上で「成果が出ない」という場合には
「メンバーの仕事を邪魔する“何か”があるはずだ」と考えるのです。

そうやって考えていくと、マネジャーの役割とは
「邪魔するもの」をなるべく取り除いて、
メンバーが能力を発揮できるようにしていくことだとわかります。

具体的に「メンバーの仕事を邪魔するもの」として考えられるのは、
次のようなものです。

[1]「ずっと続いてきた」という理由だけで制度や仕組みを当てはめている

「これまでずっとそうだったから」「それが伝統だから」という理由だけで
強制される制度や仕組みというものがあります。

この制度や仕組みが「今のメンバー」に「合っていない」場合、
メンバーの仕事を邪魔してしまうことがあります。

これは、丸太を切る例で言えば
「引く」ときに切れるノコギリを「押して」切ろうとしている状態です。

制度や仕組みというものは本来、
「メンバーの仕事を助ける」ために存在するもの。

それが「制度や仕組みありき」になってしまっては本末転倒です。

昔から続いている制度や仕組みは、
今のメンバーの仕事を邪魔していないか?

確認をしてみてください。

[2]仕事を「進める」ことを「妨げて」しまう

複雑な人間関係や、上司への報告、コミュニケーション不全など、
仕事のアウトプットとは関係の無いところで「摩擦」が生じていることがあります。

これは、先ほどの木を切る例で言えば、
「丸太の断面がノコギリを挟んでしまい、摩擦が生じている」状態。

こういった「個人が能力を発揮することを妨げているもの」を、
なるべく取り除き、摩擦の少ない環境をつくるのが、
マネジャーの役割です。

[3]能力を活かせない場所に配置している/やり方を強制する

「メンバーは誰でも、そもそも能力を持っている」と考えますが、
その能力を「活かせる場所にいるか?」というのは、また別の問題です。

例えば、ノコギリを「船を漕ぐ」ことに使っても、
ある程度の成果は出ますが「最良の結果」は出せないでしょう。

そのような配置では、
メンバーが能力を発揮する機会そのものが訪れません。

それは「配置」の時点で、そもそも間違っているのです。

成果が出ないという場合には、
「能力を発揮できる場所に居るか?」ということも確認をしてみてください。

また、マネジャーが「自分のやり方」をメンバーにも強制することもあります。

その「やり方」がメンバーの能力や特性に合っていない場合、
それがメンバーの仕事を邪魔してしまうことがあります。

これは、先ほどの木を切る例で言えば、
「ノコギリを斜めに引いている」状態。

仕事を実行するのは、あくまでメンバーです。

「仕事のやり方」についても、
それぞれのメンバーの仕事を邪魔しない方法を考えていきましょう。

この「3つの例」以外にも、メンバーの仕事を邪魔するものには
会社や現場によって、様々な種類があります。

ぜひ「邪魔するものを取り除く」という視点で、
仕組みづくり、環境づくりを考えてみてください。

そして、実はもうひとつ「重要なポイント」を考えると、
さらに効果的な仕組みづくり、環境づくりを実践することができるのです。

仕事をするのは“あくまでメンバー”

マネジャーはついつい
「もっと仕事をさせるには?」と考えてしまいます。

しかし仕事というものは本来、
「メンバーが自発的に行う」ものなのです。

メンバーには能力があり、
「その能力を発揮したい」と誰もが思っています。

「木を切る」という仕事についても、
実際に木を切るのは人間ではなく「ノコギリの刃」なのです。

ですからマネジャーの仕事は「そもそも能力を持っている」メンバーが、
「なるべく邪魔されずに能力を発揮できる」ように「場作り」をすること。

あくまで、実際に仕事をするのはメンバーです。

マネジャーの仕事は、
メンバーを「操作」したり、「脅したり」することではありません。

能力を発揮するための「場作り」と「手伝い」をすることなのです。
具体的な「場作り」としては、例えば次のようなものが考えられます。

□「今のメンバー」の仕事を邪魔しない「制度や仕組み」をつくる
□ 様々な「摩擦」を取り除く
□ 相手が能力を発揮できるように「やり方」を考え、手助けをする

そうやって「場作り」をした上で、
メンバー自身に能力を発揮してもらう。

困っていることや、壁にぶつかっているのであれば、
それを乗り越えるための「手助け」をする。

もちろん実現するのは簡単なことではありませんが、
そうやって考えていくことが結局は、

メンバー全員がイキイキと仕事をしながら、
最大限に成果を上げる組織をつくっていくのだと思います。

本日はぜひ「仕事を邪魔しているものを取り除く」という視点で、
人材の育成について考えてみてください。

 

※この記事は、「Entre Magazine」のバックナンバーから抜粋しています。Entere Magazineの登録はこちらからどうぞ。

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