経営コラム

“現実”が、いつも正しい

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 “まず確かな事実を手元に集めることだ。
  公平な目にありとあらゆる事実を集めないうちは、
  問題に手も触れないことにしよう。”

             ─ デール・カーネギー

経営活動は「不確実性」に立ち向かう活動です。

だからこそ、集められる限りの「事実」を手元に集め、
会社の現実を正確に把握した上での意思決定が求められます。

しかし、この「現実を把握する」というのが
一筋縄にはいかない作業。

何か形があるものであれば、
目で見れば「現実」がわかります。
しかし、経営という活動は形のないものです。

経営者は様々な「人」からもたらされる「情報」を集め、
それを元に現実を「推定する」しかありません。

今回は「現実」を把握することを助ける
5つのコツを、お伝えします。

1. 鷹と獲物の「最短距離」

突然ですが、あなたは鷹(タカ)がどうやって
獲物を捕らえるか知っていますか?

鷹は鳥類最強の種。

大空を飛び回り、獲物を見つけると
急降下して、獲物を仕留めます。

飛行の最高速度は、なんと約300km。

鋭い爪で、捉えた獲物は決して離しません。

今回、注目したいのは、
この「急降下」する場面。

鷹はいったい、どのような軌道を描いて、
獲物に飛びかかるのでしょうか?

このような問いを投げかけると
おそらく、多くの方が「直線的」なアプローチを
想像するのではないかと思います。

獲物を逃さず、確実に仕留めるためには、
「最短距離」を進むのが、最も確率が高そうですよね。

実は、多くの生物学の研究者も、
同じように考えていました。

しかし、実際の鷹の動きは違っています。

鷹は獲物へと急降下するとき、
直線軌道ではなく「らせん軌道」を描くのです。

この事実は、多くの人の想定とは異なります。

そしてこのとき、
人によって2種類の反応が生まれるのです。

 <想定と事実が違うときの、2つの反応>

 1.鷹は効率の悪い狩りをしているんだな。
   直線的に行けば、もっと効率が良いのに。

 2.鷹がそういう軌道を描くのには、何か理由があるに違いない。
   自分の仮説が、何か違っているのだな。

では、実際にどちらの飛び方が効率が良いのかと言うと、
やはり、鷹が実際に行っている「らせん軌道」の方。

実は、特殊な「らせん軌道」を描くと、
超高速で移動していても「獲物と目の角度」が一定となります。

そうすることで、獲物を視界から逃すことなく、
近づくことができるのです。

自分の想定が、現実と違っていたとき、
「現実の方がおかしい」と思ってしまうことがあります。

しかし、これは極めて危険なこと。

絶対に、いつでも「現実が正しい」のです。

2.五種類の「事実」

「事実」を把握することは、組織が大きくなるにつれて、
そして役職が上がるにつれて、どんどん難しくなっていきます。

情報は人を介する回数が増えるたび、
途中の段階で内容が削ぎ落とされていきます。

その結果、頂上にいる人間には
概略しか届かなくなるのです。

それに加えて厄介なことに、
会社の中で「事実」と言われるものにも、
様々な種類のものがあります。

例えば、次の5つです。

 <5種類の事実>

 1.揺るぎない事実
 2.一件すると事実に見えること
 3.社内の人間に事実と見なされていること
 4.事実として報告されたこと
 5.願わくは事実であって欲しいという願望

この中で現実を把握するために必要なものは

  「1.揺るぎない事実」のみです。

それ以外の「2~4」は「事実に見えるもの」であって、
事実ではありません。

そして、この5種類の事実の中から、
「揺るぎない事実」をいかに嗅ぎ分けるかが、
経営者には求められるのです。

そのために必要なことは、
常に「報告に一歩踏み込むこと」です。

一見すると問題なさそうなことであっても、
「何でそうなる?」「本当にそうなのか?」と

もう一歩、踏み込んで質問をしていく。

そういった姿勢を断固として貫かない限り、
自分の周りは「事実に見えるもの」で溢れ返ってしまうのです。

3.数字は嘘をつく

事実を把握するために効果的な方法として、
「数字で把握する」というものがあります。

昔から「数字は嘘をつかない」と言われる通り、
数字で把握することは、経営において欠かせないことです。

しかし「数字は嘘をつかない」ということには、
気をつけなければならない側面もあります。

数字の1つひとつは、確かに嘘をつきません。

明確な「事実」を表現しています。

問題になるのは、
その数字が「足し引きされた時」です。

どのような経緯と計算によって、
その数字ができあがっているのか。

数字の「向こう側」を見通す姿勢が、
経営者には求められます。
例えば、以下の売上が出ている事業は順調でしょうか?

 <この事業は順調か?>

  5月[売上]:1000万円
  6月[売上]:1050万円
  7月[売上]:1100万円
  8月[売上]:1200万円
  9月[売上]:1250万円

一見すると、事業は順調に伸びているように見えます。

しかし実は、この事業の数字を分析すると、
以下のようになっていたら、どうでしょう。

 <売上を「ストック」と「フロー」に分ける>

 5月[売上]:ストック:700万円 + フロー:300万円
 6月[売上]:ストック:750万円 + フロー:300万円
 7月[売上]:ストック:800万円 + フロー:300万円
 8月[売上]:ストック:850万円 + フロー:350万円
 9月[売上]:ストック:750万円 + フロー:500万円

実は9月の売上は、大口の解約によって
ストック売上を大きく減らしています。

その分の売上減を回収するために
営業マンが一時的な売上確保に奔走。

結果として、通常の月よりも
大きなフロー売上が立ったにすぎなかったのです。

この場合、事業には
何か大きな課題が発生している可能性が高いもの。

しかし「数字は嘘をつかない」ということを疑わず、
そのまま受け取ってしまうと、このようなことが起こりえるのです。

数字は「その裏側」を覗き込み、構造を把握して
はじめて意味を成します。

4.「結果」は「原因」を生まない

「原因」と「結果」についても、
気をつけなければならないことがあります。

「原因と結果の法則」と言われるように、
どんな物事でも必ず「原因」があって「結果」が生まれます。

「結果」が生まれたとき、この「原因」を正確に特定することが
経営者には求められます。

しかしこれも「現実がいつも正しい」ということを
心に留めていないと、間違いを犯してしまうことがあるのです。

例えば、とある「BtoB商材」の営業チームの成績を
様々な面から数値分析したとします。

 ※コピー機のリース販売のように、何度も顧客訪問をして、
  成約と解約防止の両方が必要な業種だと考えてください

その結果、以下のような結果が出ました。

 <営業マンの成績を分析した結果>

 ・成績の良い営業マンは「顧客への訪問回数」が多い
 ・成績の悪い営業マンは「顧客への訪問回数」が少ない

この結果を見て、
あなたは営業チームにどのような指示を出しますか?

おそらく「顧客への訪問回数を増やせ」と
指示を出すのではないかと思います。

実際に、この結果を見た経営者は、
顧客への訪問回数を増やす」という施策を打ちました。

具体的には「訪問回数のノルマ」を厳しく課し、
強制的に顧客訪問が生まれるようにしたのです。

その結果、どうなったでしょうか。
実は、結果は意外なものとなりました。

<営業マンに訪問ノルマを課した結果>

 ・成績の良い営業マンの売上は「変わらなかった」
 ・成績の悪い営業マンの売上は「減少した」

このとき、多くの人が「現実を否定」してしまいます。

 ・営業マンのモチベーションが下がったんじゃないか?
 ・営業の仕方に課題があるんじゃないか?
 ・今月は、たまたま成果が出なかっただけだろう

しかし、現実は違います。

厳しい訪問ノルマを達成するために、
営業マンは「近場の顧客」を訪れるしかなくなっていたのです。

遠方のお客さまを訪問していては数値を達成できないため、
見込みの有無に関わらず、とにかく訪問数を増やしていました。

結果として「営業すべき会社」を営業できていなかったのです。

つまり、この場合の「訪問回数が多い」というのは、
成績が良い営業マンの「結果」だったということ。

成績を上げるための「原因」ではなかったのです。

 「うまくいった人がやっていること」を、他の人で強化しても、
それが「うまくいく」とは限らないのです。

5.「良い知らせ」はいらない

私たちは、意識をしていないと
「良い知らせを伝える人」を周りに置くようになってしまいます。

人には「連想の罠」というものがあり、
「悪い知らせをする人」を「悪い人」とみなす傾向があるのです。

しかし、これは極めて危険なこと。
自分の元に「悪い知らせ」が届かなくなれば、
経営の「危機」を把握するのが、遅れてしまいます。

投資の神様と言われるウォーレン・バフェットも、
自分の会社の人間には、以下のように指導しているそうです。

「いい知らせはいらない。
  悪い知らせだけを、しかも単刀直入に報告すること。」

悪い知らせがいち早く経営者の元に届けば、
致命傷になる前に対処することができます。

95%の悪い知らせに、いち早く対応すれば、
それは未然に処理できる可能性が高いもの。

そうすれば残り5%の致命的な問題(悪い知らせ)にも、
エネルギーを投下して対処することができます。

悪い知らせこそ、いち早く自分の元に届く

仕組みをつくる必要があるのです。
そのためには、次の2つを心がけることが大切です。

<悪い知らせを最速で受けとるための2つのコツ>

 1.悪い知らせこそ、早く知らせて欲しいと、
   日ごろからメンバーに伝える

 2.悪い知らせを届けたメンバーに感謝する
  (絶対に責めない・評価を下げない)

メンバーが悪い知らせを届けに来ないのは、
自分の評価が下がったり、責められたりすることを恐れるから。

だからこそ、その部分をオープンにして、
「早く発見して、みんなで解決していこう」という
雰囲気と文化を、社内につくる必要があるのです。

 「現実」を把握することは、経営者やマネジャーにとって、
永遠のテーマの1つだと思います。

重要なポイントは「常に自分を疑い」、
「常に一歩、情報に踏み込む」こと。

今回お伝えした5つのポイントが
日々の経営に少しでもお役に立てば幸いです。

※この記事は、「Entre Magazine」のバックナンバーから抜粋しています。Entere Magazineの登録はこちらからどうぞ。(http://www.entrepreneur-ac.jp/mail/entre-magazine/)

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