経営コラム

あの人が次々とアイデアを発想できる理由

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 “ 君は見ているだけで、観察していないんだ。
   見ることと観察することとは、まるっきり違うんだよ。”

              ─ シャーロック・ホームズ ─

アイデアや発想に優れた人と話をしていると、
湧き水のように、次々とアイデアが溢れ出してくるように見えます。

なぜ、彼らは次々とアイデアを生み出すことができるのでしょうか。

いろいろな方とお話をしていると、
そこには1つの共通点が見えてきます。

今回はそんな「アイデア発想の源泉」について、
3つの切り口からお伝えしていきます。

【アイデア発想の源泉をつくる、3つの切り口】

1.  アイデアとは何か?
  2.「見ること」と「観察すること」は違う
  3.  5つの「小箱」をつくる
    3-1.「構造」はどうなっているか
    3-2.  どこで「儲けて」いるのか
    3-3.  決めるまでの「心の動き」
    3-4.  その「理由(わけ)」
    3-5.「言っていない」ことを考える

【1】  アイデアとは何か?

そもそも「アイデアとは何か?」というと、
それは「組み合わせ」です。

「アイデア発想法のバイブル」と言われる『アイデアのつくりかた』の
著者、ジェームズ・W・ヤングは、こんな言葉を残しています。

「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない。」

イメージとしては、次のような感じです。

1.頭の中に「箱」があって、そこに自分の記憶が入っている
2.その中から、いくつかを組み合わせるとアイデアができる

この「箱の中身」は、自動的には増えません。
自分自身で意識して、増やしていく必要があります。

シャーロック・ホームズの言葉を借りれば
「観察すること」が必要なのです。

いったい、どういうことでしょうか?

【2】「見ること」と「観察すること」は違う

シャーロック・ホームズは、いわずと知れた名探偵です。

彼は、あるお話の中で、助手のワトスンに
こんな言葉を伝えます。

「君は見ているだけで、観察していないんだ。
見ることと観察することとは、まるっきり違うんだよ。」

なぜ、この言葉にたどり着くのかというと、
この前に、2人の間でこんなやり取りがありました。

ホームズが、自宅2階のいつものスペースで
ワトスンと話しているとき、こんなことを訪ねます。

「ワトスン君。
玄関を入ってから、この部屋に来るまでに階段があるだろう。
その階段は、何段ある?」

ワトスンはホームズと一緒に暮らしているので、
何百回とその階段を見たり、上ったりしています。

それにも関わらず、ワトスンには階段の段数がわかりません。

そこで、先ほどの言葉を伝えることになるのです。

「君は見ているだけで、観察していないんだ。
見ることと観察することとは、まるっきり違うんだよ。

僕は“17段ある”と、ちゃんと知っている。
それは僕がこの眼で見て、そして心で見ているからだ。」

これと同じことが、頭の中の「箱」でも起こります。

「見ること」と「観察すること」が違うように、
「体験すること」と「認識すること」もまた、違うのです。

どんなに貴重な経験をしても、
どんなに貴重な情報を目にしても、
そこから何かを取り出さなければ「箱の中身」は増えません。

それはつまり「何を体験するか」「どんな情報を見るか」よりも
「何を認識するか」が重要だということ。

じゃあ「箱の中身」は増やせば増やすほどいいのかというと、
そんなこともありません。

闇雲に増やすことも考えものなのです。

【3】  5つの「小箱」をつくる

様々なものを手当たり次第に記憶していくと、
頭の中の「箱」には、雑多なものが増えていきます。

つまり、「箱の中身」が散らかってしまうのです。

そうするとアイデアを考えるときに「不要な組み合わせ」を
つくりやすくなってしまいます。

では、アイデア発想に優れた人はどうしているのかというと
この「箱の中身」を、「整理しながら」「増やして」いるのです。

だから彼らは
「良い組み合わせ」を「連続して」出すことができます。

「わかってるけど、それが難しいんだよ・・・。」

そんな声が聞こえてきそうです。

でも実は、「整理しながら」「増やす」という
この2つを同時に実現する、簡単な方法があるのです。

それは、頭の中に名前のついた「小箱」をつくって、
いつも「その箱に入るものはないか?」を探すというもの。

そうすれば、箱の中身は増えやすく、
それいて、散らかりづらくなります。

ポイントは「どんな小箱をつくるのか」ということ。

今回は、その「小箱のつくりかた」について、
5つの切り口をご紹介していきます。

次の5つのラベルがついた「小箱」を頭の中につくって、
そこに情報を集めていってみてください。

それだけで、ビジネスにおけるアイデアが
考えやすくなるはずです^^

<頭の中につくる、5つの「小箱」>

3-1.「構造」はどうなっているか
3-2.  どこで「儲けて」いるのか
3-3.  決めるまでの「心の動き」
3-4.  その「理由(わけ)」
3-5.「言っていない」ことを考える

 

[3-1]「構造」はどうなっているか

私たちは仕事だけをして生きているわけではないので、
もちろん、仕事以外でも、様々な経験をします。

でも「ビジネスの体験」と「プライベートの体験」を
分けて考えてしまう方が多いのではないでしょうか。

でもそれは、もったいない。

「ビジネスから遠い体験」ほど、
ビジネスアイデアを考えるときには「良い材料」になるのです。

ただ、体験をそのまま記憶しても、あまり使い勝手がよくありません。
大事なのが「構造を考える」こと。

「構造」まで抽象化して記憶しておくと、
どんな体験でも、アイデア発想の助けになってくれます。

例えば、こんな場面を想像してみてください。

友人5名と山登りに来ています。

山登りには慣れていないメンバーばかりで、
急な斜面に悪戦苦闘。

いつまで経っても頂上にたどり着きません。

道のりも思った以上に険しく、
メンバーの口数は、だんだんと減っていきます。

もはや言葉を発するメンバーは1人もなく、
下ばかり向いて、トボトボと足を進めていくだけ。

そんなとき、一人が前を指差して、こう言います。

「見ろ!頂上だ!もう少しだぞ!!」

すると、それまで暗い顔をしていた
他のメンバーも元気に!

足取りも軽く、一気に頂上までたどりつきました。

これを、そのまま記憶しても、
さほどアイデア発想の力にはなりません。

しかし「抽象化」して「構造」を見ると、
新しいものが見えてきます。

「構造」を見るとは、例えば、次のような感じです。

【山登りの「構造」を考える】
・しんどいことが続くと、人は下を向き、暗くなる
・しかし、ゴールが見えると、人は一気に活気づく

例えば、このように抽象化しておくと、
「ミッションの効果」を考えるときや、

事業部の目標を設定するとき、
成績不振が続くメンバーを励ますときなどに役立ちます。

何かを体験したら、それを抽象化して、
構造を考えてみてください。

[3-2]  どこで「儲けて」いるのか

自分がお客さんとして、商品やサービスを購入する際には、
「どこで儲けているのか」を考えることがオススメです。

例えば飲食店であれば、
必ずメニューごとに原価率のバラつきがあります。

そして、様々なメニューの組み合わせで、
総合的な利益を確保しているのです。

そして、繁盛しているお店であればあるほど、
原価が高めのものを目玉にして人を惹きつけつつ、
原価が低めのものを上手にお客さんに勧めています。

飲食店に行ったら
「ここのお店は、どこで損して、どこで儲けているのか?」を
常に考えるようにすると、利益モデルを考えるための
良いトレーニングになります。

また、一見するとビジネスが成り立たないような
商品やサービスというものも、世の中には存在します。

しかし、その事業が長く続いているのであれば、
それはどこかに収益源があるということ。

そういった場合にも「じゃあ、どこで儲けているのか?」を
考えることは、とても良いトレーニングになります。

お客さんが、ほとんど対価を支払わないサービスなどに出会ったときは、
「どこで儲けているのか?」と考える癖をつけましょう。

[3-3]  決めるまでの「心の動き」

営業においても、マーケティングにおいても、
重要なのは「顧客の心を動かす」こと。

そのためには「いつ、心が動くのか?」という
パターンを、とにかくたくさん知ることが大事です。

でも、他人の心が「どう動いているのか?」は、
想像する以外に、知るすべはありません。

そして、その想像は全くアテにならない場合が多いものです。

だからこそ、最も信用できる
「自分の心の動き」に注意を払いましょう。

経営者や営業マンであっても、
必ずどこかの場面で「お客さん」になる瞬間があるはず。

そのときに
「どういう言葉が、自分のどういう反応を引き出したか?」を
観察していくのです。

例えば、コンビニやスーパーで買い物をするときに、
AとBという、2つの商品で迷ったとします。

最終的にBに決めたとすると、
それを選んだのには、必ず理由があります。

・Aは値段に比べて「量が少なく」見えた
・Bの「この表現」が良さそうに見えた
・パッケージの写真に惹かれた などなど・・・

そういった「自分の心の動き」を、
データとして蓄積していくのです。

そのデータは、最も信用できる生のデータ。

少なくとも、自分と考え方の近い人は、
同じような反応を示す可能性が高いです。

そして、そうやってデータベースが増えていくと、
他人の反応も予測がしやすくなっていきます。

[3-4]  その「理由(わけ)」

僕は「流行りものは、なるべく早いタイミングで体験すべき」だと
思っています。

急激な流行ほど、短期間で終わっていきますが、
それでもそこには「時代の流れ」が反映されていることが多いもの。

だから、なるべく体験する。
体験できないとしても常に「注目」します。

・世の中の人が、どんな意見を言っているのか?
・街なかの人は、どうやって使っているのか?
・どんなマーケティングをしているのか?

そんなことを、なるべく考えるようにしています。

そして、そういった「流行」のことを考えるときには、
ただ体験したり、ただ眺めいるのではもったいない。

それが流行っている「理由」に目を向けて、
「なぜ?」を問うことが大事です。

例えばスターバックスが店舗数を増やしてきたら
「なぜ、流行ったんだろう?」と考えてみます。

そうすると、そこには様々な理由が見えてくるもの。

・低価格のコーヒーチェーンが浸透して下地をつくった
・新しいものが定着すると、高価格帯が次に流行る傾向がある
・「トップモデルが愛用している」などのイメージを打ち出した
などなど・・・

「時代背景」「テクノロジー」「競合のバランス」「世の中の流れ」などの
切り口から見ていくと、様々なものが見えてきます。

[3-5]「言っていない」ことを考える

商品でも、広告でも、
表現している内容は、必ず「一部」です。

そこには「言っていること」と「言っていないこと」が必ず存します。
そして「言っていないこと」の方が気づくのが難しい。

だからこそ、普段から情報に触れる度に
「言っていないことは何だろう?」と考える癖をつけておくと、
情報の見え方が変わってきます。

例えば、食器用洗剤のことを考えてみましょう。
CMでは、だいたい次のような文句が使われます。

【言っていること】
・油汚れが簡単にスッキリ!
・水をキレイに弾く!
・シンクの菌まで除菌!

CMや商品のコピーライティングでは、
基本的には「嘘」は使えません。

深刻なクレームに繋がる可能性があるからです。
(※悪徳な業者の場合は、もちろん嘘をつくこともあります。)

ただし、「言っていること」が正しくても、
伝わる「意味」は、必ずしも正しくないことが多いもの。

例えば、先ほどの洗剤のCMでは、
次のような「言っていないこと」ことが考えられます。

【言っていないこと】
・ひどい油汚れを洗わない限り、洗剤は使わなくても不便しない
・水をキレイに弾くということは、洗剤成分の一部が残っている
・シンクの菌は、健康に影響しないものも多い

事実、我が家ではよっぽどの油汚れでない限り洗剤を使いませんが、
体の調子は全くおかしくなりません。

洗剤が登場する前の時代は、食べた後の茶碗に
お茶を少し入れて、漬物でこすって洗ったりしたのですから、
食器を洗うのには「水+こする」でも十分に事足りることがわかります。

洗剤は、あくまで「油よごれを落とす」ものであって、
「食器を洗う」ために必ずしも必要なものではないのです。

つまり、世の中の情報を「そのまま」受け取った場合に見える部分は
「情報の1つの側面」でしかありません。

「その裏側はどうなっているんだろう?」「言っていないことは何だ?」と
考えることが、観察のための良いトレーニングになります。

 <頭の中につくる、5つの「小箱」>
3-1.「構造」はどうなっているか
3-2.  どこで「儲けて」いるのか
3-3.  決めるまでの「心の動き」
3-4.  その「理由(わけ)」
3-5.「言っていない」ことを考える

今回、ご紹介した5つの切り口を意識しながら、
様々な経験をし、様々な情報を集めていくと、
頭の中の「箱」に材料が増えていきます。

そうすれば、ビジネスアイデアが
もっともっと考えやすくなるはず!

ぜひ習慣化してみてください^^

ラーメンが好きで、
いろいろなお店に食べに行っています。

お店に行って、僕が一番に注目するのが
「食券 販売機の左上」です。

ここに、そのお店が
「どれだけ利益を考えているか」が現れるように思います。

(※ あくまで僕の個人的な見解です。)

利益のことを考えているお店は、
左上に「最も高額なメニュー」が来ています。

利益のことを、あまり考えていないお店は、
左上には「一押しメニューのベーシックなもの」が来ています。

販売機のような仕組みだと、暗黙のルールとして、
人は「左上が一番オススメ」だと考えます。

だから、左上に高額なメニューが来れば、
それだけ売れる可能性が高くなるのです。

また、多くの人は左上からメニューを見ていくので、
最初に「高額なメニュー」を見ると、
後に見るものが「安く見える」という効果もあります。

他には、行列のできているお店だと、
「列の整理の仕方」を観察しても、いろいろな発見があります。

あるお店は「食券を買ってから」列に並ぶように言います。
別のお店では「店内に入ってから」食券を買うように言います。

どちらが利益のことを考えているかと言えば、もちろん前者。
後者の方法では、途中で諦めて帰ってしまう人が増えてしまいます。

日常の何気ない場面でも「観察」してみると、
おもしろい発見がたくさんあるものです。

ぜひ、いろいろなものを「観察」してみてください!

 

※この記事は、「Entre Magazine」のバックナンバーから抜粋しています。 Entere Magazineの登録はこちらからどうぞ。

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目次

  1. はじめに
  2. 数千社の経営を見てきた専門家が考える「経営が上手くいかない最大の原因」
  3. 優秀な経営者は気づくけど、なかなか実行できない10のこと
  4. あなたの会社の生産性が上がらない2つの理由
  5. システムを導入すべき理由と7つのチェックポイント
  6. おわりに

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