今回、日本の製造業を影で支えているシェフラージャパンの四元社長にインタビューを行い、今後日本企業が成長し続けるために欠かせない「生産性」「グローバル」「イノベーション」という3つのテーマについてお話を伺いました。
四元 伸三氏
岡山県生まれ、早稲田大学理工学部機械工学科卒
神戸製鋼所、フランス系のグローバルなタイヤメーカー・ミシュランの日本法人である日本ミシュランタイヤ、米国系大手自動車部品メーカーTRWの日本法人であるTRWオートモーティブジャパンの代表取締役を務め、日本における事業活動を指揮し、日本の自動車メーカーに対する革新的な技術や製品の開発体制の強化を推進してきた。「欧州と日本の技術を融合して世の中をもっと良くしたい」という思いの元、2012年にシェフラージャパンの入社、代表取締役社長に就任。
シェフラージャパンウェブサイト→https://www.schaeffler.co.jp/content.schaeffler.jp/ja/index.jsp
シェフラージャパン概要
———シェフラージャパンとはどんな会社なのでしょうか。
我々、シェフラージャパンは世界市場3兆円を超えるベアリングという分野で世界シェア2位の企業です。さらに本社がドイツにあり、グローバルに展開している企業になります。具体的な数字でいうと、工場が世界に75棟、R&Dセンターが17棟となっています。
シェフラージャパンは、外資系企業ですが、日本と欧州を結ぶ架け橋という重要な役割を担っています。
———ベアリングとは、あまり聞きなれないのですが、どういったものなのでしょうか。
ベアリングは、ものを動かす時に発生する摩擦を軽減するために必要になる部品になります。その機能からベアリングは、自動車に多く組み込まれていて、そのほかにも医療機器や航空機などにも使用されています。
———なるほど。需要が多そうな部品ですね。
はい。我々は、未来のモビリティー社会のために、今後環境に優しい運転、都市交通、都市間の交通、エネルギー循環の最適化の4つの分野に注力しようと考えています。ベアリングは、この4つの分野において軸となる技術です。
生産性に対する考え方と生産性を上げるための取り組み
———ありがとうございます。では、次に日本の生産性が低いと言われていることについてお伺いします。日本はOECD加盟国において、労働生産性が22位と低い水準にありますが、この事実をどう捉えていますか?
世間では、日本の労働生産性が世界に比べ低いとマイナスの声が多いですね。
しかし、私は仏、米、独系の異なる毛色がある企業で働いてきた経験から、少し違った見方をしています。私は、このOECD加盟国において、労働生産性が22位という事実を市場の違いと日本の強みという2つの側面から見る必要があると考えています。
1つは、各国において国内市場の状況が異なるということです。日本はGDP世界3位の国ではありますが、人口減少の影響で国内市場は今後ますます縮小していくと考えられます。よって、日本の労働生産性が低い理由として、日本の経済成長の先細りが1つの要因として挙げられます。
もう1つは、低い労働生産性が逆に日本の良い面を表しているとも考えています。この日本の良い面というのが、精密さ、思いやりです。
例えば、デパートで友人へのプレゼントを買う場合、ラッピングをしてもらえると思います。これはお客様に対しての思いやりが出ている良い例で、海外ではありえません。そんなお金にもならないことを外国ではやりたがらないのです。
このお客様を思いやるということは日本の素晴らしさを表していると思いますが、生産性というフィルターでものを考えると、ラッピングには実質的な価値はありません。すぐに捨ててしまうと思います。
ここに、日本の労働生産性が低い理由があると思うのです。つまり、日本の良さは生産性という要素だけでは計れなく、世界において労働生産性が低いという事実が本当にネガティブなのかという視点で考えることも重要だと思います。
———面白い視点だと思います。では、日本の良さを維持しつつ生産性を上げるにはどうすべきでしょうか。何か取り組まれていることがあれば教えてください。
時間に対する個人個人の感覚を厳しくするように指導しています。本社がドイツにあることもあり、シェフラージャパンにも多くのドイツ人の社員がいます。ドイツ人は時間に対し、非常にストイックです。時間というリソースは限りがあり、一秒たりとも無駄にしたくないというマインドが子供の頃の教育から養われています。
(ドイツの働き方に関する記事はこちらをご参照ください。)
なんとドイツ人は7時に出社して、15時に退社するような働き方をしているのです。つまり、メリハリがはっきりしています。このドイツ人の考え方を見本に時間に対して常に考える雰囲気を作るようにしています。
1つ制度面で作ったのが、有給休暇とは別にリフレッシュ休暇という制度を設けました。
この制度の目的は、年度の始めに休暇の予定を先に決めることで、休暇までの働き方にメリハリを持たせることです。休暇の予定がはっきりしていれば、モチベーション高く仕事を行えるという狙いがあります。
さらにシステムを用いての生産性向上にも着手し始めました。特に社内SNSは生産性向上に大いに役立っていると思います。社内SNSの良いところは、必要な時に必要な人に向け、情報を発信できるという点です。メールではできない要素です。
———なるほど。他に、ものづくりの会社ならではといった生産性向上に対する考え方などはありますでしょうか。
我々は、自工程完結ということについて常に意識しています。自工程完結という考え方は、トヨタさんが提唱し、有名になったものなのですが、品質やライン・機械の作り込みにより、自分の工程で作ったものは自分で品質を保証するという考え方です。
工場など、ブルーカラーによる職場では、徹底されている考え方なのですが、ホワイトカラーの職場ではあまり徹底されていない考え方です。なぜなら、ホワイトカラーの1つ1つの業務の成果は目に見えなく、成果に対しての責任感というものを感じられないためです。
そこで、我々は、上司に書類を提出するのであれば、上司が何を求めているのか、提出する書類にミスはないか、質は高いかなどを提出前にしっかり考えさせるようにしています。
車製造の工場において、もし一人が適当な仕事をすれば、人の命を奪ってしまい、企業の存続を危ぶんでしまうかもしれません。ホワイトカラーの仕事にも、それと同等の成果に対しての責任感を持つよう社員には伝えています。
一見生産性が落ちるように感じるかもしれませんが、長い目で見れば、必ず高い生産性につながると考えています。
日本企業がグローバルに活躍するには
———ありがとうございます。次に、グローバルというテーマについてお伺いします。御社はグローバルに活躍する企業であられます。日本の企業がグローバルに活躍するために、必要なこととはなんでしょうか。
私は、日本の当たり前の中にある日本の素晴らしさを見極め、発信していくことが重要だと考えています。つまり、気づいて伝える力が求められるのです。まず、日本の良さに気づくということはどういうことかについてお話ししましょう。
本社がある欧州と日本では、価値観や考え方などで違う面が多々あります。ですので、日本で当たり前だと思われていることが欧州では素晴らしいことであるということがあるのです。
日本の当たり前の中に埋もれる素晴らしいを明確化させ、グローバルに戦う上での武器にするべきということです。
では、どのようにこの武器を見つければ良いかというと、違う価値観、考え方に触れることで日本の当たり前が世界の当たり前ではないことを知ることができます。
弊社では、従業員が多国籍であり、多様性豊かな職場となっています。毎日、違う文化の社員がコミュニケーションをとることで、日本の隠れた強みに気づかされています。多様性に対する受容力も日本の良さに気づくには、重要なのです。
さらに伝える力も日本企業には重要です。この気づいた日本の強みを世界にアピールしなければ意味がありません。しかし、この発信する力は、日本人が最も苦手とする部分です。
良い意見を持っているのに、言えない。空気を読んで、自分を主張することをしないといったことが多く見受けられます。
そこで我々は、プレゼンテーション研修などを実施することで社員の伝える力を磨いています。
イノベーションを生み出し続ける秘訣
−−−ありがとうございます。では最後に、イノベーションについてお伺いします。多くのイノベーションを生み出してきた御社ですが、イノベーションを生み出す秘訣は何でしょうか。
私は、異なる文化、考え方を言い合える風土と好奇心や疑問を持てる場が重要だと考えています。先ほども触れましたが、日本の当たり前が、世界の革新であることがあります。その逆も然りです。
つまり、私は違いの中にイノベーションがあり、異なるものの融合がイノベーションを生むと考えています。その違いを知るために異なる文化、考え方を言い合える風土が重要なのです。
さらに新しい考えに触れ、常に好奇心、疑問を持ち続けるために我々は4年に一度、シンポジウムを開催しています。2014年から開始したもので、シンポジウムを開くことによって、常に新しい情報、違った考え方を知る場を作ることで、イノベーションを生むヒントを探しています。
———四元社長、貴重なお話しありがとうございました!
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