「キャッシュがそこをつき、半年間夜も眠れない日々が続いた。誰に聞いても事業を畳めと言われた。」
ベストベンチャー100にも選ばれ、今も成長を続ける株式会社TRUSTには、一度深刻な経営危機に陥った過去があります。その危機を乗り越えるきっかけとなったのは、「社員全員に現状、財務状況の深刻さを包み隠さず打ち明ける」ということでした。社員が去ってしまうというリスクもありましたが、誰一人として去ることなく、社員全員が努力し、崖っぷちの状況から抜け出し、経営を復活させました。
この経験を経て、株式会社TRUSTには、社員一人一人が積極的に経営意識を持ち、協力し合う文化が強く確立しました。
「社員の団結が弱い」「社内の雰囲気をもっと盛り上げ、社員の仕事の生産性を上げたい」
こう感じる経営者はとても多くいます。どのような組織文化があればこれが達成されるのか。会社の規模が大きくなって社員が増えても、その文化を維持するためにはどうすればいいのか、インタビューを通じて、TRUSTさんの取り組み、社長の考え方を明らかにしました。
人物紹介:山口 一
株式会社TRUST 代表取締役社長
測量・墨出し職人としての経験を積み、2004年に建築測量事業を創業し独立。その後2010年に法人化し、「株式会社TRUST」を設立。その後、今に至るまで、「建築測量事業」の他、「空間デザイン事業」、改修工事を通じて建物の再生を助ける「リニューアル事業」、より業務を充実させるITの導入を助ける「インベントラボ」など様々な新規事業を立ち上げる。
2014年には、雑誌のベンチャー通信による、「ベストベンチャー100」に選ばれた。
株式会社TRUSTはどんな企業か
―建築測量事業で創業して以来、様々な事業の他いろいろな事業をやられていると思います。
そうですね、初めは墨出しなどの建築測量事業を中核としてましたが、『モノ作り・新しい価値作りを通じて皆を笑顔にする』というビジョンを軸に、様々な事業を立ち上げました。地域への貢献も意識していて「ライフスタイル事業」では、ベーグル専門店を運営して健康な食の提案もしています。
現在は52名の社員と共に働いていまして、半分くらいは測量のスタッフで、半分は他の事業部で働いてもらってます。
社員に経営状況を打ち明けたことをきっかけに、経営危機脱却
―一度大変な経営危機に陥ったと聞いております。どのような状況だったのか、どう乗り越えたのか教えて頂けますか?
2014年のことです。いろいろな事業部が立ち上がって、先行投資をどんどんして、売上もあって、社内からは会社に勢いがあるように見えてたと思います。しかし実際は黒字転換にものすごく苦労してて、切迫した状況でした。誰が見ても一目で、ヤバさが伝わるくらいの赤字。相談しても会社を畳むしかないと言われる程です。
追い込まれていた時期でしたが、仕事から会社に戻ると、社員はみんな笑顔ですごく頑張っていて、それを見ると絶対負けない、絶対につぶしたくないという気持ちに毎回なりました。夜も眠れない日々の中、文字通りやれることは全部やって、なんとか数か月ぎりぎり持ちこたえましたがお金が全然足りないという状況は続きました。
もうやれることはなくなって、社員に財務状況など全て打ち明けることにしました。もちろん、社員がやめていってしまう結果も考えた上でのことです。
「ごめん、こういう状況なんだ。でも絶対潰したくないから助けてほしい。やめる選択は構わないから、一緒に頑張ろう。」
ざわめきもありましたが、誰一人会社を去らずに、一緒に頑張ってくれました。ここをきっかけに会社はV字回復していき、危機を乗り越えることができました。
―なぜ社員のみなさんに経営状況を共有したことが危機脱却に繋がったのですか?
会社全体の雰囲気に変化が起きたことが大きいですね。具体的に言うと、社員一人一人、自分が出せる能力を最大限発揮して、会社を再建していこうというという雰囲気です。みんなが、100%、いや、100%以上の力を出し始めました。
例えば、今まで社員は受注する案件規模に関して控えていたところがあったようです。大きな規模の案件だと、リターンが大きい代わりに、リスクも大きいし、大変で現場への負担がかかる。それよりも、リターンは大型案件に比べると小さいながらも、確実にこなせる案件をとっていくことが通常となっていました。
大型案件を取った社員に後々聞いたら、その案件は断ろうと思っていたようです。しかし、会社の状況を知ってその案件を取り、社員全員で必死に取り組みを成功させ、キャッシュフローが改善し始めました。
社員が経営マインド持ち始める
―経営危機の前と後で、社内にどのような変化がありましたか?
社員全員が経営マインドを持って、業務に取り組むようになりました。
例えば、現場で設備投資や先行投資が必要となった時、その投資の必要性はもちろん、その投資をどのようにして売上につなげ、利益を出すのか、ということを社員は意識しています。
こう聞くと売上利益重視の生々しい雰囲気と思われるかもしれませんが、うちの会社はそうならず、数字だけを追い求めずに、事業の理想イメージを追っています。売上・利益はあくまで手段で、その実現させるために、数字もとても重要であるという意識を持っています。
株式会社TRUSTの組織文化「一丸となり、助け合う」
―経営危機を共に乗り越え、様々な事業を展開するTRUSTさんにはどのような文化がありますか?
「助け合う」文化が確固たるものとなりました。
私は経営者として「人を第一」としています。いくら利益が出ようと、社員が幸せでなければ意味がない。経営危機も社員全員が協力し合って乗り越えました。良い仲間がいるから、良い仲間が集まって、良い仕事ができる。
会議などでも役職関係なくみんなで問題を解決していこうと雰囲気が見られます。ここのオフィスもうちの文化を表しています。2015年4月に事務所を移転し、今まで事業部ごとにバラバラだったスペースを一か所に集めました。事業部ごとの仕切りなどはもちろん設けず、お客様にも社内の様子、会議も見えます。
このような「見える化オフィス」では、空気でどこが困っているのか伝わりやすく、また事業部間のコミュニケーションも自然と生まれる。誰かが困ってたら自然発生的にみんなで助ける文化が確立しています。
組織文化を維持するための仕組み作り
―会社の規模が大きくなれば、組織文化の維持は難しくなってくると思います。TRUSTさんはどのように文化を維持されていますか?
規模が大きくなってきても、うちの文化に共有してくれる人が集まってきてくれるので、一気に壊れ始めるようなことはないですが、「グッジョブカード」という制度がこの文化を強くしていると思います。
どんな制度かというと、自分の仕事を誰か手伝ってくれたとか、良い動きをしたとか、ムードメーカーになったとか「グッジョブなこと」をした人に他の社員がそれを上げる。その枚数を評価制度に関連させるというものです。
そこから良い連鎖が生まれています。もらったら嬉しいからもっと助けよう、協力しようというモチベーションに繋がります。
他にも事業部間の交流を促進させるため、「委員会制度」というものもあります。イベント委員会など、様々な委員会をつくり、社員全員どれかに属さなければいけないというものです。事業部間の接点をつくり、交流のきっかけになればと思っています。
―本日は本当にありがとうございました!(ベーグル、本当に美味しかったです)
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