社員のモチベーションや成績に関する問題は、人事評価制度にその原因があることが多いです。経営者側は社員の努力を正当に評価するのも重要な仕事の1つです。
この記事では、組織化において大切な人事評価制度の失敗例とその原因を挙げていきます。
富士通の失敗―「甘くなってしまう目標設定」
富士通の成果主義の評価制度は、それぞれの社員に自ら目標を設定させて、その価値と達成度によって評価するというシステムでした。しかし社員は簡単な目標を設定し始めてしまい、社員のモチベーションやスキルを上げることはできなかったのです。
上司と一緒に、あるいはチームで考えた目標であれば、その目標を達成することの大変さや、それに対して現在その社員がどれだけコミットできているかも把握できます。そうすれば、頑張っている時には励ましの言葉を、そうでない時には少し喝を入れることができます。しかし自分で設定することで、“その目標に対しての努力”がわかるのが自分だけになってしまい、限界まで頑張っていようと怠けていようと、指摘する人がいないというのは危険な状況ですね。
三井物産の失敗―「上司と部下とのチームワークがなくなってしまう」
三井物産では給与の査定基準が完全に仕事の結果のみという、手法をとっていました。「人の三井」と言われるほど「人」を強みにしていて、マニュアル化することの出来ないノウハウを、上司から部下へと世代を超えて伝承することで人を育てていたのです。
しかし成果主義が導入されると、上司が自分の武器を部下に教えなくなり、人が育たなくなってしまいました。ノウハウを教えて部下が上司より仕事で成果を出してしまったら、上司より部下の方が稼ぐことになってしまうため、上司はそれを避けようと従来の企業文化は薄れていったそうです。人事評価制度は社員のモチベーションを上げることが大きな目的ですが、そこでより頑張ることで社員の成長を促すのも目的の一つです。この事例では社員の成長が止まってしまう結果を出してしまったので、失敗と言えますね。
マクドナルドの失敗―「若手が育成されない」
成果主義の導入は、若手でも有能な従業員のスキルが発揮されやすく、それに見合った報酬も与えられます。その結果、ますます年齢に関係なく仕事を頑張ろうとする、というサイクルを生み出せますよね。マクドナルドはこれを狙ったものの、実際は経験豊かなベテラン社員が自身の成果をあげることを優先してしまい、若手社員の育成が疎かになってしまったそうです。有能な従業員のノウハウやスキルを若手が教わり、ベテランと同じくらい仕事ができる若手が増えることで会社も成長していくのに、会社を構成する人が育たないと会社の成長は止まってしまいます。
成果主義によってなくなってしまう「チームワーク」
成果主義の特徴は、結果が全てです。労力がいくらかかっていようと、またそうでなかろうと、報酬が払われるのは結果を出せた社員のみです。結果を出さなかった・出せなかった社員には何もありません。そのため、社員同士はただでさえライバルなのに、さらに対抗意識が強まり、チーム内の協力関係がなくなってしまいます。元から個々で努力して結果を出す文化の欧米企業にはこの制度は合いますが、大半の企業が年功序列型で、チーム単位でのプロジェクトが多く、社員同士のつながりが密接な日系企業では逆効果にもなり得ます。時代が変わりつつあって現在では“一時代前の考え方”とも思われますが、成果主義はそもそも、日本の企業体質にはあまり向いているものではないのです。成果主義を効果的なものにするには、まずはその制度が受け入れられる基盤が必要ですね。
まとめ
3社の事例を見てわかるように、成果主義の評価制度がうまく機能しないと「人が育たなくなる」という本末転倒の結果になってしまいます。成果主義の評価制度は、その会社が導入してもいい企業文化なのか、そこをしっかり見極めてから導入するべきですね。
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