経営者インタビュー

“ビジネスパーソンは誰でも大きく成長できる” ― 元マッキンゼー赤羽雄二氏が語る「成長の手引き」

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 「誰かに対して自分に出来ることがもしあれば、”ためらわずにやってあげよう”というのが私の基本姿勢です。相手のためになるだけではなく、自分自身もそのほうが絶対に成長すると思います」そう語ったのが、ブレークスルーパートナーズ株式会社でマネージングディレクターを務める赤羽雄二氏だ。A4メモ書きで好評を博した「ゼロ秒思考」を始め、これまで14冊の著書が世に送り出している。そしてそれらすべてを「誰でもすぐに実践出来るマニュアル」として執筆してきたと言う。

それだけでなく、内容への質問に答えるために、著書の全てに赤羽氏のメールアドレスが載せられており、すべてのメールに返信し、誰でも参加できるセミナーやワークショップを年50~60回行うなど、読者に価値を届けることを追求している。そして今年7月に、14冊目となる「成長思考」を出版。本書は下記の5章で構成されている。

第1章 成長を妨げる心理的ブロック
第2章 成長できたのはどんなときか
第3章 成長できなかったのはどんなときか
第4章 成長するための出発点
第5章 成長するための7つのアクション

「すべてのビジネスパーソンは成長できる」と断言する赤羽氏が書いた本書は、成長を阻害する要因の把握から始まり、具体的にすぐ実践できるアクションへと繋がれており、一つの流れをもって成長の手引きがなされている。そして今回、赤羽雄二氏に書籍の中で気になったポイントを伺った。

お話を伺った方

人物紹介:赤羽雄二
ブレークスルーパートナーズ株式会社 マネージングディレクター
profile
東京大学工学部を1978年に卒業後、小松製作所で建設現場用ダンプトラックの設計・開発に 携わる。1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級 課程を修了。 1986年、マッキンゼーに入社。経営戦略の立案と実行支援、新組織の設計 と導入、マーケティング、新事業立ち上げなど多数のプロジェクトをリード。1990年にはマッキンゼーソウルオフィスをゼロから立ち上げ、120名強に成長させる原動力となるとともに、韓国企業、特にLGグルー プの世界的な躍進を支えた。 2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。最近は、大企業の経営改革、経営人材育成、新事業創出、オープンイ ノベーションにも積極的に取り組んでいる。ベストセラー「ゼロ秒思考」、「速さは全てを解決する」、「頭を前向きにする習慣」、「7日で作る事業計画書」著者。

1.誰しも成長できるのに、世の中にはマニュアルが無かった

「成長思考」でご自身14冊目の著書となりますが、今回筆を取った理由は何でしょうか?

赤羽氏(以下、赤羽)- 私は「人は誰でも頭がよい」と考えています。ただ、もやもやしているためにそれが発揮できない人が多いのが残念だと考え、頭をよくするトレーニング法としての『ゼロ秒思考』を出しました。また、上司がどうやって部下を最速で育成しつつ、部署の成果を最大化するための方法を詳しく述べた『世界基準の上司』など、今まで出した書籍はすべて誰でも実践可能なマニュアルとして執筆してきました。

今回の『成長思考』では、どうすれば人が自信を持って成長を続けられるのか、そして成長するためには何をしたらいいか、その具体的な方法を説明しています。人は誰でも成長出来るし、成長する方法もあります。しかし、「誰でも成長出来る」ということが必ずしも十分に認知されていません。成長するためのやり方がわからないという人も多く、何とかヒントとなるものを提供したいと考えたのがきっかけです。

なぜ「成長の仕方」はあまり普及していないのでしょうか?

赤羽- ビジネス書は多いものの、成長するための手段をマニュアルや手引書として書き、実際に読者が行動を変えるところまで示しているものは少ない、ということが原因の一つだと考えています。

成功談については多数書かれています。ただ、その成功を真似るのは決して簡単ではありません。例えばビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグの成功体験から学ぼうとしても、ちょっとやそっとでは出来ないですよね。すごい人であればあるほど、むずかしくなります。本を読んで高揚感は得られますが、実際の行動を変えることはかなりの難題です。

また、ノウハウを主体に書かれている本も多く出されていますが、不思議なほどかゆいところに手が届いていないことが多く、本気でノウハウを伝えようとしているのかやや疑問もあります。

こういう状況がもったいないと思い、読んだ人がその日から成長するための実践手引書として『成長思考』を執筆しました。

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2.「ネガティブ」なだけで成長は阻害される

読者が成長するための出発点として「ネガティブになりすぎないこと」が挙げられています。

赤羽- ネガティブな人は成長しづらいです。なぜなら、できない理由を次々に思いついたり、「やってもどうせ無理だ」という思考に陥りがちだったりするので、少しくらいうまくいかなくても前向きに取り組んでいくことができないからです。

実は、私はネガティブに取るかポジティブに取るかは本人次第であり、全く同じ状況に関して本人が習慣としてポジティブに思うか、ネガティブに思うかだけだと考えています。

例えば大きな地震が起こったとして、ポジティブな人は生き残るためのあらゆる努力を始める。一方ネガティブな人は「もうどうせダメだ」と、生き残る努力をせずに諦めがちです。まったく同じものを見ても、ポジティブな人とネガティブな人では態度も行動も違います。

なぜネガティブになることを選んでしまうのでしょうか?

赤羽- その点について、若干うがった見方かも知れませんが、次のように考えています。

恥をかきたくないため、わざとネガティブな考え方をする人が多いのではないかということです。ネガティブ、シニカルな物の考え方をしていると、だめなときも言い訳を言いやすくなります。ポジティブな言い方をしてはずれてしまうことを恐れ、悪い話をしておく、悪ぶっておく、というような心境があるのでは、ということですね。

ちょっと屈折していますが、全く同じ状況を前にして、人の反応があまりにも違うので、このようにでも考えないとうまく説明できないという考えに至ったのです。成功体験が多い人はポジティブになりがちで、失敗体験のほうが多い人はネガティブになりがちとも言えますが、それを超えて、本人のスタンスに左右されることが多いと思います。

本来、自分のため、自分の成長のためと考えると、言い訳を用意する理由は何もありません。しかし、ネガティブな見方が習慣化し、何かと言えばネガティブなことを口にしてしまう人は、意味なくネガティブな方向に振れ、ネガティブな方向に逃げ込んでしまっていると思います。

それではポジティブになるためのアクションとしてどのようなことが挙げられますか?

赤羽- 二つあります。一つには、自分を否定する人とは出来るだけ接しないこと、二つには、ポジティブな人と時間を共にすることです。

自分を否定する人と我慢して一緒にいても、自分の成長につながりません。我慢していたら耐性がついて平気になるという問題でもないですし、自分のメンタル面が壊されたらお終いなので、そういう人からは距離を置き、さらに否定してきたら、全力で逃げるしかないと考えています。

逆にポジティブな人と一緒にいると、やる気が出ます。自己肯定感が強まり、前向きになれます。高揚感も得られ、いいことづくめですね。のんびりしてしまうとか、気が緩むとか、怠けるとか、そんなことを心配する必要はありません。ポジティブな人は別に甘いわけではありませんので、怠けてしまうわけではないのです。私もネガティブな方に気持ちが傾きかけている時は、出来るだけポジティブな人と会うようにしてきました。akaba2

3.参った時に自然とポジティブになるアクション

確かに、ポジティブな人と話をしているとこちらも元気になります。赤羽さんと言えば「A4メモ書き」の有効性を一貫して主張されています。

赤羽- 処女作『ゼロ秒思考』から紹介している「A4メモ書き」はあらゆるシチュエーションで有効な手法です。具体的にはA4用紙を横書きにして、左上にタイトル、右上に日付を入れます。そして頭に浮かんだものをなるべく4~6行で各行20~30字、1分間に書き出していくというものです。

それを毎日、朝起きてから夜寝るまでに10~20ページ書くと、驚くほどすっきりしますし、もやもやがなくなり、ネガティブな気持ちがなくなっていきます。

頭の中のモヤモヤが外に書き出されて、頭が整理されます。実際に書いてみると、そこまで心配になることはないとか、実はこうすればよさそうだとか、次々に浮かんでくるので、自然にポジティブになっていきます。

「成長思考」の中でも、自信を持つための工夫としてもA4メモ書きが紹介されています。

赤羽- 自信を持つために頑張っている自分を褒めることも効果的です。よく「頑張った自分へのご褒美としてデザートを買う」などと言われますが、そのやり方ではそこまで効果的ではないですし、次につながるものではないと考えています。それよりは自分がいかに頑張っているか、調子がいいかをメモに何ページか書くと、目で見て確認出来るので、より強く自分の頑張る姿が目に焼き付きます。

―私も実際に取り組んでみて、「A4メモ書き」はあらゆるライフハックの中でも特に有用でした。

赤羽- 最近ではA4メモ書きのことを「アクティブ瞑想」と呼んでもいいのではないかと考えています。瞑想は全世界で評判ですが、何も考えないようにすることは実際にやってみると結構難しいと思います。

一方、『ゼロ秒思考』のA4メモ書きでは、1分間で思うことを書いていくので、ある種のトランス状態になり、自分の素直な気持ちが出てきます。それにより「自分はこんなことを考えていたんだ」と新たな発見が生まれます。メモに書くというアクティブなやり方なので厳密には瞑想ではありませんが、書くことで自分の心と向き合うことができ、新たな発見を得ることができるという意味合いで「アクティブ瞑想」と勝手に呼び始めています。

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4.コンディション管理も成長の条件

成長するための7つのアクションの中で「コンディションの維持」も含まれていました。赤羽さんにとってコンディションの維持とは?

赤羽- 体を使うときのコンディショニングというのはよく聞きますが、仕事上のコンディショニングという表現はあまり使いません。そこまで重視されていませんよね。結果としてコンディショニングに配慮できていない人が多いと思います。

アメリカのメジャーリーグでは、たばこを吸うことはご法度と言われています。しかし、日本では吸ってしまう選手がいます。これに限らず、日本ではコンディショニングへの関心が薄いようです。世界レベルのトップアスリートのように、コンディショニングに気を使うことで、ビジネスマンとしての総合戦闘力を上げることができます。もちろん成長を加速してくれます。

具体的には、起床・就寝時刻、睡眠時間、食事、運動、音楽などの気分転換、オフィスの環境、照明などの最適化ですね。グッズにこだわるのではなく、集中し、疲れず、やる気が出続けるような工夫です。

仕事のコンディションを維持するために、具体的なアクションとしてオススメがあれば教えてください

赤羽- 一つぜひお勧めしたいのは「起床時間を変えない」ということです。「今日は金曜だから」と夜の2~3時あるいはもっと明け方まで起きている人は多いと思います。夜更かししても起床時間を変えなければ、あまり問題はありません。しかし、夜更かしの結果、朝11時や12時、あるいは午後に起床するとそれだけで半日なくなりますし、夜に眠くなくなってしまいます。それでまた夜更かしを繰り返し、月曜の朝、睡眠不足でコンディションが悪くなる悪循環に陥ります。

成長したい人は、土日にも何か自分の成長にプラスになることをしたいと思うのではないでしょう。ですが、起床時間が大変遅くなることで週末の時間が減りますし、寝すぎることで体調の悪さを引き起こすなど色々な悪影響が出てしまいます。コンディションを整え、成長し続けるためにも、なにより大事なのが週7日、起床時間を変えないこと、合わせて、極力寝る時間を変えないことだと考えています。

私自身、どうしても金曜の夜には土日が丸々あると考えてしまい未明まで本を読むことが普通でした。そうなると土曜日が短くなり、土曜日の夜眠くならなくてまた本を読み、日曜朝も遅くなり、結局やろうと決めていたことが十分できないだけではなく、睡眠の不規則さによって体調が悪くなり、気分も悪い、ということが長らく続いていました。

何年か前に、週7日、午前7時に起きるように固定化したところ、金・土・日の夜も適度な時間に眠くなり、週末もフルに2日使えるようになり、気分が悪くなることが激減しました。快調なペース、巡航速度が続いていく感じですね。ちょっとした工夫ですが、結構本質的な点だと考えています。

「人の力を借りて一緒に成長する」ことも7つのアクションとして紹介されていたことが新鮮でした。単純に負荷を掛ければ良いわけでも無い。

赤羽- そういう人はストレスが大きすぎて潰れかねないし、下手をするとうつ状態になったりすることもあるので、要注意です。一人で出来ることには限りがあります。どんな人でも友人・周囲などからの激励、承認などは効果的であるし、多分、必須なので、できる限り人の力を借りて仲間と共に成長できる機会を作るとよいと思います。本や小説を書くことなどは一人でも出来てしまうことですが、一人でできるはずの本や小説を書くことであっても、小説家の卵が集まってお互いに研鑽を積むのは、昔からごく普通にされていることです。

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5.上司はチームメンバーを成長させることが仕事

個人からチームに焦点を当てたいと思うのですが、「成長し続けるチーム」を作るために必要なことは何でしょうか?

赤羽- 「成長し続けるチーム」を作るためには、リーダーが自分の役割を確実に果たし、自分自身、成長を続けることがどうしても必要です。別の言い方をすると、「リーダーの目線の高さとエネルギ―量」「リーダーの人としての器」「チームのリードのしかた」の3つが重要で、それにより多くが決まります。

「リーダーの目線の高さとエネルギ―量」とは、「これをどうしても実現したい、一緒に実現すべきだ。大変だが素晴らしいことが待っている」というビジョンを持ち、その実現に対して、人並はずれたエネルギー量で取り組むということです。ポジティブであり、揺らぎない自信と高い問題意識が前提になります。

「リーダーの人としての器」とは、「この人についていきたい」「この人についていけば、大変だが何とか壁を超えられそう」と周囲に思わせる人としての信頼感、安心感、安定感です。人心掌握術などのテクニックに走るのではなく、もっと根本的に人に信頼され、大きな行動を起こさせる、あえて言えば「地味な」人間的魅力が必要です。派手でかっこいい必要はありません。

「チームのリードのしかた」については、リーダーは、ビジョン遂行に当たってチームメンバー一人ひとりに合わせた明確な目標と役割を与え、激励し、コーチングし、結果が出るように支えることが重要です。

メンバーそれぞれ強みや成長課題は異なります。それを十分考慮して課題を割り振り、個別にフォローして何とか達成してもらうことで、メンバーは成功体験を積むことが出来ます。そうすると、自分に自信を持てるようになり、「もっとやりたい」「もっと上を目指したい」「チームとしてもっと上を目指すべきだ」と成長を続けるという好循環に入ります。

チームメンバーが成長して初めて、チームは成長します。リーダーは口だけできれいごとを言ったり、要求だけ突きつけたり、できないメンバーを罵倒して萎縮させたりするのではなく、自分こそが矢面に立って一番大変なところを押し進めていく、メンバーにコーチングする、そうやっているうちに、メンバー全員もっとやれるという気分になって、チームワークがさらに改善し、何事にも負けないチームスピリットが醸成されていきます。

適切な目標を設定するための具体的な方法とは何でしょう。

目標設定だけではなく、一人ひとりのメンバーが最大のアウトプットを出せるように、「アウトプットイメージ作成アプローチ」という方法をお勧めしています。

チームの目標をブレークダウンし、個々の能力に合わせた目標と取り組み課題を割り振ります。それぞれのアウトプットのイメージを短時間(30分程度)で出来るだけ詳細に紙に書き出します。表紙、目次、各章立て、それぞれのページでの分析やまとめ方などを書いていきます。それを担当メンバーに説明し、検討を進めてもらいます。

期限までの間に非常にきめ細かくミーティングをし、進捗確認をしてできていないところはリーダーのほうですぐ解決策を考えてあげる、というところが通常のアプローチと180度違うと思います。メンバーへの過度なプレッシャーも「放置プレイ」もありません。

通常は、メンバーの仕事はメンバーがやるべきだということで、リーダーはほとんど助けません。多分、助けることがあまりできません。チームワークにもなかなかなりません。

結果として、リーダーは単なる進捗管理屋になり、文句ばかり言い、チームの成果に対して貢献しないままメンバーの不満がたまる、というよくある構図が生まれます。

リーダーがアウトプットのイメージを書いてメンバーに説明する際にメンバーの意見を取り入れることで、メンバーも納得でき、かつチーム全体の整合性ある取り組み策ができあがっていきます。

最後に成長を続けたいと思う経営者へのメッセージをお願いします。

赤羽- トップダウンでただ命令しても、現場では命令と現実の状況に差異を感じることがあり、部下が反発したり、やる気を失ったりすることが多くなります。したがって、明確な目標を打ち出して部下を鼓舞しつつも、トップはしっかりと顧客、競合の状況、社内によく耳を傾けて、ビジョンの内容を吟味し続け、納得性の高い施策に分解して、全員の力を結集させる必要があります。

部下一人ひとりがトップのビジョンにある程度以上共感し、彼らの部下に対しても同様の影響を与えつつ、適切なコーチングをしつつ、「勝つ組織」を作っていただければと思います。

そこでは、一人ひとりが成長し、組織が成長し、何より、トップが成長し続けることで先頭に立って牽引し続ける、素晴らしい組織が生まれていきます。

ご意見、ご質問はブレークスルーパートナーズ 赤羽雄二 akaba@b-t-partners.com までぜひお気軽にお寄せください。

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「成長思考 心の壁を打ち破る7つのアクション」
著:赤羽雄二

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目次

  1. ALL-IN開発コンセプト
  2. ALL-INの機能紹介
  3. 料金比較
  4. 導入ポイント

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